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105話 暗躍する者達

ネルヴィアが、ソータの私室を訪れた頃……


「く、クソっ!なんでこんな事に!!」


闇の膜が下された森の中を疾走する複数人のうち1人の男が叫び声をあげた。

既に男の仲間のうち半数近くが脱落していた。


「アッハッハ〜!そんなの決まってるじゃ無いか、天・罰だよ?」


男の悲痛な叫びとは裏腹に、少女のような愉しげな声が辺りに響く。




男は、ここら一帯では名のある盗賊だった。


昔は冒険者として名を馳せながら、その素行の悪さゆえに冒険者ギルドから追放されるが。

冒険者として培った経験と圧倒的な暴力でもって瞬く間に盗賊としての勢力を拡大させた。


同じようなはみ出し者達を従え、他の盗賊団を呑み込み。

今や、貴族との繋がりすら持つ大盗賊団へと至った。


今日も簡単な仕事だった。

夜に縄張りの森に足を踏み入れた馬鹿な獲物を狩るだけの、簡単な仕事のはずだったのだ。


「頭!」


真横を走っていた、副団長の声で我に戻り、前を見ると…


「た、助かった!森を抜けるぞ!!」


僅かに覗く、月の光。

月の光が一切入らない程、深い森の中。

男にとってその光は現状も伴って、地獄に挿した一筋の光に他ならない。


森の入り口に留めておいた、貴族から買った軍馬。

助かった、と意図せず緊張が緩む。


「急げっ!すぐに逃げるぞ!!」


森を抜け、すぐさま振り返り。

後ろを走ってきていた仲間に向けて指示を飛ばし……絶望が襲った。


「はい、お疲れ様〜!

あはっ!全然来てくれ無いから、つまみ食いしちゃった」


背後からの愉しげな声にも振り返えることすらなく、男はただ唖然と今自身が走ってきた森を見つめる。


「ちょっと、つまみ食いし過ぎちゃったけど……まぁ、どの道結果は同じだし、別にいっか!」


あまりの異常事態に、視野が狭まっていたのか。

さっきまでよく見えなかったはずな森の中が、男の目には何故かハッキリと見えた。


「あっ!生かして連れて来いって言われてたんだった!!

うぅ、怒られるかなぁ〜?」


1人は鳩尾を、1人は眉間を、1人は遊ぶように急所以外の全身を……

そして仲間、数十人全員が血を撒き散らし、垂れ流しながら何かで宙に吊られていた。


「でも、1人はちゃんと残したしね!

うん、やっぱりボクってえっら〜い!!」


目の前に吊るされた。

口を塞がれ、胴体と四肢、首が切り離され。

涙と血でぐちゃぐちゃになった苦悶の表情を浮かべた、副団長の凄惨な姿を見ながら男の意識は途絶えた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




メビウス帝国、帝都を見渡せる切り立った崖の上。

鬱憤とした深く、暗い森の中にポツンと開いた空間に漆黒のローブをまとった人物が佇み。

魔法の光に照らされた帝都を眺めていた。


距離的に帝都の喧騒も届かず。

魔物や野生動物の鳴き声ひとつしない静寂。


ドサッ


静寂の中、その音だけがよく響いた。


「戻りましたか、ティア」


「うん!今戻ったよー」


フードを被ったまま振り返ったその存在に、今まで狩を楽しんでいた少女は満面の笑みで答えた。


「はぁ、私にそのような口を利くのは貴女だけですよ。

それで…」


チラリと、少女…ティアが先ほど無造作に落とした物を一瞥し、フードから覗く赤い瞳でジロリと少女を見つめる。


「こ、これには訳が…そう!重大な訳があるのっ!!」


その視線に、ティアはビクッと身体を震わせ苦笑いを浮かべながら言い訳がましくそう言った。


「はぁ、まあ薄々こうなる気はしていましたし、1人いるだけでも良しとしましょう。

でも、ソレちゃんと生きてますよね?」


「勿論だよー!」


そういうや否や、何の躊躇もなく地面に倒れ伏したモノ。

先ほど絶望の表情を浮かべ、ティアの狩を楽しませた男の腹を蹴り飛ばした。


受け身を取ることもできずに、数メートル吹き飛び大きな木の幹に体を打ち付けた男は。

体から空気が一気に抜け、吐血しながらのたうちまわる。


「あはははっ!何アレ、面白〜い!!

ほらね、ちゃんと生きてるでしょ?」


「ええ、よくやってくれましたティア」


褒められて、喜ぶティアに優しく見つめ、再び帝都に視線を向けると。

一際強い風が吹き、フードが取れる。


「まだ時間はありますし。

最悪、生贄はあそこに沢山いますからね」


露わになった瞳と同じ色の髪を靡かせ、その男は口元に笑みを浮かべた。


少しでも『面白かった』『続きが気になる』と思ってくれましたら、


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これからもよろしくお願いします!!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「伝説の吸血鬼となった商人は怠惰スローライフをお望みです」


そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください!!


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