49話 国に巣食う吸血鬼2
さてと、とりあえず突入したはいいけど、城門前に転移するのは流石にちょっと目立ちすぎたかな…
転移した瞬間にわらわらと大勢の吸血鬼達が集まってきたし……今回の隠密性って一体。
まぁ今更やっちゃった事を気にしても仕方ないし、今のはなかった事にしよう、うん。
「やあ、皆さんこんにちは」
取り敢えず挨拶だけはしておく、これでも一応行為貴族になったわけだし、何よりお子様3人の教育のためにもしっかりとした態度を心掛ける必要があるのだ。
まぁ、それで相手がどの様に受け取るのかまでは知った事じゃない。
「貴様ら何者だ!?」
どうやら吸血鬼さん達はおちょくられたとでも受け取ったのだろうか?
すごい睨んできてるんですけど、こっちが挨拶したら返すのが常識でしょうに。
「まぁ、いきなり現れたらそりゃ驚きますよね」
…確かに、ミラに諭されるのは何か癪だが、まぁいきなり王城に人が現れたら誰でもこうなるのが普通の反応か。
俺の反応を見てそれ幸いと、だから言ったじゃないですか。とドヤ顔で言ってくる。
「貴様ら、下等生物の分際で我ら吸血鬼を無視するか?」
おっと、吸血鬼さんがキレちゃったよ、まぁ所詮は従属種であるコイツには言われたくないけど。
けど、まぁコイツの質問には答えてやってもいい、どうせここからは死闘が始まるのだから。
「自己紹介をするつもりはないが強いて言えば、」
「ならば死ぬがいい」
はぁ、全くこれだから人の話を聞かない奴は嫌いなんだよ、特に自分が上の立場だと思っている奴ほどその傾向が強いのだから面倒だ。
「まぁまぁ、人の話は最後まで聞けよ」
そして一斉に吸血鬼達が動く、コイツら俺の話をもう聞いてないな、まぁ別にいいけどさ、ちょっとは俺も傷つくんだけどね。
吸血鬼特有のその牙や、鉤爪を露わに襲いかかってくるが、この程度のスピードでは俺を捉える事が出来るはずもない。
それにしても俺もかなり舐められたものだな、俺の館に送り込まれてきたやつと言い、コイツらと言い、こんな奴らで俺をどうこう出来るとリースナルとやらは本当に考えているのだろうか?
まぁいいどのみち此処にいる吸血鬼は皆殺しにする予定だし、向こうから群がってきてくれるというのであれば好都合だ。
しかしだ、一応今回の一件においては隠密作戦だから、此処で大規模殲滅魔法なんて使う訳にはいかない。
まぁそれ以前に此処でそんなモノを使えばリーナの家族が吹き飛ぶので元より選択肢にないのだけどね。
俺は全ての属性魔法を操ることが出来るからか、俺の事を魔法職だと思う奴は多い、実際にAWOでもそう思っている奴もそれなりにいた。
けど勘違いしないで欲しいものだ、そもそも俺はもともと、魔法より接近戦の方が得意だ。
一番前にいて、さっきまで話していた吸血鬼を取り敢えず切り裂く、しかしいくら従属種とはいえ吸血鬼の回復力は侮れない。
だから吸血鬼との戦闘においては魔法の方が有効だと言われることも多いが、それならば回復できないほどに細かく切り裂けばそれでいいのでハッキリ言って魔法よりこっちの方が効率はいいのだ。
腰に携えた刀を抜き、向かってくる吸血鬼達を切り裂く、魔力をまたませた刀は吸血鬼達をいとも簡単に両断し切り裂く。
そして刀を鞘にゆっくりと収めていく、この間、僅かにコンマ数秒以下、以下に思考加速の効力が凄まじいものが見て取れるというものだな。
と言うかこれはもはや時間停止といっても過言ではないんじゃないかな?
まぁ、今はそんな事はどうでもいいな、自己紹介がまだ終わっていないし、名前を言うつもりはないけど、俺たちがどう言った存在かは教えてあげないと可哀想だというものだ。
「お前らを殺す存在だ」
そう遅い掛かってくる吸血鬼達に笑みを浮かべる。
キマった、どうせ吸血鬼どもは俺の言葉なんて聞いてはいないだろうけどそんな事はどうでもいい。
これでカッコつけながら群がってくる敵を敵が気づかぬうちに蹴散らすテンプレをクリアしたのだから。
これだけで今回のこの一件にも大きな価値があったと言える。
そして、カチンと鞘に刀の鍔が当たった音が異常に大きく響いた瞬間に吸血鬼達は一斉に地に落ちた。
いきなり運動量を失った吸血鬼だった物は重力に従って地面に落下し、慣性の法則に従って勢いそのまま野良達の方面に向かってくるが、それが俺たちに届く事はない。
吸血鬼だった物は俺4人を中心に半径1メートル地点で全てその動きを止める。
勿論こんな事が偶然なはずもなく、勿論緻密な計算の上に成り立っている、まぁ計算したのは勿論リエル先生だけどね。
まさかいきなり吸血鬼達が群がってくるとは思ってなかった、まぁどの道皆殺しにする予定だから好都合だったし、よしとするか。
まぁ、ミラの言い方には少しイラッと来たけどここは大人の対応だ、皆さんご存知の俺の大海の様に大きな心で許してやろうとも。
明日からのレベリングが少しキツくなって、少し負担が増す事は…多分ない。
「さて、これからどうしたものか」
「予定通り二手に別れるんじゃないんですか?」
本来の予定ならばミラの言う通りこれか二手に分かれて吸血鬼達を殲滅するはずだったのだが…
「いや、それは危険かもしれない」
俺の言葉に首を傾げる3人。
「おかしいとは思はないか?
