SS 03話 勇者達2
番外編です。
本日は本編と二話同時更新したいと思います!!
「駿そっちに行ったぞ!」
俺たちは今、メビウス帝国近辺の森の中にいた。
「任せろ!」
駿のジョブである戦王は、戦闘行為全てに補正がかかると言うまさしくチート効果を持っている、超絶レアジョブだ。
そんな駿の戦闘スタイルは小学生時代から続けていたと言う、空手を基礎にしたもので主に素手での殴打を得意としている、他にもジョブ補正で武器全般を扱う事ができるらしいが、本人が言うには素手が一番しっくり来るそうだ。
そんな駿の拳を受け止めきれずに2メートルを超える熊の様な魔物が地に伏した。
俺たちは、アストラル王国王都を出てこの約1ヶ月の間にそれなりにこの世界のことを知ったつもりだし、そこそこ強くもなったつもりだ。
「2人とも大丈夫だった?」
「結構な大物でしたね」
そう言って俺の背後から話しかけて来るのはあかりと雫だ。
あかりのジョブである賢者はあらゆる魔法に精通しその威力の大幅に上昇させるらしい、これも結構なチートなのだが、魔法を習得するには魔道書を見てその魔法を理解するか誰かに教えて貰う必要があるそうだ。
雫のジョブ、守護者は主に結界を張る事に特化しており、その結界は俺たちですら突破する事が難しいほどに強力で、恐らくはこの世界に雫の防御を突破できる者はそう多くない。
この2人に俺と駿の4人で俺たちはパーティーを組んで行動している、と言っても移動するのはアストラル王都に残ったクラスメイト以外の全員でだけど。
その中で俺たちは4人1組のパーティーを作り各々レベル上げに勤しんでいると言うわけなのだが、俺達4人のパーティーがその中でも一番レベルを上げている。
「2人のお陰でこうして無傷だよ」
「まぁこの程度のやつならもう楽勝だよな」
「もう、駿君慢心していたら足元をすくわれますよ」
「まぁまぁ、許してやあげような、あかり」
森の中でこうして穏やかに笑談が出来ているのも、俺たちがこの1ヶ月で強くなった証拠でもある。
「グォルルゥゥウ」
その時、俺たちの前に1匹の狼型の魔物が現れてこちらに威嚇をして来る、恐らくはさっきの魔物との戦闘音と死体の匂いにつられていたのだろう。
その魔物を視認した瞬間にあかりと雫の2人の姿が掻き消える。
別に敵の攻撃を受けたわけではない、あかりの魔法であるテレポート、視認した場所に瞬時に移動できる超高等魔法の1つで今の世界でこの魔法を使えるものは指で数えるほどしかいないらしい。
あかりと雫の2人が離脱したのは、2人が後衛職である事に加えて、2人がいると俺と駿が満足に動かないと言う事が要因している、誰かを庇いながら敵と戦うのは難しいからな。
「行くぞ、駿!」
「おうよ!こいつはさっきの奴よりかはやりがいがありそうだぜ」
そんな話をしているうちに俺と駿を一瞬、淡い光が包んで消えた。
それと同時に狼型の魔物が動く。
「速い!」
「ちっ、ちょこまかと動き回りやがって!」
魔物は俺たち2人の周囲を絶えず移動しながらこちらの出方を探っている様で攻撃して来る様子はない、しかし問題なのはそのスピードだ。
1ヶ月前、魔王達の襲撃と司波の死から、俺たちは通常では考えられないほど強くなった、今ではアストラル王国の騎士団長ゾルフさんにも1人で互角の勝負が出来るほどに。
1ヶ月前は4人でかかっても軽くあしらわれたと言うのに、その事を考えればこの成長速度は異常と言ってもいい、にも関わらず、魔物の動きが目で追いきれない。
音などで俺たちの周囲にいる事は分かっているがそれでも正確な位置がわからないので攻撃のしようがない、あかり達も同じで敵の動きが見えないので迂闊に攻撃できないのだろう。
「クッソォ!」
駿が大声とともに拳を大振りに払う、勿論そんな大振りが魔物に当たるはずもなく虚しく空を切る。
