50話 国に巣食う吸血鬼3
すみません、最近私情で少し忙しくなかなか更新できませんが、定期更新だけは厳守するつもりです!!
さてと、どうしたものか。
う〜ん、流石にこれだけの数の貴族種を相手にするのはキツイよな、まぁやろうと思えば出来ないこともない、無いのだが…
魔法なしと言うハンデを背負ってこの数と対峙するのは避けたい事態だし、けどまぁ、それはこっちの事情であって吸血鬼達には関係ないよなぁ。
仕方ない、アレでいくとするか。
「やぁ、貴族種の皆さんお揃いで、何か私に御用でも?」
そう言って、吸血鬼達を逆なでするように一礼する、その時に罠を張るのを忘れてはいけない。
火、水、風、土、雷の五属性を纏めて作り上げた魔力を直径1ミリ以下まで細く伸ばし、俺よし前面の空間に張り巡らさる。
この時、忘れてはいけないのが、その魔力の上からさらに隠蔽魔法を重ねがけする事だ、こうする事によって相当な奴でなければこの罠に気づかない。
そして、この手は吸血鬼のように他者を見下している連中ほど掛かりやすい。
何故ならば、そういう奴ほど油断があるし、見下している存在にけなされでもしたら周りが見えなくなるからだ。
そして、俺がさっき言った言葉でプライドの高い貴族種の皆さんはもう爆発寸前、俺の張った罠に気付くはずもない。
「貴様ぁっ、人間の分際で我らを侮辱するか!」
ほら来た、ここで来ればもうこっちのもの、後は適当に挑発して俺を殺そうと動いたら自ら罠に掛かって、はいお終い、と言うわけだ。
「いえいえ、私にそんな他意はありませんが。
それよりも貴方がリースナルとか言う馬鹿ですか?」
その言葉に吸血鬼達がさらに殺気立つ、よし、もう一押しだな。
「もしそうなのであれば、そこの小汚い者どもを下げては来れませんかね?
もう異臭がして、おっとすみません、ご本人の前で言うことでは無いですね」
ここで軽く爽やかに微笑みを浮かべてフィニッシュだ。
「き、貴様ぁあ!!」
案の定、その場にいた貴族種のうち半数以上が俺に飛びかかろうと動いてそのまま自身の推進力によりその身体をバラバラに切り裂かれた。
まぁ、古竜の鱗さえも容易く切り裂く魔力で出来た糸に突っ込んだのだからこうなる。
そして残った連中はと言うと…
「ふん、若造どもが先走りおって」
「ああも見え透いた挑発に乗るとは情けない」
「奴に初めから期待などしていない」
「しかし、こちらの戦力が失われた事も事実です」
最初に白髭の爺さん、次に黒い髪をオールバックにしたダンディーなオッサン、金髪長髪でプライドがかなり高そうな青年、そして白髪を短く切りそろえた執事のような爺さん。
残った4名の吸血鬼達は自身の足元にバラバラになって転がっている、仲間だった存在を見下すように眺めながらそう会話を続ける。
俺を前にして舐めた態度を取ってくれるものだ、まぁ残ったコイツらは確かにそこそこの強さだ、だからと言って的を前にして呑気に話し合いとは感心出来ないな。
ここはひとつ、お子様三人衆に注意をしておくとしよう
「3人とも、敵を前にしてあの馬鹿4人みたいな真似をしたら駄目だぞ」
「それご主人様には言われたく無いわよ!」
「何を言うかねミラ君、俺があいつらを前にこうして君たちと話しているのは、アイツらと俺とでは圧倒的な力の差があるからに他ならないのだよ」
確かに、大勢の貴族種達を相手取るのは面倒だが、それでも敵と言うほどでも無い、言うなれば面倒な作業と言える。
そもそもだ、接近戦と言うのは一対多の戦闘には向かない、そう言った戦闘は魔法戦が定石なのだから。
しかし!ここではそれは出来ないのだから面倒この上ないと言うわけだ。
「ふん、人間風情が言ってくれるわ」
「我らを誰だと心得る?」
白髭爺さんが鼻で笑い、黒髪オールバックが偉そうに聞いてくる、だがしかし、そんな事を俺が知るわけもない。
「はぁ、これだから人間は好きになれないのです」
「無能な貴様らに教えてやろう、そして絶望するがいい」
まぁ別に執事ジジイに好かれても何の需要もないからあの爺さんに嫌われててもいいんだけどね。
「我らは吸血鬼を統べる女王を騙る小娘に代わり、真に吸血鬼を統べる王であるリースナル様が配下にして四大貴族だ」
えっと、はい、そうですか…
「ふん、四天王と恐れられらる我らを前に声も出ぬか」
プライド金髪君が偉そうに言ってくるが、はっきり言って、で?と言う感想しか出てこない、と言うか四天王って…
「ふっ」
おっとミラが笑ってしまったぞ、流石にそれは吸血鬼達が可哀想だ。
「おいミラ君、流石に笑っては彼が可哀想じゃないか」
「そう言う、ご主人様も顔に出てますよ」
ここは視線を合わせてはいけない、スゥッと視線を逸らして誤魔化す。
だって仕方ないじゃない!四天王だぞ四天王!これが笑わずにいられるとでも?
