12話 名前
最近疲れがたまってしんどいです…
今後もよろしくお願いします〜
風呂から上がった俺はリエルに頼んでおいた装備を身につけてこの前勇者一行と魔王・龍王のやり取りを覗いた王都の城壁から少し離れた丘の上に座標を設定し、転移魔法を使った。
一瞬の視界の消失とジェットコースターに乗った時のような浮遊感の後、広く開けた視界に入れ替わる。
そこは、360度周囲を草原に囲まれた丘の上で近くに人の気配は無く今の転移が人に見られる可能性はほぼ無いだろう。
(リエル現在使われている公共通貨は450年前の物と同じか?)
《はい、過去の物と変化はありません。
ただ現在流通している物は過去に流通していたのもより質が少し低下しております》
(そうか、まぁ多少の質の差なんか普通は分からないから問題ないな)
そうこうしていると徐々に王都の城壁が近づいてくる今回、龍王や魔王が襲来したことにより結果的に俺は死亡したことになっている…ハズだ。
その事によって勇者一行からは距離をとって自由に行動できるようになって動きの制限が無くなった、のにも関わらず、正体がバレる恐れがあるこの場所にやってきたのは、あの後の俺の扱いが気になったからで、まぁついでに今後の勇者達の動きを予測するためでもあった。
そして一つ目の目的はあっさりと判明した。
魔王・龍王襲来のその日の夜のうちに俺の死が大々的に国王から直々に発表されていた。
そう、されていた、だ…
勇者一行と魔王・龍王のやり取りを見届けた後から転生魔法の応用で新たな身体になったりと色々とあったが、俺の体感時間ではあれから半日も経っていないはずで、魔王達が来たのが朝方であり今は昼の4時といったところなハズだ。
(リエルこれは…まさか…)
《そのまさかです。
主様の使った転生魔法の影響で主様がお目覚めになるまでに約一週間の時間が経過しております》
(やはりか、なら俺の計算は間違っていたって事だな、俺の計算では30分程度で目がさめる予定だったからな…)
はぁ、っと俺は軽くため息を漏らす。
《情報の報告が遅れてしまい、申し訳ございません》
(いや、俺も聞かなかったからな仕方ないさ、それにしてもこれじゃあ此処に戻ってきた意味が無いな…)
《申し訳ありません、主様》
(別にいいよ、それよりも情報を整理してくれ)
《はい、現在は魔王・龍王襲来より一週間経過しており。
主様はお亡くなりになられた物とされております。
また、他の勇者達は主様の死により戦意を消失させ王城で保護されている者とレベル上げの為の旅に出た者の2グループに分かれ今から3日前にレベル上げ組は王都を出ております》
(旅に出る方はいいとして、残った奴らが問題だな。
この国は初めっから胡散臭かったからな。)
《しかし、残った転移者達の生活は保障されており、健康状態なども良好な状態であり今のところ問題はないかと思われます》
(そうか、まぁそれも他国によく見せる為の処置だろうな、しばらくは問題ないかもしれないが何かあったら一応報告してくれ)
《承知致しました》
(それにしてもわざわざ正体がバレる危険性を担いでまで来たってのに分かったのは俺の処遇だけか、全くの無駄足だったな)
《やはり主様はお優しい御方です》
(ん?何かあったかリエル?)
《いえ、それよりも主様、重大な問題が発生しております》
(重大な問題だと?)
《はい、主様は現在冒険者ギルドに向かっております、そしてそこで冒険者登録をなさる、で間違いありませんか?》
(そうだが、別に問題は無いだろう、今の俺の姿は前の時とは違うしな、それに俺の死は国王が直々に発表してるんだから俺の正体を見抜ける奴はいないだろ、まぁ灯台下暗しってやつだな)
《主様、もっと重大な問題があるではございませんか》
その声には軽い呆れと、そしてどこか懐かしさが合わさっており、彼が昔からどこか抜けていると言う証明になっていたのだ、本人がそれに気づくことはなかった。
《主様、冒険者登録をする場合、最低でも名前の提示は求められます》
そこまでし言われて翔太はハッとした表情になる。
《お気づきになられましたか?
