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僕の知ってるハーレムはこんなんじゃない。  作者: 途虎
第1章 僕の知ってる部活はこんなんじゃない
4/19

第4話「入部」

「これは、一体どういうことですか?沢良木君」

 職員室の隣にある生徒指導室に夜来先生の声が響き渡る。生徒指導室に入学式の次の日に入るとは思っていなかった。その生徒指導室には、机が一つだけある。そこに夜来先生は座っている。昨日書いたアンケート用紙を僕に見せつけ机に叩きつける。そして、トントンと指で机を叩く音がやけに響く。先生は僕を睨んでいる。この目は猛獣が獲物を狩る前の目と同じだ。怖いよ、先生。

「……え……なんの話ですか?」

 僕は知らないふりをして、目を背ける。

「君もわかっていますよね? このアンケートのことですよ」

「アンケートに不備でもありましたか?」

「じゃ、一つ目の質問はなんでしたっけ?」

「一つ目は友達は好きですかという質問でした」

 僕は何も迷うことなく質問の答えを述べた。先生は少し機嫌が悪そうに見える。もしかし、僕のせい? 完全に僕のせいだよね。

「沢良木君の答えは、友達とは悪魔である。友達なんて僕にはいないし、必要ない。友達ができるくらいなら僕は孤独死を選ぶだったよね」

「…はい」

 額に冷や汗が垂れる。先生は大きくため息をして、もう一度僕を睨んだ。

「沢良木君? 先生怒っちゃうよ?」

 笑顔でそう言われたら怖いのか優しいのか全然わからない。先生はやれやれと言いながら髪をかきあげた。先生はゆっくりと眼鏡を外し、下を向く。なんだろう。何か起こるのかな? いや、先生怒るのかな?

「ふざけてんじゃねーぞ! このクソガキが!!」

「!?」

 え? 僕の聞き間違えじゃないよね?

「おい、沢良木。何か言うとペラペラ言い訳しやがって!」

いやいや、言い訳まだしてないよ? 怖い目つきで睨まれる。怖い。殺される。

「……すいません」

 とりあえず、謝ればいいだろう。中学三年の頃、先生に体育の授業をさぼった時に、とりあえずすいませんと謝っとけばいつかは許してくれる。てか、飽きられる。なぜ体育をさぼったかって? さぁー? なぜでしょう。いやいや、別に、二人ペアを組む時、毎回僕ひとりだけ余るのが嫌だからじゃないよ?

「沢良木、お前の目は死んでるぞ」

「ってか、先生キャラかわりすぎじゃないですか?」

「これがふつうなんだよ。むしろ、眼鏡かけてる時が偽物っていうわけだ」

 僕が知ってる紳士の清楚系の先生は偽物だったのか!?

 ク◯ヨンし◯ちゃんの上◯ますみ先生かよ。眼鏡とったら性格が豹変し、思ってることが全て口に出てしまう悲しいキャラ。というかそんな人本当に存在したのか……

「先生……もしかして、元ヤンキーだったり……しますか?」

 聞いていいか迷ったけど、実際、僕が気になってしまった。小さめな声で聞いてみたけど、聞こえてるに違いな。

「元ヤンではない。そこらへんのチンピラは殴り殺してやったがな!あはははは」

 いやいや! それ、完全なるヤンキーじゃん。殴り殺しちゃだめでしょー!?

「本題に戻るぞ。君はこれを真面目に書いたつもりかね」

 そう言いながら、夜来先生は机に置いてあるアンケートを指をさす。少し、清楚系に戻った気がする。

 むしろ、最初が怖すぎた。

「もちろんです。僕に友達なんていりませんし、作ろうとも思っていません。」

 ドヤ顔で言ってみた。なにも言い訳もせずに本当のこと言った。言い訳するのが面倒だったから。

「はぁ。」

 先生は頭に手をあて、大きくため息をした。そして、続けて話し出す。

「君はこれで社会に出れると思うのか? 人間誰だってな人との関わりが必要不可欠なんだぞ。それをわかっているのか」

「まぁ、わかっていますけど、だから。僕は専業主夫を目指します」

「なんだとぉ!」

 怒り狂ったのか先生は机を叩いた。その音は僕の声をかき消してしまうほどに余韻を残しつつどんどんどんどんとだんだん小さくなっていく。

「すいません」

 もう泣きそう。

「はぁ、君には呆れたよ。でも、君のその腐った根性は叩き直さないといけない」

「先生、暴力だけ勘弁してください」

「そんなの当たり前だ。とりあえずここに行きたまえ。私も後でいく。」

「はぃ……」

 夜来先生はアンケート用紙の裏に校内の地図を書き出した。先生が書いた地図には特別棟の大きな丸がしてある。多分、そこに行けっていうことなんだろう。

 