そんな隙を魔物が見逃すはずもなく、誰もいなかったはずの駿の背後に次の瞬間には巨大な狼の魔物が片足を振り上げた状態で立っていた。
狼の魔物がその足を振り下ろす、常人が受けたなら瞬時にしに当たるであろう威力の攻撃、訓練された騎士でもこれに耐えられるほどの奴がどれほどいるか、しかし、振り下ろされた足が、ガッキンとまるで金属にでもぶつかったかの様な音を立てながら止まった。
正確に言えば止められた、と言うべきか、魔物の足は駿にあたってその場で止まっているのだ。
困惑する魔物を俺が背後から攻撃し、魔物の意識が俺に移った瞬間に次は背後から炎魔法が着弾し大きな爆発が起こり魔物が吹き飛ぶ。
狼の魔物は空中で綺麗に一回転し着地する、そして再び地を蹴ろうとして魔物の動きが止まった。
いや、今回も止まったでは無く止められたが正解だ。
「よっと」
「どうどう!?私の拘束魔法は?」
この場に再びテレポートで現れたあかりとテンションの高い雫が聞いてくる、そうこの魔物の現状は雫の拘束魔法によって拘束されている状態なのだ。
まぁ拘束魔法と言っても、その実態は結界でがんじがらめにしていると言うのが正解なんだけどね。
「駿君大丈夫でしたか?」
「おう!雫の魔法のおかげで助かったぜ!」
「今回のMVPは雫だな」
「やっぱりそう思うよね!」
「雫ちゃん自分でそれを言うのはどうかと思うよ」
この会話からわかるように、魔物の攻撃が駿にあたって止められたのも雫が俺たちに防御結界をかけていてくれたおかげだ。
「まぁいつもの手順だけどね」
俺がそう言う通りで、これは俺たちの戦闘における常勝策であって、がんじがらめにされて身動き1つできなくなった敵はもう既に勝敗が決している。
「でも、やっぱり生き物を殺すのは嫌な事だな」
「私もそう思います」
俺の言葉にあかりが浮かない顔で同意する、この1ヶ月あかりは魔物と言えど生き物の命を奪うと言う行為に忌避感を抱いている、安全な現代日本に住んでいたのに突然そんな事をしろと言うのは酷な事だろう。
俺でさえも未だに多少の忌避感を持っている、それも今回のように地球でもサイズさえ鑑みなければ普通にいるような狼のような魔物だ、それを殺すとなると忌避感も相当なものだろう。
結局、あの狼の魔物を殺したのは駿と俺だった、まぁ誰が殺してもパーティーを組んでいる限り均等に分配されるので一緒なのだが、この世界では躊躇は命取りになる、だからあかりにもいつかは慣れてもらいたいけど、それはゆっくりやっていけばいい事だな。
「よくぞ来たな、勇者達」
今俺たちは、メビウス帝国帝都の皇宮でこのメビウス帝国の皇帝である、アンジリーナ・メビウスと謁見していた。
皇帝の事をアンジリーナ・メビウスと言ったが実際はもう少し長いそうだが、面倒なのでそう呼んでくれと本人にさっき言われたばかりだ。
「お目にかかれて光栄です。皇帝閣下がまさか女性の方だとは思いもしませんでした」
「ん?そうなのか、メビウス帝国の長は女帝だと言う事はそれなりに有名な話だと思うのだが」
「申し訳ありません、なにぶんまだこちらの世界に来て間もないものでして。
お気を悪くなされたのなら、謝罪します」
「いや、謝る必要はない。
それで、お主らの要求は我が国が保有する地下迷宮アビスへの入場許可だったな」
「そうです、何せ私たちの立場は微妙ですので」
迷宮アビスでは入場料さえ支払えば誰でも好きな時に入る事ができる場所だ。
しかし、あかりの言う通り俺たちの立場は非常に微妙で、異世界から召喚された勇者となっているが、では俺たちは一体どの国に所属しているのかとなると、何処とは断言できない。
俺たちは、この世界の各国がそれぞれに支援すると言うような立場に立たされている。
ちなみにこの場で話していいのは俺とあかりの2人だけ、別に帝国側の要求などでは無く、俺たちで決めた事だ、と言うか皆んなに決められた事だ。
