28話 計画
この世界に来てやっと冒険者になるテンプレをクリアした後また宿屋に戻って来た、冒険者になったは良いが、ハッキリ言って金に困ってもいないし、する事がない。
ランクを上げるのも良いが、多大な時間がかかる事もあってハッキリ言ってめんどくさい。
と言うのも冒険者になったのは異世界転移モノのテンプレだからであって特に目的があった訳でもないのだから仕方がない事なのだが、世の中で楽に過ごす為には3つの条件があるそれは力、金、そして権力だ。
こんな事を言うのは何だがこの3つさえあれば大抵のことはできる、そしてその内、2つ金と力はもう持っている、力のほうは流石に魔王や龍王と言った例外が存在するので絶対的では無いがそれでも人が個人で持つ力としては最上位に位置するだろう。
しかし俺には権力がない、この世界を観光して回るのにいくら金と力があっても権力がなければ面倒ごとに巻き込まれら可能性がある。
貴族や王族などの権力者とはそう言うものだ、いくら力を持った存在がいようとも味方につければ問題ない、それが無理なら強権を使って他の強大な存在、例えば魔王とかに権力を使って抜いた無理やり押し付けるとか、他国との戦争に追いやったりすればそれで良いと考える。
例え相手が魔王や国でも負けるつもりはないが、それでも面倒な事には変わりない。
「よし、次は権力を手に入れるとしよう」
「また、ご主人様が何か言い出したわね」
「でもミラさんソータ様はそう言うお人ですよ」
「ん?まぁそれもそうね」
さていつも通り失礼な子供2人は無視して…2人の態度?もう諦めましたとも。
「2人とも別に権力を持つ事は変な事じゃない、その方が色々と楽に行動できるからな」
「それはそうですけど、この世界で家族でもない平民が権力を持つことなんてよっぽどのことがないと無理ですよご主人様」
「そうですね、Aランク以上の冒険者になるか、何か偉業を成し遂げるかしないと無理ですね。
災厄級の魔物なんて滅多に出ませんし地道に冒険者ランクを上げて行くしかありませんね」
確かにAランク以上の冒険者は貴族と同等かそれ以上の権力を持っている、これは力を持った冒険者達はその国の主戦力と言っても過言ではないことからそう言った処置になっている訳だが。
ちなみにこの世界の魔物達は下から順に災害級・災厄級、災禍級、天災級、神災級の五段階に分けられていて最高位の神災級は十魔王や龍王の例外だけが認定されている。
「リーナそんな面倒な事はしない、確かに俺たちの実力なら数年でAランクまでいけるだろうが権力を手に入れるためだけにそんな面倒な事をするつもりはない」
「そうなると災厄級以上の魔物を討伐するしかないけどそんな魔物は滅多にいるものじゃないしどうするんですかご主人様?」
「2人ともスタンピードって知ってるか?」
「それは知ってますけど」
「確か、ダンジョンの魔物が大量発生してダンジョンの外にまで出てくる事でしたよね?」
それがどうかしたのか?と言いたそうな顔でこちらを見てくるミラとリーナ。
「リーナの言う通りスタンピードとは簡単に言うと魔物が暴走する事でこの世界では天災として恐れられている、まぁ高レベルの魔物が大挙して押し寄せるなんてこの世界人たちからしたら悪夢以外の何物でもないだろうしな。
さて質問です、スタンピードを人為的に起こす事が可能でしょうか?」
「そんな事、不可能です」
「そうですね、スタンピードは天災つまりは自然災害と同じです。
人間が人為的に起こす事なんて出来ないと思います」
2人の答えは不可能だ、確かに普通の人なら不可能だろう、ダンジョンを造った者、ダンジョンマスター以外は…
「残念ながら、答えは可能だ。
まぁ一般的に言えば2人の答えは間違っていない、しかし、ダンジョンを造ったダンジョンマスターがダンジョンで造られた魔物を操作出来ないはずがない、ダンジョンマスターが魔物たちを暴走させたらそれがスタンピードになるってわけさ」
「た、確かに言われてみればご主人様ってレベリングの時、魔物を召喚してたわね」
「でもそんな事が可能なら世界中がその力を欲しがりますよ」
ミラがうんうん、とどこか納得したように頷き、リーナがもっともな指摘をしてくる。
まぁゲーム時代では自分が創り所有するダンジョンの魔物を暴走させ相手にぶつけると言うのは常習手段だったのだが。
「確かにリーナの言う通りだ、自国の兵を使わずに敵国に攻める事も出来るからな、権力者達からしたら喉から手が出るほど欲しい力だろうな」
自国の兵士に損害なく、安全な場所から魔物を操るだけでいい、そんな力があったら各国の権力者がこぞって手にしようとするだろう。
「だからこそバレずにやる必要がある」
「なるほど!」
「ご主人様がスタンピードを人為的に起こす事が出来る事に対して驚かないのね」
「まぁソータ様ならそれくらい出来ても不思議ではないかと思いまして」
納得した顔で頷いたリーナにツッコミを入れたミラに帰ってきた言葉がこれだった。
「古竜を一人で一方的に嬲り殺しにするソータ様なら天災を起こす事が出来ても不思議ではありません」
そしてこう言い放った。
「…人の事を化け物みたいに言うのはやめようかリーナ」
「す、すみませんでしたソータ様!」