 佐世保西高校は空から見ると口の形をしている。職員室がある東棟とその反対側には僕らの教室がある西棟がある。その二つの棟の端っこの南側には特別棟がある。特別棟は音楽室やら社会科室やらがある。

 特別棟の反対側には学食がある。口の形をした、校舎の真ん中は中庭がある。昼休みリア充どもが「はい、あーん」とかいいながらイチャイチャしている。それを僕は殺意の目でいつも眺めている。

 中庭なんて潰れてしまえ。

 ってか特別棟で何をするのだろう。

 嫌な予感しない。反省文でも書かせられるのだろうか。それよりも酷いことさせられるのだろうか。

 冷や汗が止まらない。

 特別棟の三階の一番東側の教室の廊下につく。地図の印と同じ場所だ。確かに、入学してそこまで時間は経っていないけど、こんなところにあったんだ。

 ここの教室に入ればいいのだろうか。どんな苦難が待ってるのだろう。

 ガラガラと音をたてながら僕はドアを開けた。

 そこは教室というより、荷物置き場っぽい感じの部屋だ。長机が口の形においてあり、机一つに対して椅子が三つずつ置いてある。そして、僕の目の前にはダンボール箱を持った一人の女性が立っていた。

 僕はこの女を知っている。風の噂で聞いた。というよりか話をしているのを盗み聞きした。

 彼女の名はかんなぎはな。彼女をなんで、友達のいない僕でも知っているのかというと、彼女の成績は学年で一位だから。入学の入試の結果の上位十位以内の名前が職員室の前に貼られる。トップに君臨したのが巫花というわけだ。それに、入学式で挨拶もしていた。そして、美人。入学早々、「入学生代表の人可愛くね!?」とか男子が言っているの耳にした。僕がどんな努力をしたって敵わない。

「誰ですか」

 彼女が僕を睨んだ瞬間、何も前触れもなく——窓が開いたところから風が吹いた

「あ」

 と。

 僕は思わず、声を漏らしてしまった。

 巫花のスカートが思い切り、めくれあがってしまったのだ。

 普通ならば、反射神経で押さえ込んだはずだろう。しかしタイミングの悪いことに彼女はダンボールを両手で持っている最中である。彼女は抑え込む暇もなくめくれあがってしまった。

 中身は丸見えとなった。

 決して派手ではない——しかし、惹きつけられた眼はそこを決して逸らさないことを禁じるような下着だった。

 清楚な純白色である。

 真ん中の部分には、複雑な模様の刺繍がほどこされていた。おそらく花柄であろう。

 その模様がかなりセンスがいい。

 さらにその花柄の刺繍のすぐ上には、彼女の下腹がチラリと顔を覗かせている。おへそまでも見えるじゃないか。そんな部位まであられもなくあらわになるほどに、スカートが大胆にめくれあがってしまっていた。

 ——それに、僕にとってスカートの裏地を見るのが新鮮であった。日頃、あまり見えない場所が見えているというのは快感でもあり、少しドキッとする。スカートで、日頃見えない女子の太ももも新鮮である。

 彼女も見せたくて見せているわけじゃない——ただ間が悪かった。

 彼女。

 巫花は、結局、隠す動作をしなかった。できなかった。

 あっけにとられてしまったのだろう。表情も固まったままである。

 実際は一秒も満たないであろう。しかし、僕にとっては一分、いや、一時間に匹敵する。このまま僕は死んでしまうんじゃないかと錯覚するぐらいに素敵な時間。一瞬で一生の経験をした気がする。

 僕は我に返った。だが、その時にはもうスカートは元の位置へと戻っていた。

 そして、巫は。

 あっけにとられた表情で僕の方を見ていた。

「……その」

 うわぁ。どうすればいいんだろう。

 彼女はダンボールを床に落とし、僕の方へと近づきつつポケットから何かをとりだす。そして、スカートがめくれあがると同じぐらい一瞬で僕の喉にポケットから取り出したカッターナイフを近づける。

