100話 最終手段…
学園長の、おーって言う可愛らしい声にクラスメイトが楽しそうに声を上げる。
まぁ、学園長が生徒と一緒におーっとか言っちゃってる事はひとまず置いておくとして、だ。
演劇?
ナ・二・ソ・レ…いやいやいや、何にも聞いてないんですが!?
百歩譲って、俺とアホな古竜との1幕を暗黙にするのは別に構わない。
けど、自然な流れで俺が主演を演じることになっている事に対して異議を申し立てたい!
けど、まずそれよりも、何よりも!
「俺って《古竜を打ち倒し新星》なんて恥ずかしい呼ばれ方してたんだー。
知らなかったなぁー、あははは…」
乾いた笑みしか出てこないとはまさにこの事だ。
はっきり言ってやめてほしいです、はい。
確かに、ファンタジーな事とか厨二チックな事は大好きだが……
それは自己完結した世界であって、誰かにそんなあだ名で呼ばれたい訳ではない。
断じてない!!
「くっくっく…なんだソータよ。
主はそのような名で呼ばれておるのか?」
「あーあ、ネルちゃん遂に言っちゃったよ…」
ヴァイスロギアの言う通りだ。
いつもなら、すぐさまにでもからかってくる、ヴァイスロギアでさえも空気を読んで謹んでいたのに。
「せっかく僕が笑わないように頑張っていたのに!」
「……俺の感心を返してほしい」
ほんと、一瞬でもヴァイスロギアの事を配慮のある奴なんて思った俺がバカだったよ。
こんなこと言いながらドヤ顔してるアホだ、こいつはやっぱりただのアホだな。
「古竜を、古竜を打ち倒し新星などと……貴様は何処ぞの物語の主人公か何かか?」
「ほんとほんと、ソータ君が古竜を打ち倒し新星なんて似合わないよねー。
そんな英雄っぽくないって言うか。
もっと禍々しい何か方が似合うと思うんだけどなぁ」
「主もそう思うか?
実は妾も同じ事を考えていたところだ」
「うーん、もっと禍々しくて恥ずかしいのだから……漆黒の王なんてどうかな?」
ヴァイスロギアのそんな案を聞いてネルヴィアも気に入ったのか。
おぉーと感心した様子で2人して俺に視線を向けてくる。
「いや、そんな見れてます知らないからっ!
てか、お前らだってそれなりに恥ずかしい2つ名で呼ばれてるくせに、俺の事笑えないからな!?」
何せ2人とも数百、下手したら数千なんて年齢で吸血姫と妖精王なんて呼ばれてるんだし。
そう考えると俺なんかより数段恥ずかしいな!!
「なんじゃ、妾と此奴の2つ名だと?
ふむふむ、そんなものがあるのならば聞いてみたいものだ」
「ほんと是非とも聞いてみたいなぁ!
早く聞かせてよ、ここで、ね」
くっ、コイツら…周りにクラスメイトたちがいる事をいいこ事に。
くっそぉー、コイツらのニヤケ顔が、限りなくイラつく!!
「……くっくっく、くはっはっは!!
お前たちがそうくるのなら仕方がない、最終手段を使わせてもらうとしよう。
俺としても、こんな非情な手は使いたくなかった……だが!」
「ふーん、どんな手段なのか楽しみだなぁ!」
「最終手段じゃと…ま、まさか」
ヴァイスロギアは余裕があるご様子。
でも、お仕置きの回数が多いネルヴィアは感づいたようだ。
まぁ、今更気づいても遅いんだけど…
「これから暫くは、お前らゲームとお菓子禁止な」
ニヤニヤと余裕の表情を浮かべていたヴァイスロギアが物の見事に固まった。
ネルヴィアなんて、軽く絶望したような表現で俯いてるし。
「あっ、あとデザートもお前らだけなしだ」
俺の無情な宣告によって、遂にネルヴィアが崩れ落ちた。
「外見だけ見れば、ご主人様が幼い少女を四つん這いにさせてる鬼畜にしか見えない」
「かなりの事案じゃな、これは」
「キミ達にも適応されたいのかな?」
「「大変申し訳ございませんでした!」」
うん、ミラは相変わらずだけど。
最近ヘルがちゃんとした敬語を使って謝罪が出来るようになったのは大きな成長だと思う。
それだけでも、ヘルをこの学園に入れてよかったといえる。
「ちょ、ちょっと待ってよソータ君!
いきなりそんなの横暴なんじゃないかな!?」
「そんな事ないと思うけど。
なぁ、ミラもそう思うだろ?」
わかってるよな?と視線で念じれば、苦笑いを浮かべながらもコクコクと頷くミラ。
「くっ、そ、そうだ!
キミにそんな事を勝手に決める権利なんて無いよね!」
残念だが、その理屈は以前にも誰かに聞いた。
アレは誰だったかな?ミラかヘルか、それともネルヴィアか?
「残念ながら、その権利があるんだよ俺には。
なんと言っても、あの場所は俺の家だし、食材を買っているのも俺の金。
つまり!俺に養われている居候のお前に口答えする権利こそないのだよ!!」
俺の完璧な理論に論破されたヴァイスロギアがネルヴィアと同じようなかっこで崩れ落ちた。
「ふふふ、皆さま仲がよろしいのですね?」
「「「よくないっ!!」」」
アリス王女の楽しそうな声に俺たち3人の声が重なった。
そして、それが……いやそれ以前に、こんなに騒いでしまったのが悪かった。
「そこっ!うるさいですよ!!」
その後、俺たちが学園長に呼び出されたのは言うまでもない。
いくら魔王や俺でも、学園で学園のトップたる学園長に刃向えるはずもなかった……
少しでも『面白かった』『続きが気になる』と思ってくれましたら、
ブックマーク登録及び、下記の評価ボタンを押して頂けますと嬉しいです。
これからもよろしくお願いします!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「伝説の吸血鬼となった商人は怠惰スローライフをお望みです」
そこそこ読める作品だと思うので是非読んでみてください!!