「さてと、申し訳ない四天王の皆さん、お相手しましょう」
姿勢と佇まいを直し、胸の前に手を添えて貴公子然とした態度で謝罪を入れる、まぁ俺もこう見えて高位貴族なものでね、なったのは数日前だけど。
「ふ、フハァッハッハッ」
「クックック、これは愉快じゃ」
「面白い冗談を言えるものだ、我らのペットにでもしてやろうか?」
と楽しそうに嗤うヒゲ爺に、からオールバック、執事の面々、全く失敬な奴らだ、まぁ別にいいけどさ。
「ふん、貴様など私1人で十分だ」
そんな風に嗤う四天王(笑)の中、唯一苛立った顔をしているのが金長髪のプライド君だ。
「貴方が初めに死にたいのですか?」
「貴様っ、私を侮辱するのも大概にしろ!!」
「何を仰いますか、侮辱など滅相も無い。
しかし、貴方お一人でよろしいのですか?私は貴方方全員でもよろしいのですが」
その一言で遂に沸点を超えたらしい、凄まじいまでの魔力と殺気をその身体から立ち上らせながら、その腰に携えられた剣を抜き放つ。
「肉片も残さず消し去ってくれる」
その言葉を残し、金髪吸血鬼がその場から搔き消える。
確かにそこそこのスピードだ、けどまぁ、所詮はそこそこでしかない。
吸血鬼が消えるように移動したその瞬間に響き渡る金属音。
「なっ!?」
そして驚くような吸血鬼が漏らす声。
「どうかしましたか?」
何をそんなに驚くことがあると言うのだ、俺がしたのは俺の背後に回り込んで切りかかってきた吸血鬼の剣を逆にへし折ってやっただけだ。
まぁ、今のは結構本気で刀を振ったから多分こいつ程度じゃあ俺が何をやったか見えてもいないだろうけど、そのおかげでプライドの高い金髪吸血鬼が綺麗に空ぶるところを目撃できたけど。
おそらく、この中で今の俺の動きを見ることができたのはヘルだけだ、ミラでもリーナでも見ることが出来ない領域だ。
「き、貴様っ何を、」
吸血鬼の言葉は不意に途切れた、まぁそれもそうだ、だって敵の剣を真っ二つに切ったのにそれと同時に何故敵も一緒に切らないと?
しかも今回は城門前で従属種を切った時とは違い、五属性を刀に宿している、つまりは黒古竜を切り裂いた天剣だ。
これを喰らってはいくら高位の吸血鬼と言えど回復など出来るはずもない。
刀なのに何故、天剣かと言う疑問は持たなかった事にして欲しい。
「さてと、これで残るはあと3人」
崩れ落ちる吸血鬼を背に、残る3人の四天王達に軽く笑みを浮かべる。
因みに、金髪プライド吸血鬼が崩れ落ちた際、ベチャっと血が跳ねたがそこは重力魔法を使って封殺したので俺たちに被害は出ていない。
そうだ、これはミラとリーナに自信を付けさせる良い修行になるかもしれない、ミラは兎も角、リーナは吸血鬼に対して極度に自身を下に見る傾向があるからな。
ここで克服して損はない、リーナも爵位を持った貴族種吸血鬼に勝てばちょっとは自信がつくはずし、ヘルに至っては言うに及ばないだろうしな。
「ば、バカな!?」
「いくら我らに比べ弱く経験も無かったとは言え奴は侯爵なのだぞ!?」
「しかし、奴は所詮は我ら四天王最弱」
「ぷふぅっ!!」
おっと思わず吹いてしまった、けど仕方ないと思う、だって四天王最弱だよ?これが笑えずに居られるはずがない。
ミラも必死に笑いを堪えてる感じだし、まぁそんなミラにはこれから残りの四天王と戦うと言う試練が待ち受けているのだけどね。
「さてと、じゃあ残りの3人はお前ら3人で倒してもらう事にする」
「「…え?」」
ミラ達に振り返って笑顔でそういった俺の声にミラとリーナは頓着な返事を返す。
ヘルだけはやった出番だと言わんばかりの満面の笑みを浮かべているが…
「む、無理ですよソータ様!」
「そうよそれは流石に無茶よご主人様!」
そう言い募る2人に
「残念ながらこれは決定事項です」
俺はそう無慈悲な言葉を返すのだった。
「まぁ危なそうだったら俺が助けてやるから、取り敢えずやってみろ」