「……っ!」

「動かないであなた死ぬわよ」

 僕の喉にピタリと触れる。

 カーターナイフの刃が。

「いや、違ったわ。あなたを殺すわよ」

 加減してるわけでもなく、かといって乱暴しているわけでもない。そんなギリギリの強さで——僕の喉の皮膚は少し切れる。

僕としては冷や汗が止まらない。巫が言う通り、僕は動かないほかなかった。もし、動いたら何をされるかわからない。

 怖い。

 ただそれだけだった。

 カッターナイフの刃が強かっただけではない。

 彼女の。

 視線が強かった。

 ぞっとするくらい冷たい目線で僕を見つめる巫花が強かった。

「不可抗力とはいえ見たのだから仕方がないでしょ?」

「……何も見ていないよ」

 明らかな嘘だ。だが、明らかな嘘に巫は反応せずじっと俺を見る。

「嘘はつかなくていいわ。あの状況で見ていないという方が無理があるわよ。私も油断していたわ。こんな物置みたいな教室に誰かがやってくとは。それに、突風が吹きつけるなんて」

「…………」

 まぁ、確かに物置じゃないか!? って不思議に思うぐらい埃が舞っていて、ダンボールが数十個ぐらい置いてあるこの教室に誰も近寄ろうとはしないだろう。むしろ、近寄る方が変だ。

 ならなぜ、巫はこの教室にいたのだろう。

 謎のまま。

「今、あなたが何を考えているかわかるわよ」

「………………」

「胸ばかりみて、いやらしい」

「………………っ!」

 断じて考えいていない。

 さっき見た巫を下着想像しながらブラジャーも白色なんだろうかとか考えていない。考えているわけがない。巫はかなりの自意識の高い女子高校生のようだ。でも、これだけ綺麗な体に綺麗な顔立ちをしていると無理もないのかもしれない。僕にはわからないけど。

「まぁ、いいわ。もうここで殺すのだから。あなたが私の下着見たことは他の誰にも伝わらないわ。だって伝えようにもあと3分以内にあなたは死ぬのだから」

「待て待て!交換条件だ!」

 見たくて見たわけではないのに我々男子が一方的に悪いなんて不公平だ! アンフェアだ!

