103話 ミラのお節介
その日の夜。
少し遅い夕食を食べ、ゆったりと風呂に浸かって今日の疲れをとり、自室のソファーに腰掛けていた。
結局あの後、「明日学園の後に伺う」と皇帝への言伝を頼み使者殿は帰っていった。
あの様子を見るに、どうやら、俺の威厳を見せつける事には成功したようで何よりだ。
ふっふっふ!明日、城に行った時にでも俺の有能な執事の事を自慢してやろう。
編入試験の時はいいようにやられたからな、この程度の意趣返しはさせて貰わなければ。
それに、何よりも……皇帝の悔しがるような顔が眼に浮かぶようだ!!
1人、ソファーでニヤニヤしていると不意に扉がノックされる。
どうやら使者殿にも言った、お客様のご到着のようだ。
「あれ、服なんか脱いでどうしたんですか?ご主人様」
「……どうして、お前がここに…ミラ」
ソファーの後ろからヒョイっと顔を出したのはミラだった。
てっきりネルヴィアがきたものだと思って、上着に手をかけた状態で固まった俺が再起動するのには数秒の時間を要した。
ん?ちょっと待てよ。
ミラもさっきのネルヴィアとのやりとりを知ってるわけだ。
となるとだ。
今の俺って、客観的に見れば部屋に女を呼びつけていきなり服を脱ぎ出した状況に移るんじゃ……
マズイっ!これは非常にマズイ状態だぞ!?
弁明しなければ、俺がネルヴィアを襲おうと今か今かと待ち構えていた変態になってしまう!!
「これはだなミラ、決して俺が邪な事を考えいたわけではなくてだな。ほらっ、だってネルヴィアに首から血を吸わせてやるわけだろ?だから邪魔になるであろう服を脱ごうと昔の経験からこう言った行動を選択したわけであって」
「いやいや、今更なに必死になってるんですか?
それに今ちょっと面白そうな……聞き捨てならない言葉があったんですけど。
昔の経験って、まさか……」
この対応は、俺の言わんとする事を理解してくれたのか。
それとも、俺が変態野郎って思ってるのか、イマイチは油断出来ないな。
だがまぁ、話が逸らせるのならそれでいい!
「ワールド時代にな。
アイツ毎晩、血を飲ませろって嬉々として俺の血を飲んでたからな」
しかも、なんの嫌がらせかアイツが血をねだるのは俺に対してだけ。
しかも、血を飲む瞬間を他の奴に見られたくないようで、その対応も面倒だった記憶がある。
「それって、首からって事ですよね?」
「ん?そうだけどそれがどうかしたのか?」
「あの、今更なんですけど。
ご主人様ってAWOにあった種族説明とか読んでますよね?」
種族説明、AWO内で使用することが出来た所謂図鑑のようなもので。
そこには各種族に対する弱点や、生態などがそれなりに細かく書かれていた。
「俺がそんな面倒なもん読むわけ無いだろ」
なにを当たり前のことを。
そもそもだ、そんなものを読んでしまったらゲームが面白くなくなる。
初見上等。
運悪く不利な属性の敵と接敵しても、所謂初見殺しの技を出されても。
技術・経験でもって対応し、勝利を収めてこその世界ランカーだ。
「はぁ、まぁ何となくそんな気はしてましたけど…」
見た目幼女なミラに、呆れたようなため息を疲れました。解せん。
「それで、ミラは結局なにしに来たの?」
要件があるなら早く済ませたい。
もし仮に、約束していたネルヴィアがこの場に来てしまったら……
嫉妬深いネルヴィアの事だ、必ずキレる。
それだけは何としても避けねばならない。
「あっ、そうだった。
これを持ってきたんでした」
そう言ってミラが差し出したのは…コップに入った黄緑色の謎の液体。
「えっと、何かなコレ?」
「何って、滋養強壮に効果を発揮する私オリジナルのドリンクですよ。
材料は…まぁ別にいいかな。
それよりも、コレを飲んでしっかりと元気をつけて頑張ってください。
あと、首から血を吸うことの意味をネルヴィア様に聞いた方がいいですよ!」
「えっ、あ、おい……」
恥ずかしそうにそれだけ言うと、早足で出て行ってしまった。
てか、滋養強壮って……まぁ、今から血を吸われるわけだし、増血剤みたいなものかな?
「まぁ、いいや。
それにしてもこの色…本当に飲めるんだろうな?」
しばらくの葛藤の後、意を決してコップを口に運んだ。
……不味くはないが、美味くもない、微妙な味だったとだけ明言しよう。
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「伝説の吸血鬼となった商人は怠惰スローライフをお望みです」
そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください!!