俺たちがSSSランク冒険者になったと言う事は既に他国にも知れ渡っている事だ」
これは事実だ、国王があんなに盛大に勲章式なんてするから自分で言うのもなんだが既に俺たちはこの世界において有名人だ。
「にもかかわらず、送り込んでくるのが従属種が一名、さらには今攻撃してきた奴らも全員従属種だ」
「う〜ん、それは確かにおかしいわね」
それとは別にリーナの顔色がよろしくない、まぁ自身を奴隷として追放されたのだからそれも仕方ない事だと思うが、こんな状態で戦うのは危険だからな。
ヘルはいつも通り頭にクエスチョンマークを浮かべているがまぁヘルならば1人でもこの城を落とす事も容易なので心配する必要はない。
「まぁ、リースナルが何を企んでいるのかは知らないしそれでどうにかなるとも思わないが、此処で戦力を分散するよりは皆んなで行動した方が確実にいい」
確かに効率は落ちるが、もしもの時の事を考えると、そっちの方がはるかにいい。
「妾はソータに賛成するのじゃ!」
だから早く行こうとヘルが急かしてくる、今回の作戦においてちょっと面白がってヘルに、
今回の件が片付いたらリーナの家族が美味しいものを食わしてくれるかもしれないぞ。
と、言ったのが原因だな、う〜んヘルは食べ物のことになると暴走しがちだし、もしかしたら本来の姿に戻って……よし、考えない事にしよう。
王城の廊下を歩きながらそんな起こるかもしれない惨劇から現実逃避しつつ、遅い掛かって来る吸血鬼を切り捨てる。
う〜ん、さっきからずっと従属種しか襲ってこない、けど貴族種は絶対にそれなりの数がいる筈だ。
俺の想定ではコイツらはあのチビ女王とは関係ない、謂わば野良の吸血鬼達の集まりだ、あの誇り高いチビ女王がそんな勝手を許すとも思えない。
しかし、コイツらは現にこうして独立した組織として一国を手中に収めるほどだ。
チビ女王が手出ししない理由はわからないが、まぁそれなりの戦力があると見た方がいいだろう。
それなのにも関わらず、従属種しか出てこないのは恐らくは…
「こう言う事だよな」
リーナの話では廊下の突き当たりにある扉を開くとそこには謁見の間に繋がるエントランスがあると言う。
幾代か前の国王が安全面を考慮して謁見の間の前に護衛を配備できる空間を作ったらしい、その場所には貴族種吸血鬼達が待ち受けていた。
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黒を主体とした生地に赤をあしらったゴシックドレスを着こなした銀髪の少女がその真紅の瞳を妖しく輝かせなが忌々しそうに立派らそびえ立つ城一目見ると軽く笑みを浮かべる
「ネルヴィア様、そのように窓にお近づきになれば御身体に障ります」
「フン」
同じく馬車に乗っている、執事服を完璧に着こなした白髪初老の男をチラリと見てネルヴィア様と呼ばれた少女はそう鼻で笑う。
「この程度で吾に痛みを与える事など出来ぬ」
不服そうにそう言いながらも窓際から身を引く少女に初老の男性は少し微笑ましげに笑う。
「それにしても…」
「どうか致しましたか?」
「いや、何でもない」
そうして少女は妖しく笑う、これは面白い事になりそうだと。
その笑みを見て初老の男は思わず身震いするのを自覚する、何せこの少女こそこの男が使える主人にして世界の頂点の一角。
この少女こそ十魔王が一柱であり最古の魔王の一柱である吸血鬼ネルヴィア。
不敵な笑みを浮かべる魔王を乗せた馬車は昼の大通りを進む、この国を象徴する場所、王城へと。
次話50話は10月7日目 日曜日に更新予定!!
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題名変更しました!
土曜日更新予定!!(因みに月曜日の定期更新にするつもりです)
「吸血商人は怠惰スローライフをお望みです」
そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください。
*ちなみに題名は仮名なので変更するかもしれなれません。