46話 屋敷
「家名と言っても、ハッキリ言ってしまえばどうでも良いわけだけど」
「まぁ、そうですよねー」
ミラが苦笑いしながら俺の言葉に同意する、まぁ俺も確かに苗字は考えないとなぁ〜と考えていたよ。
でもさ、ぶっちゃけ貴族の家名なんてどう言う意味なのかもわからないし、何でもいいと言うのが正直なところだ。
例えば、アウレーニス公爵の家名はそのままアウレーニスだが、その意味は無いに等しい、貴族の家名が重要なのはその家が重ねて来た年月などの由緒があるからだ。
つまり俺にとってはどうでもいいと言う事だ、だって俺が爵位を得たのは今日だしね、歴史なんて全く存在しないし、由緒も無いに等しいのだから。
「と、言うわけで我らが常識。
リーナさん、どんなのがいいと思う?」
「えっ?わ、私ですか!?」
こう言ったときは、この世界で王族として高度な教育を受けてきたリーナさんに丸投げするのが正解なのだ、リーナが慌てふためいているが気にしてはいけない。
まぁ、適任がリーナしかいないんだから仕方がない、ここはひとつリーナさんに頑張ってもらうとしよう。
「妾にちなんでドラゴンはどうじゃ?」
「いや、それは無い」
どんなモノでもいいと言っても流石にそれは酷いでしょ、ほら、ミラとリーナも苦笑いして俺の言葉に頷いてるしさ。
「あと、声がデカイぞヘル」
ヘルは今、本来の古竜スタイルに戻っているので従ってヘルの声量はかなりのものになっている、そして、俺は今そんなヘルを壁にしてもたれかかってかいるわけだが、この距離にいたらヘルの声は結構なモノなのだ。
因みにヘルはこうして定期的に本来の姿に戻っている、まぁもどる必要は無いのだが本来の姿の方が体への負担が少なくストレスも無いだろうと言う俺の気遣いでこうしているわけだが、それにも勿論訳がある。
だって、もし街中でいきなり本来の姿になられでもしたら一大事だからな。
そんな訳で俺たちは今、いつものリビングとは別の俺がヘルのためだけに新たに増築した白い空間でくつろいでいる訳だ。
この部屋のモデルは俺に干渉してきたあの女神ジルがいた空間を基にしている、この部屋と別の部屋との扉に空間魔法をかけて完全に外と区切っており、この部屋の中にある魔素は神素のみで構成されている。
この空間を作るのに多少の苦労はあったが結構居心地が良く重宝しているので、その甲斐があったというものだ。
「そうです!こう言った事ならばソータ様が以前いらしたと言う世界の言葉を知っているミラさんの方が適任ではないでしょうか?」
妙案を得たと、リーナが声を上げる、確かに言われてみればそうかも知れない。
「ふむ、確かに一理あるな」
何の由来もなく名前をつけるのは案外難しいしな、ここはひとつミラに決めてもらうことにしよう。
「ちょ!何でそうなるんですか!?」
ミラが声を上げるがもう遅い、さっきリーナに決めて貰うと言ったときはヘラヘラしてたくせにな…
「そもそも、侯爵家の当主はご主人様なんだから、ご主人様が決めるべきだと思います!」
ふっ、何を言うやら、ミラが侯爵家の家名を決めるという事は決定事項なのだよ。
「確かに、ミラさんの言う通りですね」
え?
「これは重要な事ですし、ソータ様がご自身で決めるべきです」
「え?」
マ、ジ、デ、ス、カ!?あの流れからまさかこう来るとは思わなかった。
何故俺がそんな面倒な事を一々考えないとならないんだよ!
視界の端にミラがニヤニヤ笑みを浮かべながらこっちを見ている姿が見えた。
しかし!こんな事で一々怒る俺ではないのだ、広い海のような懐の深さでミラの事を許してやろうと思う。
まぁ、明日からはミラのレベリングはちょっとハードになったりするかも知れないが、それは決して仕返しではない、これはミラ自身の事を思っているが故の結果だ。
それにしても家名か、さてどうしたものか…
ヘルの名前はオリンポス十二神が一柱である、ヘスティアからとった名前だから、ここはオリンポスをもじってオリンパスとか?