「む、ソータよ妾があの程度の奴らに遅れをとるとでも言うのか?」
少しいじけたように頬を膨らませてそう言うヘル。
「いや、お前があんな奴らに負けるはずが無い、まぁ2人をサポートしてやってくれ」
「わかったのだ!」
少しヘルの頭を撫でてそう言ってやると、パアッと笑顔を浮かべて頷くヘル、ちょろい。
「我々3人を先ほどの若造と同列に考えるなよ」
「奴は所詮は最弱、侯爵だが、我らは違う」
「我らは貴族種における最高位である公爵、子供相手に遅れなど取らぬ」
どうやら自分たちが舐められてると感じたらしく、四天王達3人は怒りをあらわに口々に言葉を発する。
「そもそも貴様は兎も角、その様な子供に何がで」
そこで執事然とした吸血鬼の言葉が途切れる。
理由は簡単、ヘルが奴らが感知できない速度で移動して奴の喉を潰したからだ。
身長差的にヘルでは奴の喉には届かないが、この世界には魔法がある、ましてやヘルは古竜、しかも竜王が一体だ。
ヘルは宙に浮き、片手で吸血鬼の首を締め上げる、吸血鬼はヘルの細腕に持ち上げられ身動きが取れない。
ゴキュッと聞こえてはいけない音が吸血鬼の首から聞こえたが、まぁ流石はヘルだな、真なる魔王達は匹敵するヘルの力は凄まじい。
「なっ!?」
「バカなっ!?」
そんな仲間の1人がヘルの手に持ち上げられてぐったりとしている様子を見て驚きの声を上げる残り2人の四天王。
だが、ミラとリーナの2人がそんな隙を見逃すはずが無い。
2人は吸血鬼達のその隙を逃さず一瞬でその間を詰める、その速度はさっきの吸血鬼の攻撃時の速度に匹敵する。
一閃、ミラが振り抜いた一振りの剣が白髭の吸血鬼の首を穿つ。
ミラはその瞬発力がかなり高く、こう言った抜刀術がかなり速い、その一撃だけであれば俺も刀で受けるほどの速度だ。
リーナもミラと同様に剣を一閃するが、黒髪オールバックはそれを何とか自身の剣で受け止める。
そしてそのままリーナへ空いた右手で貫手を放つ、しかし、それはリーナに当たることなく彼女の鼻先数センチの位置で止まった…いや止めさせられた。
吸血鬼の右手は、数ミリ程度の紐が絡みつきその動きを止めている。
吸血鬼のそれも公爵の腕力をもってしても微動だにできないその紐の正体は、俺がゲーム時代に集めておいたオリハルコンやその他諸々の希少鉱石を織り交ぜて特注した糸だ。
「これで終わりです!」
リーナがそんな声と共に腕を振る、それと同時に彼女の指から放たれたオリハルコンの糸が吸血鬼の首を落とした。
あっさりと決着がついてしまったな、まぁこんなもんだろう、ミラは剣、リーナは糸術をそれぞれ得意としていて、なかなかにいいコンビと言える。
「3人ともお疲れ様、結構余裕だったろ?」
「確かに」
「いえ、今回は隙を突くことが出来たから勝てたのです」
やっぱ、リーナは謙虚だよな、そもそも公爵位の吸血鬼の隙を突けるだけでも誇っていいと思うのだが。
まぁ、これはリーナの良いところでもある、常に慢心しない奴は強くなるからな、その点ミラは不安があるがまぁ現時点で2人とも常人を遥かに超えた強さなので問題ないだろう。
「ヘル、そいつまだ生きているな?」
「勿論じゃ!」
当たり前だと頷くヘル、やっぱり流石だな。
ヘルが手を離すと、重力に従って吸血鬼は地面に落ちる、まぁ生きているなら何でも良い。
「さてと吸血鬼、リースナルのところに案内しろ」
倒れ伏しながらも畏怖の視線を向けてくる執事吸血鬼に向けて今度はそう微笑みながら言う。
次話51話は10月14日目 日曜日に更新予定!!
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題名変更しました!
「伝説の吸血鬼となった商人は怠惰スローライフをお望みです」
そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください。
*ちなみに題名は仮名なので変更するかもしれなれません。