そう、主様は現在、お名前を持っておられません》
(…そうだった)
そんな簡単な事になぜ今まで気づかなかったのかと、彼は肩を落とした。
彼は新たな身体に転生した時、名前を失っており現在名前がなかったのだ、そして周りから天才と言われ続けてきたのになぜそんな事に気付かなかったのかと、彼は今の落ち込んでいた。
《主様、どうなさいますか?》
(そうだな、リエルが俺に名前をつけるってのはどうだ?)
《私がですか?少々お待ち下さい。
……すみません主様、私はあくまでも主様の力の一部なのでその主たる主様にお名前をお付けすることは不可能のようです》
(そうか、これはまずい事になったな、死んだ事になった手前、前の名前を使うわけにもいかないからな、かと言って自分で自分の名前をつけって言うのもなぁ)
その時一瞬だけあり得ないほど膨大な魔力を感知するがその魔力を認識した時には今までいた街中とは別の空間にいた。
(ここは?)
そこは白い世界であり通常ではあり得ないほどの濃度の魔素が充満している。
(リエル、急速にこの場について解析を始めろ!)
《承知しました》
リエルの本来の無機質な声にも戸惑いや焦りが含まれている、それほど彼らにとってこれはあり得ない事であった。
約450年のゲーム時代この世界で圧倒的な強さであった彼らに、把握しきれないほど巨大な魔力に気づく暇さえなく違う場所に転移させられた事は未知の経験であり、彼らはこの状況に危機感を持っていた。
(いきなり呼び出してすまないね、司波 翔太君、それともワールド君かな?)
と、楽しそうな言葉が周囲に満ちる。
「誰だ!?
何処にいる、姿を表せ!」
「フフッ、そんなに怒らないでよ。
やあ、初めまして僕の名前はジル、君達が言うところの高次元存在、つまりは神様だよ」
そう言って唐突に姿を現したのは一人の少女であった。
腰のあたりまで伸びた蒼髪が現れた衝撃でふわっと持ち上がり幻想的な光景を醸し出していた。
白いワンピースの様な服を身につけおりその姿も相まって神々しさがそこにはあった。
見た目からは想像もできないほど強大な魔力を秘めているが、その無垢な笑顔は只々美しく可愛らしい。
(リエル、解析を最高出力で発動してくれ)
そして解析の結果が表示される
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姓名 :ジル
種族 :女神
性別 :女
レベル :???
年齢 :???
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そしてその情報量の少なさに驚かされる。
「ん?解析をかけたみたいだね、でも多分、名前と種族と性別くらいしかわからないんじゃ無いかな?」
その言葉に翔太は目を見開く。
「お前は、神と言ったがこの世界には神がいるのか?」
その言葉に彼女は少しムッとした表情になる。
「ダメだよ翔太君、僕の名前はジル、だよ」
「…そ、そうかジル、様?ここがどこか教えてくれるのか?」
そして自分の名前が呼ばれた事が嬉しかった様でニコッと満面の笑みを彼女は浮かべる。
「フフフ、そうだな此処は僕が作った異空間さ」
「その異空間に俺を連れてきた理由はなんだ?」
「そんなに睨まないでよ、ただ少ない情報で僕たち神の存在を予想した君にご褒美をあげようと思ってね
あっ、勘違いしないでよ君の元の世界と今の世界をゲームとして繋いでいたのは僕じゃ無いからね、むしろそいつは僕の敵さ」
「それで俺に何をくれるんだ?」
「そうだね、君は今、名前がなくて困っていたんだろ?
だから僕が君に名前を授けてあげるよ、どうかな?」
「名前だと?なぜその事を知っている?」
「僕は神様だからね、そのくらいの事は知っているよ」
そう言って彼女は再び微笑む。
「あとついでに今後、君の敵になり得る存在も教えてあげるあと僕のこともね」
「…仕方ないか、どうせここから自力では帰れそうにないしな、名前がなくて困っていたのは本当だし」
「物分りが良くて助かるよ、じゃあ君の名前はうぅ〜ん決めた!君の名前はソータだ!!」
あまり無い胸を張って彼女は元気にそう言い切った。
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