「交換条件? そんなのもう成立しているわ。あなたは私の下着姿を見た。その代わりにあなたは死ぬ」

「確かに見た。だが、見たくて見たわけじゃない。それに僕はそこまで得はしていない」

「得はしていない? 私の体を見たのに?」

「あぁ、そうだ」

 いや、得はしている。むしろ大きい得をしている。だが、ここは巫に興味がないことを伝えなければ、僕は死ぬ。死ぬよりつらいかも。

「はぁ、もういいわ。私も疲れた」

 巫は僕の喉にあったカッターナイフをゆっくりと慎重に退かす。

 抜いたカッターナイフの刃を仕舞う。

 きちきちきち、と。

 そして、ポケットに直した。

 僕は胸をそっと撫で降ろす。安心した。

 その瞬間。

 一瞬のうちに。

 僕の腹部に痛みが走った。

 彼女の拳が僕の腹部を攻撃している。僕は、その場に崩れるように、うずくまった。

 お腹を服の上から押さえながら。

「ぐ……い、いい」

「あら、悲鳴ぐらいをあげるかと思った」

 そ知らぬ顔で——

 巫が、上から見下ろすように言った。

「これで解決ね。私も気が済んだわ」

「お、お前……」

 悪魔を通り越してもう死神みたいなやつだ。

 僕の後ろからドアを開ける音がする。

「あら、沢良木君こんなところで蹲ってどうしたの」

 眼鏡をかけた夜来先生だった。

 さっきまでのように痛みを和らげるためではなく、お腹の状態を確かめる為に、そっと、撫でる。

「……いいえ。別に大したことではないですよ」

 よし、大丈夫。そこまで大したことはない。腹部を殴られただけ。

 所詮女子である。

 どっかのチンピラに殴られよりか痛くない。

 イテテと言いつつ立ち上がる。

「夜来先生、その変態はだれなんですか」

「あら、変態? 死んだ魚ような目はしてるのにやっぱり男子ね」

 変態じゃねーし。先生こそ変態じゃなけど、変化へんげするだろ。ヤンキーに。

「変態じゃないです。不可抗力ですよ」

「君らしいですね。この子は私の担任の沢良木風屋君」

 よっと言いながら手を顔ぐらいまで挙げる。

「はぁ、その人が私になんのようなんですか」

「入部希望者だよ」

「入部? ちょっと待って待って! 希望なんてしてないし、部室なのここ?」

「ぁ、間違えた。強制入部だよ」

 ぇ。僕の意見はどうでもいいのかよ。入部なんてしないよ。したくないよ。

 中学時代同様に高校も、帰宅部を貫こうと決めていたのに。

「僕は部活なんて入る気ないんですけど……」

「知らないの?」

 巫が言う。

「ここの学校は一年次だけは強制的にどこかの部活に入部したいといけないのよ。そんなことも知らないなんて、あなたもしかしてバカなの?」

「初めて会った人にバカって言われた!?」

「というわけで、彼は見ればわかると思うけど、根性どころか中身も性格も全て腐っている。そのせいでいつも孤独なわけです」

 見ればわかるって確かにわかるけど、そこまで言わなくていいんじゃないの? 先生。

「人との付き合い方というものを学ばせてあげれば少しはまともになると思います。沢良木君をここにおいてくれる? それが私の依頼です」

 先生は巫に向かっていうと、巫は面倒くさそうに口を開いた。

「それなら先生が殴るなり、蹴るなりして躾ければいいと思いますが」

 ……怖い女だ。

 先生は眼鏡を外した。

「確かにそうしたい。だがな、こいつはそんなことをしても根性は腐ったままなんだよ」

 いやいや、したらダメでしょ? 暴力だよ?

「お断りします。そこの男の下心むき出しの目を見ていたら吐き気がします」

 巫はスカートをぎゅっと握りしめ、こっちを睨みつける。

「大丈夫だ。こいつは変態でも法律を犯すようなことはしない。それにしたら私が息の根を止めるから」

「僕が法律を犯す前にあなたが犯しそうなんですけど……」

「まぁ、先生からの依頼なら仕方ありませんね。了解しました」

「そうか、それなら後のことはよろしく」

 とだけ言うと、先生はそのままさっさと帰ってまう。

 取り残された僕。

 正直一人だけならまだしも、巫と二人っきりの方が気まずい。一人の方がいい——なにも考えなくていいから。

 巫は平然と椅子に腰をかける。

 カチカチと時計の音がやけにゆっくりと大きく聞こえる。

「そんな所で立ってないで座ったら、殺すわよ」

「え、あ、はい。ごめんなさい」

 ……なに今の。殺害予告?

 連続殺人犯だろ。思わず無意識に謝ちゃったよ。

 わざわざ僕が威嚇するまでもなく巫は、こちらを睨んでいた。

 ビビりながら、僕は椅子に腰をかける。

「何か?」

「いや、部活って一体なんの部活なんだろうっと思って……」

「なにが言いたいの?」

「わけもわからずここに来て、説明もなしに部活だとか言われたから」

 僕がそう言うと、巫は大きくため息をして言葉を発した。

「そうね。ここは心壁部しんへきぶよ」

「心…壁部?」

「そう、心の壁って書いて心壁。夜来先生曰く、憐れな人間を救う手伝いをする部活よ」

 なんだよ、それ。あの先生もあの先生だが、お前もお前だ。もう少しオブラートに包めよ。

 だから、人間傷つくんだよ。

 ふと蘇る——あの時を。

『沢良木君ってなんかきもいよね』

 あー、いやー本人は軽く言ったつもりだったんだろうけど、実際僕はものすごく傷つくんだよ?

 まぁ、要するにもう少しふんわりと優しく言って欲しかったんだ。

「要するに、奉仕部的な感じか?」

「まぁ、そんな感じかしら。助けるのでは手助けするだけよ。無能なものに餌を上げ続けては意味がないの。自立させないと無能のままだわ」

「確かにそうだが……お前だったら殺しそうだな」

 最後はかなり小さめに言った。聞こえてたら殺されると思うから。

 歓迎されているかはわからないけど、巫は言う。

「ようこそ、心壁部へ」

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