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無能と呼ばれた天才ゲーマーは異世界を好きに生きたい  作者: フウ
第2章 エラムセス王国編
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26話 神様の話

「ふぅ〜」


白くどこまでも白い世界で蒼の髪をたなびかせながら女神は1人ため息を吐く。


「面白い子がいたものだね〜

あぁ〜疲れたぁ」


少し眠そうに欠伸を漏らし、神らしからぬ表情をする女神。


少女の見た目をしている、彼女の年相応にとれるその仕草はとても似合っている。


「ふうぁ〜、人間と話すのは一体何年、いや何百…何千年かな?」


欠伸をしながらも独り言を呟くき、疑問を口にする。


実はその人間と話をしてからもう約一月が経っているが少女は、


「まぁいっか」


と軽い調子でそう言うと、一度指をパチンと鳴らす。


すると身につけていた白いワンピースがネグリジェに変わり、何処からか超キングサイズのベッドが現れる。


「さてと一眠りするかなぁ」


その巨大なベットに潜り込み欠伸を噛み殺しながらそう呟く、その呟きに答えるものがあった。


「何をバカなことを言ってるんですか貴方は。

それと貴方が人間に直接会ったのは神となっては初めてですし、ついでに言うと最後に言葉を交わしたのも3万1006年前になります」


そう言って現れたのは金色の長髪をなびかせている、1人の美女だ。


「なっ!何故ここが!!」


突如として現れた美女に女神は激しく取り乱す、その様子を見て美女は呆れたように言う。


「何故って、貴女あれ程、派手に力を使っておいてバレないとでも思っていたの?」


「っ!!」


「まさか、本当にバレないと思っていたのね」


心底驚いたように驚愕の表情を浮かべる少女にさらに呆れたように呟く美女。


「ま、まさかそんな落とし穴があったとは…」


「はぁ、バカなことを言ってないで早く帰りますよ」


そう言う美女の言葉に少女の肩はピクリと震えた。


「い、嫌」


「ん?今なんて言いました」


「だから、その、嫌って…」


ブレない不動の美女の笑みに次第に声は小さくなり変わりに目尻に涙が溜まっていく。


「うん?」


「いや、その…はい」


妙な威圧を発しながらも崩れない美女の笑みに堪らず少女が折れた。


「いえいえ、解ってくれたのならいいのですよ。

例え面倒だからと職務を投げ出しこんな所に数ヶ月もの間閉じこもって、そのせいで私達がかなりの苦労をしただけですから」


「その、ご、ごめ、さい」


「なんて言いました?」


「だから!ごめんなさいって言ったんだよ!!」


と、少女は年相応に逆ギレをした。


そもそも、事の始まりは少女がめんどくさがって、つまりは働きたく無いと自らが作り出したこの空間に逃げ込んだ事が事の発端なのだ。


そして、美女はと言うと、少女が大声をあげた際に発生した渦状の魔力の動きにより転び、少女同様ワンピースの様な服を着ていた事が災いし、あられもない姿を披露していた。


「そもそもなんでワタシがあんなことしないとダメなんだよ、そうだよ、全てはあの髭もじゃジジイが悪いんだよ」


そんな美女を他所に1人ぶつぶつと呟く少女、その様子はまさに癇癪を起こした子供に相応しかった。


「痛タタタ、もういきなり大声出さないで下さい。

さてと、ここで何をしていたかは知りませんが仕事が溜まっていることですし、帰りますよ」


その言葉に苦虫を噛む様な表情を作りハッとなる、そして自信満々に言い放った。


「それ出来ない相談です。

何故ならワタシにはあの少年を見守る義務があるのですから!!」


「あの少年?

遂には働きたくないばかりに嘘までつくなんて」


「何を失敬な、ワタシはちゃんと神としての義務を果たしているんです」


「そんな嘘は調べればすぐにわかるんですからね」


諌める様に言う美女は少しの間目を閉じその美しい顔を驚愕に染める。


「まさかっ!あのぐうたらジル様が人間に加護を!!」


その様子に気を良くし、少女、女神ジルは思ったイケるっ、と。


「今失礼な事が聞こえた気がしたけど…その通り!!

あの少年にはこのワタシが加護を与えました、なのでワタシにはあの少年を見守る義務がある、よって戻る事は出来ない!!」


「まさか、本当に…

けどそれとこれとは話は別です、そもそも加護を与えた者を見守る義務などは存在しません」


その言葉で勝ち誇っていたジルの表情が崩れる。


「でも」


「でもじゃありません!」


「だって」


「だいたい幾多の神の中でも序列一桁(シングル)と言う貴方の立場を考えて下さい」


「……」


言い合いではかなわないと判断したジルは黙り込む。


「そろそろいい加減にしないと怒りますよ私、今回はお尻ぺんぺんじゃすみませんからね」


「ごめんなさい!ワタシが悪かったです。許して下さいお仕置きは嫌!!」


美女の言葉に顔を青くして首を振るジル、だんまり作戦を決めた彼女の覚悟はこうしてあっさりと砕かれたのだった。


その後のジルの必死の講義が功を成し、何とかお仕置きだけは回避し、こってりと叱られたジルは美女が開いた転移門を渋々潜る、その目尻には涙が浮かんでいた…


転移門を潜るジルを脇目に美女は思考していた。


(それにしてもあの少年は一体…)