うん、無いわ、自分で考えておいてなんだけど流石にこれは無いな。
しかし!こういう時こそ、リエル先生の出番だ、ヘルの時もそうだったけどこう言った事はリエル先生に丸投げするのが最もいい形に収まるのだ。
《では、オリンポス十二神の主神であるゼウスと、ゼウスを意味する、ユーピテルからとり。
ユーピルウスと言うのは如何でしょうか?》
ユーピルウスか、じゃあ俺の名前はソータ・ユーピルウスになるのか…
う〜ん、まぁいいんじゃね?、もうぶっちゃけ面倒になってきたしそれで行くとしよう、何か文句を言って来るやつがいたらそいつをぶっ飛ばせばいい話だしな。
「と言うわけで、我らが侯爵家家名は、ユーピルウスに決定しました」
「ユーピルウスですか?なんか言いにくくありません?」
「ん?何か言ったかな、ミラさん?」
「い、いやぁ何も…」
そもそも、文句を言うのであればお前が考えろと言いたい、大体、国王がつけてくれなかったからこんな面倒な事になっているわけで、全てあいつが悪い。
あ、なんかそう考えたらムカついてきた、今度また王城の食料をからにしてやるかな。
「まぁ、それにちょっと言いにくい方が貴族感が出ていいだろ?」
「う〜ん、それもそうですね」
「うむ、妾も良いと思うぞ!」
「ソータ様達の貴族へのイメージって…」
リーナの呆れたような声が聞こえて来るが、気にしてはダメだ、ここで気にしたら負けだな、うん。
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翌日、早速決定した家名を国王に報告するために王城に来ている、来ていると言っても王城内に俺の転移陣があるので転移しているだけなんだけどね。
まぁ、本当は転移陣なんて必要ないんだけどね、俺の転移魔法はリエルが常にマーキングしているので一度訪れた場所なら必ず転移することが可能だし、俺の感知できる範囲であれば言ったことがない場所でも行くことが可能なのだ。
にも関わらず、わざわざ転移陣を設置しているのは、この世界のレベルに合わせんために過ぎない、まぁそれでも多少超過している気もするが、そこは気にしてはいけない。
そして今、王城の一室でお茶を飲んで優雅に待たされているわけだけど、勿論俺の隣に座っているヘルが王城の食糧庫にダメージを与えているわけだけど、まぁ言いに来いと言った国王が悪い。
しかし、このティータイムもそろそろ終わりのようだな、部屋のドアがノックされる音が部屋に響く。
「どうぞ」
「お待たせ致しました、どうぞこちらへ」
その言葉と共にメイドが入ってくる、前に来た時よりも待ち時間が短くなっていることから考えるに、ヘルの食料庫への攻撃は十分な効果を上げているようだな。
今回、通されたのはいつもの謁見の間でも無く、以前行った庭園でも無い、国王の執務室だった。
ドアをメイドがノックし、中から執事らしい人物が少しばかり顔を出し、一度部屋の扉を閉める。
それから国王が入札の許可を出し、執務室の中に入る、まぁこれが通常の手順なのだろうが面倒だよなやっぱり。
「失礼致します」
「よくぞ参られた」
「いきなりの訪問をお許しください」
入室し、取り敢えず礼をとってから社交辞令を述べる。
「それで、本日ここへ来た訳は何でしょうか?」
「はい、昨日仰られた、わが侯爵家の家名が決定したのでご報告に」
「それは、早いですね。
では、お聞かせ頂いても?」
「勿論です、我が家の家名はユーピルウスとさせて頂きたく思います」
「ユーピルウスですか、わかりましたではそれで手配させて頂こう」
「よろしくお願い致します」
よし、これで今日の仕事は終わりだな、王都で散策でもして、美味しいものを食ってから帰るとするか。
そんな俺の希望は次の国王の無慈悲な一言により粉々に打ち砕かれる。
「それで、この後何かご用事は?」
と、はっきり言ってこれと言ったよ用はない、しかし、ここで国王に付き合うこともない、よし帰ろう。
「いえ、特にありません」
えっ!?何を言っているのかなリーナさん!?
「そうか、それは良かった、では早速行くとしましょう」
そう言って椅子から立つ国王、リーナさんやってくれましたね、俺のゆっくりと過ごす小さい希望が…
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非常に気まずい、何これ?なんでこんなことになってんの?
俺たち4人と国王の5人が馬車に乗っているのに言葉を発する者は誰もいない、この現状。
「それで国王様、これからどこへ行くのですか?」
「いや、私から君達へのプレゼントをしようと思いましてね。
ほら着きましたよ」
まだ王城を出て数分だと言うのにもう目的地に着いたらしい。
「さてと、では私から君達に贈るのはこれだ」
そこにあったのは巨大な屋敷だ、まさに貴族の豪邸と言える屋敷。
「これは、素晴らしいですね」
「気に入って頂けて良かった」
「ですが、こんなモノ頂いてもよろしいのですか?」
この屋敷を買おうと思ったらかなりの金額が必要になるだろう、まぁ俺が金を出せば買うことはできるけど、地球で庶民だった俺が躊躇するほどの金額はするだろうな。
「勿論だとも、我が国の侯爵となった貴殿を宿に住まわせているとなれば大問題だですから」
「そう言うことでしたら、ありがたく頂きます」
これで1つ国王にかしができてしまったな、何かあったら助けてやるとするかな、まぁ俺にできる範囲であればだけどね。
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題名変更しました!
「吸血商人は怠惰スローライフをお望みです」
そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください。
*ちなみに題名は仮名なので変更するかもしれなれません。