32話 VS古竜3
キマった。
多少、厨二臭かったがそれも致し方ない、何故ならば!
一度はやって見たいができない、ピンチに空から舞い降りるが出来たから、これは俺の異世界でやって見たいテンプレベストスリーにランクインするシュチュエーションだ、まさかこんなに早く実現するとは。
「ご主人様、なんか嬉しそうね」
「やりましたね、ソータ様!」
ミラが呆れたように、そしてリーナは恐らく何のことかわかってはいないだろうが取り敢えずという感じでそう言ってくる。
「それはもう、なにせベストスリーだぞベストスリー!」
「そ、そうですね」
「よ、よかったですね」
2人とも多少困惑している感じがしなくもないが、別に今は気分がいいので気にしない。
「き、貴様ぁぁあ!!よくも我が僕達を消し炭にしてくれたなぁ!!
我にこんな無礼をしたのだ、勿論死ぬ覚悟はあるのであろうな?」
「うるさい」
せっかく気分良く余韻に浸っていたのに、バカな黒古竜のせいでかなり気分が害されてしまった。
ムカついたのでちょっと低い声で魔力を乗せて端的に言ってやる、すると側にいたミラとリーナの2人がビクッと震え、後ろの冒険者達は静まり返り、古竜はたじろぐ、さっきまで何が起きたのかと喧騒が飛び交っていた戦場に沈黙が蓋をする。
「ミラ、リーナもう早く終わらせる事にするぞ」
「了解ですご主人様」
「頑張ります」
2人の力のこもった返事を聞き頷きを返しいざ戦闘開始というところでまたしてもストップがかかる。
「ま、待ってくれ!」
「はぁ、何か?」
全くここにいるやつらはこの爺さんといいあの黒古竜と言いどうしてこうもやる気をぶった切ってくれるのか?
「お主達は一体何者なのじゃ?それにさっきの五体の巨大な龍は?」
「端的に言いましょう、俺たちは新米冒険者、さっきのは俺の魔法だ」
「そ、ソータさん何故あなたがここに」
「ん?受付嬢してたエリナさんか昨日ぶりですね」
「そんな事より!」
「まぁまぁ落ち着いて下さい、そうですね折角王都まで来たのにここを潰されたら面倒じゃないですか色々と、それに上位冒険者になってみたくて、ですね」
「ご無沙汰してますエリナさん」
「いつもご主人様がお世話になってます」
そう言っていつもと違い本格的な装備を身につけた受付嬢エリナさん、もとい上位冒険者および総師秘書エリナさんに軽く礼をするリーナとミラ、しかし聞き捨てならぬ事があったぞ今。
「ちょっとミラさん、お世話になっていたのは俺じゃなくて俺達ですよね」
「……そうですね」
「何、今の間」
「ご主人様そんな事よりも早く終わらせるんじゃないんですか?」
「おっとそうだった、と言うわけで話は後にしてくれませんか?」
「まて、確かに魔物の数は減ったが古竜には及ばないまでも準魔王クラスの魔物達がまだいる、君は兎も角そこの少女2人にどうにか出来るような場面じゃない」
「あんたは?」
「私は冒険者ギルド副総師および総師補佐を務めているクラウスと言う」
「…そうですか」
こいつは俺も嫌いなタイプのやつかもしれないな、何やら誇らしげにしてるし、大した力もないのに高圧的に出て来そうなところとかも嫌だしね。
「行くよ、2人とも」
「君は私の話を聞いていたのか!?」
「うるさいぞ、じゃあ聞くがお前らにどうにかできるのか?ん?」
するとおし黙るクラウス、様子を見るに爺さんも何か言おうとしていたな、これ。
「出来ないならそこで黙ってろ」
それにそろそろ面倒になって来た、あ、なんかこいつらのせいで時間を無駄にしてると思うとイライラして来たな。
よし、言いたいことは言っておいてやるか。
「そもそも、お前らはこんな悠長に話してるのにあの古竜が攻撃してこないのは何故だと思う?」
俺の言葉を聞いてハッとなる冒険者の皆様、何故こんな事にも気づかないのか。
「俺が魔力であいつを牽制してるからだよ、だからあいつは警戒して安直に攻撃して来ない。
けどな、その牽制するのも楽じゃないんだよ、正確に言えば面倒だからな。
わかったらそこで終わるまで黙って待ってろ」
爺さんとクラウスらぽかんと口を開けて呆けたような顔をしているがエリナさんだけはじっと品定めするようにこちらをみている。
この人は将来有望だな、こうして常に人を観察できる奴は強くなるからな。
「さてと、おい真っ黒古竜、お前のせいで俺の苦労が水の泡だ責任は取ってもらわないとな、お前もそう思うだろ?」
「なんの話をしているんだ貴様は?」
「まぁいいさ、ミラ、リーナ雑魚は任せる」
「了解ですご主人様、作戦通り殲滅します」
「頑張ります」
そして2人が俺の周りから消えた、別に本当に消えたわけじゃない、2人はその小さな身体とスピードレベリングで身につけたスキルや技術を持って高速で起動しただけだが、大抵のやつには2人が消えたようにしか映らないほどのスピードは出ている。
「あの小娘共といい貴様と言いいったい何者だ?」
「だから人間だって言ったはずだ、そろそろ始めようか」
その時、上空から純白が舞い降りる。
「ちょっと、ちょっと君達誰だよ?乱入は良くないなゲームのルールは守らないとね」
そう言って現れたのは白い古竜だ、だが。
「うるせぇぞ」
