25話 レベリングしました
「と言うわけで早速レベリングを開始したいと思います」
俺がそう言うとアホみたいな顔をしていたミラとリーナが、
「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい!」
「アビスって聞こえた気が…いえ気のせいよ気のせいのはずよ」
と、ミラが大声をあげてリーナがブツブツと何やら呟いている、それにしてもミラは兎も角リーナもとても10代前半の少女、幼女にはとても思えないほど早熟していると思う。
さすがは王族、異世界もなかなかに侮れないこれはレベリングを頑張る必要があるかもしれない。
「ご主人様、早速迷宮アビスって言いましたか?
いえ、聞き間違いですよね、いくらご主人様でもそれは流石に無いですよね?」
「そ、そうです聞き間違いです、そうに違いない筈です!」
いつになく真剣な表情で聞いてくるミラと、そのミラの言葉を聞いて騒ぐリーナ…
最近リーナのキャラが壊れて来た気がするのだが、まぁもともとああいう性格だったのだろう、その筈だ、きっとそうだ、そうであってほしいなぁ…
「残念ながら間違いでもなんでも迷宮アビスです」
「で、でもあれですよね。
あの帝国にある大迷宮じゃなくてもっと他のアビスですよね!」
「ミラちょっと落ち着こうか、この世界にアビスと言う名称のダンジョンは一つしかない」
「では、やはりここはあの迷宮アビスの真下にあるんですか?」
「そうだ」
リーナが復活した、ミラ?ミラなら呆けた顔でボケェ〜ってなってますが何か?
「この迷宮アビスは今はダンジョンとして使われているけど、本来はこの本拠地の防衛システムとして俺が作った場所だからな。
その下にホームがあるのは当然だしこの場に来ることができるのも当然だ」
「この迷宮ってソータ様が作ったんですか!?」
「そうだ、まぁ俺の全盛期の力を持ってすればこれくらいのことなら出来たからな、それに俺はソロプレイヤーだったからな、俺の留守を守るシステムが必要だった」
「世界創造の際、神が創ったと言われている迷宮アビスの誕生理由がそんな事なんて…」
フフフと静かに笑っているミラが何事か呟いているがそんなこと知ったことではない。
そもそもこの世界の奴らが勝手に神が創った迷宮だと騒いでいるだけでこの世界のダンジョンは殆どがプレイヤーが創ったものだ。
「ついでに言うとこの世界にあるダンジョンや、遺跡の約1割くらいは俺が創ったものだな。
まぁ今はそんな事どうでもいい、今回ここに来たのはレベリングをするためだからな、取り敢えず1階層目から行ってみようか取り敢えず俺はこの迷宮内の何処へでも転移できるから」
「ちょっと待って下さい、ご主人様さっきここは迷宮アビスの真下にあるって言いましたよね?
つまり此処は全100階層あるって言われてる最高難易度ダンジョンの下にあるって事ですよね?」
「まぁ本当は全200階層だが、その通りだ」
「えっ今サラッと凄いこと言いませんでした?」
「リーナちゃんこれがご主人様なのよ、もう慣れるしかないのよ」
唖然としているリーナを何故か憂うような目で慰めているミラ…俺何かしたのかな?
「でもご主人様此処が地下200階層より下ならどうやって一階層目まで行くんですか?