みんなが言うに、俺たち以外がこう言った場で話すと、やらかしてしまう可能性があるそうだ、あかりはわかる、けど何故皆んながそんなに俺の事を信頼しているかわからない。
けど皆んなにお願いされて断るわけにもいかないし、と言うわけで、俺はいつも一杯一杯だ。
「ん、どうしたそんな顔をして」
「えっ、あ、いえ、何でもないです」
どうやら知らず知らずのうちに顔が引きつっていたようだ。
「まぁ良い。
迷宮の件だが勿論許可しよう、お主らの事は支援するようにと各国の間で決まっておるしな。
好きな時に迷宮に入るといい、入場料も無しにしておいてやるぞ」
「それは助かります。ありがとうございます」
入場料が無料になる事はかなり生活の助けになる、何せ毎回の入場料でそこそこの出費になるからな、迷宮の中で数日過ごす人もいるそうだが、ほとんどの人はそれに挑戦して死ぬことになるそうだ。
「それで、お主らは何処に住む?
この皇宮に住まわせることもできるが」
「有り難い申し出ですけど、私たちは迷宮近くのホテルに部屋を取るつもりです」
「そうか、では手配しておこう。
大臣、頼んだぞ」
「畏まりました、皇帝閣下」
そう言って皇帝のそばに控えていた1人が下がって行った。
「では俺たちはこれで失礼させて頂きます」
これでやっとホテルでゆっくり休憩する事ができる、皇帝閣下に提案されたように皇宮に泊まらせてもらう事が一番安全でいいのだろうけど、その程度の危険から身を守れなければこの先、あの魔王達と戦っていく事は不可能だ。
それに、こう行った政治の場にいては何かと肩がこるから気が休まらないのだ。
「まぁそう急ぐな」
早く休憩したいのは本当だが、流石に一国の長を蔑ろにするわけにはいかない。
「では、これからお主達に対する指示を出す」
俺たちの木が引き締まったのを見て皇帝閣下は面白そうに笑う。
「指示、ですか?」
「そうだ、まぁ我が帝国で迷宮に好きに入る許可を与える代価と言ったところか」
「俺たちに何をしろと?」
「では発表しよう。
お主達にはこれから我が帝国が誇る学園に通ってもらう事になった。これは各国評議会での決定でな、諦めて学園に通うように」
学園、まさか異世界に来てまで学校に通うことになるとは思ってもいなかった。
「ですが、それでは迷宮に行く時間がありません」
「合間を縫って行ったり、休日に行ったりやりようはいくらでもある」
「そ、それはそうですけど」
「それにこの方針はお主らのためでもある」
「それはどう言う意味なのですか?」
「お主らがこれからこの世界で生きて行く上で、どうしても貴族社会との関わりを持つ事になる。
勇者などの英雄になれる存在はどの国も自国にいてほしいものだからな、そんな時に今のままのお主らでは良いように操り人形にされるのがオチだ。
だからこそ、そうならないようにお主らには学園に通ってもらうと言うわけだ」
「う、わかりました」
そう言われてしまってはどうしようもない、確かに皇帝閣下の言う通りだからだ。
「それは良かった。では大臣、彼らをホテルまで案内をしてやれ」
「御意に」
そしていつのまにか皇帝閣下の近くに戻って来ていた、大臣に案内されて俺たちは超高級ホテルに連れて行かれる事になる。
そしてその1週間後から、ちょうど新学期が始まると言う学園に通う事になった。
少しでも『面白かった』『続きが気になる』と思ってくれましたら、
ブックマーク登録及び、下記の評価ボタンを押して頂けますと嬉しいです。
これからもよろしくお願いします!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
新作です!!
異世界暗躍〜最強の勇者様?ただの商人です〜
そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください。
*ちなみに題名は仮名なので変更するかもしれなれません。