手に持つ刀に魔力を纏わせて白い古竜に向けて一閃、その瞬間に魔力に属性を付与し、魔法斬撃として放つ。
「は?」
増やした属性は火、白い古竜がそう呆けた声を漏らした時には、白い古竜のすぐ横を巨大な炎の斬撃が地面を焼き裂き大きな溝を作っていた。
「後で相手をしてやるから、そこで待ってろ」
そして威嚇の変わりに魔力をぶつけながらそう言う。
「は、はい」
白い古竜はそう言うしかなかった。
「悪いな黒い方、ストレス発散に付き合ってもらうぞ」
歩いて一歩一歩黒い古竜に近づく。
「な、舐めるな下等生物が!!」
古竜がブレスを放つ、そのブレスに同等の反対属性の魔法をぶつけて相殺しながらも足は止めない。
古竜はわかっているのだ、この人間は自身がかなう敵では無いと
「喰らえ!!」
古竜の周りに黒い球体がいくつも浮かび上がる。
「珍しいな恐らくは闇魔法、その上の暗黒魔法か流石にそれを相殺する魔法はまだ覚えてないな」
俺の言葉を聞いてニヤァと笑みを浮かべる古竜。
「死ね」
勝ち誇った顔で黒い球体を放ってくるが。
「だが」
チン、と言う音の後、飛んで来ていた黒い球体全てが2つに割れる、何をしたかと言うと簡単だ手に持ってる刀の抜刀術で切り裂いた、それだけだ。
「そんなバカな…」
古竜が俺の剣域に入るところまで近づいてさっきと同じように、魔力を刀に纏わせる。
チン、その音がまたなり次の瞬間には古竜は体の至る所を切り裂かれ血を流す。
しかしその数全てが浅い、致命傷には絶対に至らない微妙なラインで切り刻まれた古竜が後ずさる。
「さてと、戦闘にはならなかったな、今トドメを刺してやる」
俺は刀を鞘から抜き構える、刀を抜くのは古竜へのせめてもの情けだ、流石にまともに剣を抜かれることもなく殺されるのは忍びないからな。
「炎天・蒼天・風天・地天・雷天」
俺の呟きに魔法陣から五色の球体が現れる
「凝縮、付与」
その言葉で、1メートル程度の大きさの球体が手のひらサイズに凝縮され次の言葉でその球体が刀に吸収される。
「死ね、天剣」
一閃、そしてズルリと古竜の身体が斜めに二分される、やった事は単純だ、さっきやったような纏った魔力を斬撃にして飛ばしただけ、しかしその纏った魔力をの強大さのせいか本来硬い鱗に覆われて剣戟は愚か魔法までも簡単に弾く古竜が熱せられたバターのようになんの抵抗もなく両断された。
そして再び訪れる静寂、白い古竜はその光景に言葉をなくし、冒険者達は何が起きたのかと目を見開く。
そしてその状況を作り出した元凶は静まり返った戦場に、いや、元戦場だった場所をコツ、コツと音を立てて歩く、そして白い古竜に一瞥も向けずに、冒険者達のところまで歩いて戻る。
「ん?どうしたんですか皆さん」
意味がわからない、確かに黙って見てろとは言ったが、何故こんな、皆一様に同じ顔をしているのか、おっとエリナさんだけは冷静な表情をしているな一緒にしたら後で怒られそうなのでこう言うところはしっかりしとかないとな。
「さっきのは、一体」
しかし冒険者ギルド総師の疑問は2人の少女の声に遮られることになる。
「ただいまご主人様!」
「ただ今戻りましたソータ様」
「き、君達無事だったか」
ミラとリーナの姿に安堵したようにクラウスが胸を撫で下ろす。
「そ、それでお嬢さん達は何をしていたのじゃ?」
「あれ、あれ」
爺さんの言葉にミラが指を指す、そこには見事に首を飛ばされた準魔王級の魔物達の山があった。
それを見た冒険者達が再び目を見開く、何人かは目をこすり再びその山を凝視する。
「あ、あれをミラちゃんとリーナちゃんが…」
冷静沈着なエリナさんも流石に少女2人が作り上げた惨状に目を開いて驚いている。
「流石、2人ともやるな」
「そりゃまぁご主人様にあんな事させられましたから」
「そうですよソータ様の獣に比べたらあの程度の獣の相手など」
冒険者達からの視線が痛い、さっきまでは畏怖や尊敬するかの様な視線で満たされていたのに今向けられているのは、まるでゴミでも見るかのように冷たい視線だ。
これはマズイ!このパターンは不名誉な2つ名をつけられる典型的なパターン!!
なんとしてもそれだけは回避しなければ!!俺にだってやりたいテンプレとそうでないとテンプレぐらいある、勿論。
「おっとっと、2人とも誤解を招くような言い回しをしないでくれますか!?」
「ごめんなさい」
「?」
ミラは素直に謝るがリーナは意味が全くわかっていない様子、まぁまだ11歳だ知らなくとも無理はない、けど、しかしだ、知らずにああいう言い回しをするリーナが怖い。
「さてと、こちらは終わったようですからそちらの質問に出来る限りの範囲でお答えしますよ」
「そ、それは有難いかぎりだが、その前にあの古竜はどうするのじゃ?」
爺さんが指差す方向に目を向けるとそこには大人しくこちらを見ている白い古竜がいた。
「あっ、忘れてた」
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新作です!!
異世界暗躍〜最強の勇者様?ただの商人です〜
そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください。
*ちなみに題名は仮名なので変更するかもしれなれません。