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僕の知ってるハーレムはこんなんじゃない。  作者: 途虎
第2章 僕の知ってる友達とはこんなんである。
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第14話「反省」

 部室から春と山梨の声が聞こえてくる。巫と僕は部室前の廊下で話を立ち聞きしている。普通ならば、してはいけないところだが、もしも喧嘩になろうとするならばそれを止めるものがいないといけない。その役目が僕らというわけだ。でも、喧嘩なんてしないだろう。僕はそう思う。

「南ちゃんどうしてここに……」

 それは僕らに依頼をしてきたからである。

 ——仲直り。

 がしたいと山梨は心壁部に相談にきた。その依頼を僕らが解決するというのが部活であり、任務である。ならば、どんな手段を使ってでも最善の解決方法を見つけ出さなければならない。

「その……春に…………」

 言いずらい感じが伝わって来る。だが、言わなければ何も始まらないし、終わらない。

「南ちゃん? 私ね、昔から友達といるのが楽しいの。友達が友達だと思ってなくても私は友達だと思う。それに、別に大したことじゃないから、気にする必要はないよ……」

「でも……私は! ……私は春を…………友達だと思ってるよ。やりすぎたと思ってる。反省してる。だから、その…………」

 反省してる。と山梨は春に言った。

 人は何を願い、何を求め、何を知るのだろうか。山梨が思ってるのことはそんなことではないはずだ。ただ、謝りたかったのなら謝れたはずだ。普通に、あの時はごめんと真剣に相手に向けて言えたはずだ。謝りたいと依頼を僕は違う観点から捉えなければならない。

 謝りたいのでなく。

 仲良くしたいのだ。

 ——最初から。ゼロから。やり直したいのだ。

 それならば、山梨の言葉違うはず。反省はしている。それは見ればわかる。それならば、誰かが助けてなければ——手助けしなければならない。

 不意にドアを開けた。それと同時に巫は驚いていたが、そんなこと気にしないかのように僕は山梨と春に言葉を投げた。

「壊れたならもう一度直せばいい。走れないなら歩けばいい。見えないなら聞けばいい。人は誰だってどうにかこうにか生きてきてるんだ。今回もどうにかなる」

 また確実性のことを信じてしまった。でも、後悔はしていない。

「風ちゃん何、言ってるの」

 くすくすと笑う春は嬉しそうだった。

 それにつられて山梨も笑っている。

 後ろを見ると巫は笑って……いない。けど、笑顔ではある。

 僕もこの流れにつられ、ニヤリと笑った。ぎこちなさが出ている。

「南ちゃん、仲良くしようね」

 そう、春はいう。笑いながら。

 今までの固いを空気が一気に柔らかい空気へと一変する。

 こんなことで解決するとは思っていないけれど、どうにかなると言う言葉はあながち嘘ではない。きっかけがなければならないと、そう考えただけだ。だが、ことは簡単に終わる。

 巫は苛めというが、僕は違うと思う。まだ、嫌がらせの範囲内だと思う。

 笑いの空気が部室中に広がる。笑っているの場合ではないのに。

 そして、山梨は春を見て、笑顔で言うのだった。

「うん!」

 と。



 朝、携帯の音が僕の部屋中に鳴り響き、右手で音を止める。カーテンの隙間から朝日が入り込み、眩しい。明るい朝。眩しい光。ゆっくりと目を開けると、昨日よりなぜか天井が近くに感じた。別に本当に近くなったわけではないけれど、多分感覚的に近く見える。頭をかきながら、起き上がり、二階から一階へと降りる。そこには、卵焼きに食パンにご飯、味噌汁が置いてある。そして、お兄ちゃんおはようという僕の妹がいた。

 母親は僕が小さい時に家を出て行った。父親は外国で働いている。

 そもそも僕は三人兄弟の長男である。妹が二人いて、一番下の妹はまだ幼いからということで父についていくことになった。だから、家には妹と僕としかいない。朝ごはんを食べて支度をした後、学校へと向かう。

 教室に入るとそこには、いつもの僕の苦手なグループ——桃瀬春、山梨南、森竜司もりりゅうじ田崎絢斗たさきけんと、 相川裕太あいかわゆうたの五人で形成されているグループ。今日も仲良く、教室の端で楽しそうに話している。依頼は一様解決した。だが、これから過ごす彼女らの行動次第で崩壊する。または、形成される。

 だが、僕は、少し思ってしまった。少し思い出してしまった。

 友達がいた。

 あの頃を。

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