15話 神素
皆さんお疲れ様です。
そしてお休みなさい!!
ギルドを後にした俺は取り敢えず宿を取る事にした、と言うのもギルドを出たらもう既に日が傾き始めていたからだ。
と、言うわけで千里眼を駆使しこの王都の中でも取り分け条件のいい宿を探し出す。
そして、この王都でも1、2を争う高級宿にたどり着いた…いや、これは最早ホテルと言ってしまっていいレベルだった。
しかし、地球のような高層建築ではなく2階建てで出来てはいるが、その分面積が広くなっている。
取り敢えず部屋を取りその部屋に入ると置かれているソファーにその身を預けた。
この身体になってからまだ1日も立っておらず、ゲームの頃だったなら疲労など感じることは無いのだが、残念ながら今は現実であり身体もデータではなく実体である。
ましてや転生してから時間が経っておらずまだこの身体に馴染んでいない時にあの女神に呼び出されると言うビッグイベントが発生。
これで疲れない方がおかしい、例え身体的に疲労が無くとも、精神的疲労は確実にあるだろう、それがどんなに図太い奴でもである。
「さて、リエル今後どうするべきだと思う?」
《候補に挙げ荒れるのは、冒険者ギルドの本部が置かれているメビウス帝国、
アストラル王国、メビウス帝国と並ぶ規模を誇るエラムセス王国、
のどちらかにするのが宜しいかと》
「メビウス帝国かエラムセス王国か、確か帝国には勇者一行が向かった筈だよな?」
《その通りです。
勇者一行はまずメビウス帝国の帝都に存在するメビウス魔法学院にてこの世界の事を一通り学ぶようです》
「と、なるとやっぱりエラムセス王国だな。
それと、あの件どうするべきだと思う?」
《やはり、女神ジルのような存在がこの世界にいることから、魔神などと敵対した場合に備えておくべきだと推測します》
「神素、か…
しかし、身体に影響が出る筈だが、まぁ少量づつ慣らしていけばどうになるか」
目を瞑り精神を集中されると周囲の魔素を感知するようにその感覚を徐々に薄く、広く、世界と一体になる様にこの世界に沈めていく。
《スキル:魔力操作、精神操作、魔素感知、魔素操作を獲得しました》
そして、不意に声が届いた、直接脳内に響いてくるその声はリエルの様にどこか無機質であり、機械じみたものだ。
そして、それは地球にて生活していた俺にとっては簡単に判断がつくものであった。
色々なネット小説などで御用達な、いわばこの声はこの世界のシステムなのだろう、ゲームなどで出るテロップとかど同様に、この世界に住む人々にスキルの獲得やレベルアップを知らせてくれていると、言うわけだ。
恐らくは一週間前、魔王と龍王の配下を殲滅した時にもレベルアップの声は届いていた筈だが、戦闘に集中していて気付かなかったと、言うことだろう。
「リエルさっきの声について解析してくれ」
《了解致しました。
…先程の声はこの世界の創造神が設定した救済処置の様なものです。
自体的に言えば、この世界で魔神もしくは魔王に対抗するために召喚された勇者や、異世界人の為の救済処置と、言えます》
「じゃあ、あれはこの世界の人全員が聞き取れるわけじゃないのか」
《それが一概にそうとは言えないのです。
この世界で生まれた人物でもある一定の条件をクリアする事により世界の声を聴くことが可能になります》
「ちなみにその条件は?」
《その情報にはロックがかかられており不明です》
「そうか、まぁ今気にしても仕方ない事だな」
さて、と呟くと再び意識を世界に被せる様に広げていく、新たにスキルを手に入れたからか、さっきよりも随分とスムーズに、楽に意識を浸透されることが出来た。
しかし、女神ジルならばともかく今の俺にはこの世界全体に意識を広げることなど到底不可能だ、今の俺の現状を言い例えるなら、大海原を絵の具で覆い尽くそうとしていようなものだ。
そして、世界は広く強大であり気を抜くと俺が世界に呑まれそうな感覚にとらわれる、その力は圧倒的に強くそのまま引きずりこまれる…
…普通のやつだったらな、俺には頼れる相棒リエルがいるのでそこら辺の制御はこの世界の一部とも言えるリエルに任せておけば問題ない。
(リエル今の俺が許容できるギリギリの範囲までの空間を掌握、固定してくれ)
《了解致しました》
そして極限までに広がった俺の意識領域に俺自身の魔力を流し干渉する事によって実態のない意識としてしか捉えることが出来ていなかった領域を実態として捉える。
あとは、その領域を解析し、含まれている魔素の割合を算出しその中から3:1で含まれる神素のみを抽出しその神素を展開している魔力で絡めたとり、あとは広げていた意識とともに魔力を再び己の中に集約させる。
すると何が起きるのか、そうこうする事により魔素の中から神素のみを抽出し体内に取り込む事が可能になる。
なぜこんな事をするかと言うと、簡潔に言えば一番簡単だからだ、まず女神ジルと言う圧倒的な強者がこの世界には存在する、そんな存在と闘っていくには強くなるしかないわけだが、一から鍛えていては途轍もなく時間がかかるし方法も明確ではない。
しかしだ、あの圧倒的な強さを誇る女神と同等の存在になったらどうなるのか?
あの女神は神の身体は神素で構築されていると言った、つまりは俺の身体も神素のみで満たせば必然的に女神と同等の位に立てるのではないだろうか?
ハッキリ言ってこの考え方は賭けでしかない、この推測が当たっているかもしれないし、ハズレているかも知れない、しかし例えハズレだとしてもやっておいて損はないだろう。
《ユニークスキル:魔素感知、魔素操作を獲得しました》
そして再び聴こえる世界の声。
今更だがふと気になったことがある、固有能力とユニークスキルって同じ意味じゃ…
《個体が使用できる能力を世界の基準で認められた物がスキルとなり、スキルの範囲では収まらないほど強力なもの希少なものはユニークスキルとなり、この世界のシステムで管理されています。
一方、固有能力とはその個体独自の能力のことであり、この世界のシステム外の能力に該当します》
と、言うわけらしいですよ。
しかし、神素を取り込んでみたはいいがハッキリ言って変化は無い。
身体の魔素を神素で満たすのにはまだ時間がかかりそうだが、それでも何も変化がないと言うことは残念ながらこれは失敗と考えていた方がいいかも知れないな。
「仕方ない、これから地道にレベルを上げていくとするか」
そうして軽くため息を吐く。
「しかし、出来る事は全てしておいた方がいいか、
リエル今回の神素吸収の行程を自動化したいが可能か?」
《お任せ下さい、この世界のシステムに干渉する為、少々お時間がかかりますがよろしいでしょうか?》
(ああ、構わないやってくれ)
《ッ!了解しました!!》
と何処と無く、と言うかとても嬉しそうな返事が帰ってきた。
リエルには疑似人格を付与した上で名前を与え独立させたが、もう完全に一人の人間の様になってきている。
しかし、ゲーム時代からの付き合いだったリエルがあそこまで喜びを露わにするとは…何故かとても嫌な予感がする、いや、これこそ気にしてもしょうがない。
そうして現実逃…意識を切り替えて最高級宿のベットに滑り込むとそのベット身を預ける。
なんだかんだ言って結構な事が色々とあったせいで精神的疲労が結構溜まっているのでそのまま眠りにつく事にする。
さて、取り敢えずダンジョンにでも行くかな
っと、そんな事を考えて眠りにつく。
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