リーナ達の前で古竜戦のお手本として古竜を一人で倒した事が原因か、少し強めの口調で言うとリーナは勢いよく謝ってきた。
「ん、わかればよろしい」
「でもご主人様スタンピードを起こせるダンジョンってご主人様が造ったダンジョンだけですよね?」
「まぁ、最下層から殺気をばらまいて行って無理やり暴走させる方法もやろうと思えば出来るが、それ以外ではその通りだ」
「うわぁ、そんな方法もあるんだ。ってそうじゃなくて、この辺りにご主人様が造ったダンジョンってあるんですか?」
「この辺りには1つも無かったと思うぞ」
そう、ここは休息の三大国、和のエラムセス王国だ、俺はゲーム時代ひたすらレベリングやイベントをしたりしていた、つまりはこの国とは全く縁がなかったと言うことに他ならない、そしてそれはこの国周辺に拠点がないことを意味するのだ。
「じゃどうやってスタンピードを起こすんですか?」
ミラの疑問はもっともだだがそれこそ簡単な解決策が存在する、この世界に来てから幾度となく使っている方法が。
「ミラさんそんなの簡単ですよ、ここの近辺に新しくダンジョンを造ったらいいだけじゃないですか」
そう言うリーナ、確かにそれも可能ではあるが残念ながらハズレだ。
そもそも今の俺はダンジョンを造るために必要なユニークスキル迷宮創造を持っていないので、新たにダンジョンを作ろうと思えばアビスに戻って迷宮創造の事を記している魔道書を読む必要がある、迷宮創造が必要でない今そんな面倒な事をいちいちしたくない。
「確かにリーナの言う方法でも可能だがもっと簡単な方法がある」
「もっと簡単な方法ですか?」
「そんな方法が!?」
元王族だからかミラより頭がキレるリーナがかなり驚いている。
「そんなに驚くような事じゃない、俺達も毎日使っている方法だ」
そう言って勿体ぶってみるが、ミラもリーナも頭にはてなマークを浮かべている。
「もうご主人様勿体ぶらないでください!」
「そうですよソータ様早く教えて下さい!」
おっとミラとリーナに怒られてしまった、まぁ2人とも超のつく美少女なので全く怖くなく微笑ましいくらいなのだが。
「答えは、転移魔法だ」
そして答えを聞いた2人の表情がハッとなる。
「アビスの魔物達を暴走させ転移魔法でこの近くにあるダンジョンにでも出口を繋げば後はほって置いても勝手にアビスに存在する高レベルの魔物達によるスタンピードが起こる」
「その手がありましたか!」
「なるほど」
リーナが驚いた顔をし、ミラが納得の表情を浮かべる。
まぁ2人が気づかないのも無理もない…のか?取り敢えずこの世界では転移魔法なんて神代の魔法で現代に使える者は例外を除いて存在しないとされているし、毎日当たり前のように使っているので転移魔法のことを考慮していなかったのだろう。
「まぁこれで古竜でも討伐すればAランクくらいには慣れるだろ、多分」
「いやいやご主人様、古竜なんて災厄級どころか天災級の魔物ですよ」
「そうですよソータ様、古竜を討伐するにはAランクどころかSSランク以上の冒険者が必須と言われているんですよ」
「でも、勝てるんだから別に古竜がいても問題ないだろ、それに高ランクの魔物であればある程昇格した時のランクが高くなるはずだし、討伐した魔物の素材は討伐した冒険者のものになる、またあの肉が食えるんだぞ、百利あって一害なしだろ?」
「よし、ご主人様今すぐにでも古竜を討伐しましょう」
「そうですね、そうしましょうソータ様」
肉のことをちらつかせた瞬間、ミラもリーナも目の色を変えて即決で同意して来た、やはり食欲というものは恐ろしい力を持っているようだ。
「落ち着け、さっきも言ったはずだバレないようにする必要がある、俺たちがこの街に来てその日にスタンピードが起こって古竜を討伐なんてしたら流石にタイミングがよすぎる。
よって作戦の決行は一週間後、それまでは新人冒険者らしく受けれる中で最高ランクの依頼をこなす」
「ご主人様それは新人冒険者のとる行動じゃ無いです」
「普通は最低ランクの依頼を受けるものですよソータ様」
古竜肉で盛り上がっていたミラとリーナからいきなり呆れたような目でそう言われた。
俺だってそれぐらいわかってますとも、でも一週間たっていようがGランク冒険者が古竜をいきなり討伐なんてしたら異常事態だ、だからこそ実力は高いことを周知してもらう必要があるのだ。
と言っても大した効果は上がらないと思うけど…
「まぁ明日から一週間は地道に依頼をこなす事と今まで通りレベリング続けるとします」
「了解ですご主人様」
「承知致しましたソータ様」
さてミラとリーナの了承も得た事だし明日から一週間まじめに冒険者稼業をするとしますか。
「じゃあ今日は軽くレベリングしてからミラの飯を食って寝るか」
「レベリングするんですね」
「はいっ!」
少し嫌そうな微妙な顔をするミラとリーナの元気な答えが返ってくる、リーナがやけに乗り気なのは恐らくは古竜肉効果だろうと推測する。
(ほぼ間違いなくその通りだと推測します)
とリエルからもお墨付きをもらった、料理の力は凄まじいな…
これからは誰かと交渉するときはミラの料理を食わせてからにするとしようかな。
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