徒歩で行くとなると私確実に死ぬ自信があります」
「ん?そんなの徒歩でなんか行くわけないだろ、此処は俺が創ったダンジョンだ創作者がその中を自由に移動する手段を持たなわけがないだろ、本来なら一回行ったことがある場所かマーキングをつけた場所にしか転移できない転移魔法だが、この迷宮内に限り俺は好きな場所に転移できる」
「じゃあ1階層目に転移するって事ですね」
我が意を得たりとしたり顔で頷くミラとくリーナ。
「何で?嫌だよそんなめんどくさい事する訳ないじゃないですか」
「「えっ…」」
「だ、だってさっきご主人様1階層目から行こうって言いましたよね!」
「その通りだが1階層目にわざわざ行く事ないだろ、誰かに見られるかもしれないしな」
「じゃあどうやって…」
「リーナ、どうやっても何もこの迷宮を創った俺がその階層の魔物のレベルと同じレベルでこの階層に再現したらいいだけだろ」
「「…」」
「どうした二人とも変な顔して」
「いや、流石にご主人様だなぁと思いまして」
「慣れるしかない、慣れるしかない…」
「まぁ流石に魔物を作るのは難しいから転移させてレベリングするつもりだがな」
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あれから一ヶ月、明日にはやっとエラムセス王国王都に到着するところまで来ていた。
そんな俺たちが何をしているかと言うと俺のホームで3人和気藹々と夕食を食べているところだ。
前世、の二つの世界の記憶を持っているミラの作る料理の味はハッキリ言って凄まじい、アストラル王国の王城で出てきた食事より確実に美味い。
それだけでミラの料理の腕前が理解できるだろう、一国の王が食べる料理を作る料理人より遥か高みの位置にミラは到達しているのだから。
そして、そのミラの料理の腕ををさらに引き立たせるのはその食材と調味料だ。
この世界の料理は美味い事は美味いが、単調な味わいをしている、地球の料理のように、いくつもの調味料を掛け合わせ醸し出される複雑な味わいが無い。
しかし、ミラの料理にはそれがある、それはこの一ヶ月で研究に研究を重ね、塩、胡椒、マヨネーズ、ケチャップ、味噌、そして醤油などの調味料をこの世界の食材から再現し、その量産に成功した結果だ。
そんな数々の調味料を駆使して調理されたこの肉、ジューシーでありながらもしつこくなく、後味がさっぱりしている、口の中でスッと溶けて無くなるような柔らかさをしている。
この肉を食った事がある奴がこの世界に一体何人いるだろうか、例え貴族やそれこそ一国の王であっても口にした者はそうはいないだろう、まぁ魔王や一部の例外はあるだろうが。
「それにしてもこのお肉凄く美味しいです!
こんなお肉、王城にいた時も食べたことありませんでしたよ」
「まぁそうだろうな」
「そうでしょう、そうでしょう!
なんたって古竜のお肉をこの私が腕によりを掛けて料理したんだから!」
エプロンをつけて胸を張るミラが言うようにこの肉の正体は竜の中でも長き時を生き古竜とまで言われる上位個体の肉だ、その肉を食料として食べていると冒険者ギルドの職員が知ったら卒倒するだろう古竜の肉。
それもその筈なんと言っても古竜だ、その存在は天災と言われ、その力は並の龍を上回り、知能は生きてきた時間の分、人を凌駕する。
討伐するのにはSSクラス以上の冒険者が必須であり、魔王にですら一体で抵抗する事が可能なほどの脅威と言われている。
そんな、古竜の死体はまさに宝の山だ、硬い鱗に鋭い爪と牙、その骨や素材は魔力の伝導率が高く、その魔石が一つあれば数百年はもつ結界を張る媒体となる、そんな宝の山を食材として使っているのだからギルド職員が卒倒しても仕方がないと言える。
そしてこの肉はこの一ヶ月のレベリングの成果とも言える、やっとミラとリーナの二人でだが古竜を討伐できるまでになった、まぁ環境が環境なので約一ヶ月でここまで来れたのもわからなくはないが、普通では確実に不可能だっただろう。
的確なレベルの敵によって得られる経験値に俺の食物連鎖で的確なスキルを付与することによって何とかここまで漕ぎ着けた。
「まぁ、2人で古竜に勝てるまで強くなったんだからな、ギルド職員には頑張ってもらうしかないな」
「何の話をしているんですか?」
「リーナちゃんご主人様はこういう人なのよ」
「まぁそれもそうですね」
「…君達ちょっと失礼じゃないかな?」
そんなこんなで魔物を狩ってドラゴンの肉を食べる平和な日々を過ごし、遂に明日、目的地のエラムセス王国に到着する。
そんなエラムセス王国に思いを寄せつつミラの作った古竜料理に舌を打ち夜は更けていく。
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