美女はジルの配下の神だ、その関係は保護者と子どもの様になってはいるが一応は配下なのだ。


神の世界には序列が存在する、幾多もの神々が存在するが序列を持つのは上位五万の神のみ、つまりは序列を持つだけで高位の神なのだがジルはその中でもシングル、一桁を誇る神だ。


彼女もそんなジルの配下に相応しい3桁、トリプルの神だ、配下といってもそのイメージは軍隊の様な物で、人間で言うところの将軍の配下の指揮官といった感じだ。


そもそも神々も魔神や悪神と言った存在と戦っているのだから軍隊といっても間違いでは無いのだ。


本来、神の間に序列は存在しない、しかし敵と対峙する際統率がとれていた方が効率が遥かにいいそう言った理由から序列が出来たのだ。


そして序列持ちそれもシングルの神は通常誰かに加護を与えたりはしない、それを行うのは序列持ちでも高くて4桁、フォースの神までであり、それより高位の神が誰かに加護を与える事はよほどな事がない限りない。


それなのにシングルの神が誰かに加護を与える、これは神の世界で過去に例を見ない出来事だった。


(それもあの世界の子だなんて)


女神ジルが加護を与えた少年がいる世界は神の中では知らない者がいないほど有名な世界だ。


(おっ、あの子かなぁ、どれどれ)


トリプルと言う、神の中でも一握りの者しか辿り着けない存在である彼女にとって人間1人を見つけ出しそのステータスを覗く事は大して難しいことではない。


それはただの興味からだった、前代未聞のシングルの神が加護を与えた存在、それは一体どんな存在なのか?と言う、至って簡単な理由からだった。


その存在は異様な魔力を発していただが、ジル様が加護を与えた存在なのだがらと特に気に留めずにそのステータスを覗く、彼女にとってその程度は造作もない事だった。


「なっ!こ、これは」


そして驚愕に目が見開かれる。


「こんな事って…」


「あーもしかしてカナちゃんソータ君のステータスを見たね」


「ひゃぃ!?

ジ、ジル様!いきなり話しかけないで下さい」


いつのまにか美女、カナリースの後ろには転移門から顔を出すジルの姿があった。


「カナちゃん可愛い声出しちゃって」


さっき怒られた仕返しにか、からかうように言うジル、カナリースは頬を赤く染めて話を逸らす様に口早に言葉を紡ぐ。


「ジル様あの少年は一体…」


「彼はソータ君、面白いよねソータ君」


「面白いって、あの子はもう人間の域を超えていますよ!それこそ我々神に匹敵するくらいに」


「そうでしょ!流石にナンバーズには及ばないとしてもそこらの神になら勝てるかもしれないよね。

この様子ならソータ君はやっぱり神になっちゃうかもね」


「彼は本当に一体何者なのでしょうか…」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ハックシュ!」


「風邪ですかご主人様?」


「ソータ様が風邪なんて引くのですか?」


「言われてみればご主人様が風邪なんてあり得ないわね」


「…もういいよ」


なぜこの2人はこんなに失礼になってしまったんだろう?


一応2人とも俺の配下だよ、だよね?



高位の神に噂されているとは知らず、ソータ一行は三大国エラムセス王国の外壁にある門をその目に捉えていた。



「やっと着いたな」


そう言いながら串焼きを食う、この串焼きの肉に使われているのも勿論古竜の肉だ。


ミラ秘伝のタレを使い高温で焼き上げられたこの串焼きは、まさしくこれだけで一生食っていけるだけの財を生む力を持っている。


見える外壁は高くアストラル王国と比べても遜色ない存在感を誇っている、さらにその周囲には魔物の侵入を防ぐ結界が張られている。


「壮観ですねご主人様」


「私アレネメス以外の外壁を見るのは初めてです」


その光景にミラとリーナもはしゃぎ気味だ、何はともあれコレでようやく冒険者になると言う目的を果たせるわけだ。


旅の間には結局、吸血鬼の襲撃はなかったが、かといって気は抜けない。


ミラとリーナの2人はかなり強くなった、2人ががりとは言え古竜を討伐する程に、しかし爵位持ちの吸血鬼が来たらどうなるのかわからない。


俺もこの一ヶ月の間でかなり強くなった、それこそ全盛期をもう超えているはずだ、だが、それでもあの女神ジルには遠く及ばない。


そう考えると思わずため息が漏れそうになる。


「はぁ」


「浮かない顔ですねご主人様」


「まぁな、悩み事があるんだよ」


「ご主人様にも悩み事が?!」


「きっと何か不吉なことの前触れです」


「僕そろそろ怒っていいのかな?いいんだよね?」


そんな平和なやり取りをしながらエラムセス王国の外壁にたどり着くのだった。


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