六法全書で魔物って倒せんの?
はじめまして。日本語の難しさを痛感してます。それはさておき今ちょっとごま豆腐食べたい
「田中」
「高橋」
担任教師が教壇の前に立ち、生徒の名前を読み上げる。はい、はぁい、返事は各々。だがその声には失望と嫌気がはっきりと滲む。
そんな中俺は1人、わくわくしていた。
「模試の成績どうだった?」
「ダメだった…。」
「もう卒業後のこと考えなきゃいけないのかなぁ」
早々に返却された生徒たちは口々に溢す。
「放課後、三者面談あるじゃん?」
「模試の成績のこと言われちゃうかなあ…」
俺の名前が呼ばれ、俺は立ち上がる。
結果は上々。三者面談?かかって来いよ!!!
模試の結果を握りしめて笑う俺の姿は、同級生の目からどう映っていたんだろう。
俺の実家は雪国新潟県。の横に浮かぶ島。
島国ニッポンの更にまた島国。
場所が分からない奴は地図帳を見てくれ。
佐渡島が俺の故郷。
金山と豊かすぎる日本海の景色の他はなんにもない島だが、そのお陰で助かっていることもある。
それは、魔王と魔王直属の魔物の手が届かない事だ。
なんの話をしているかって?
魔王だよ魔王。17年前に空から降ってきたあいつ。
都庁の真上に降ってきて東京は大混乱だった(らしい)
そして疎開する民衆が続出した(らしい)。
魔王と魔王の側近が都内に魔王城を建造し、そこからどんどん魔物が現れて、いまや本州は魔物まみれ。技術も後退して、ニッポンはすっかり暮らしにくい環境になってしまっている。
父さんが言うには、魔王が現れるまで世の中にはラジオやテレビやケータイとかいう便利なものがたくさんあった(らしい)けど、いまやそんなの影も形もない。
電波を妨害する魔物がいるとかなんとか。
魔王降臨後に生まれた俺としてはこれがデフォルトだからそんなに苦痛でもないんだけど、親世代には結構堪えるらしい。そんなに必要なものなのかね。
「勉強が趣味のお前には分からないんだろうなあ」
え、俺いま声に出てた?
「顔に出るんだよ、お前は」
表情だけで読み取れる内容じゃなかったよな!?
「三者面談の時間、そろそろだよな?」
「うん。来てくれてありがとう」
俺の実家は酒屋を経営している。父は俺に継がせたくて必死だけど、俺には夢がある。
いつか弁護士になって、困っている人を助けたい。
そのためにずっと勉強してきた。法学部のある大学に進学すること。それが俺の当面の目標だ。
父さんの苦労は知っている。そしてその優しさも。
昨日まで「三者面談には絶対行かねえ!」「お前は酒屋になるんだ!!」と繰り返しリプレイするRPGの村人Aみたいなことになってたけど、
今朝になったら「行くよ。三者面談。…世界の未来のためだ」なんてやけに大きなことを言って俺を送り出してくれた。
誰だお前は。エイリアンに脳を操作されてるのか。
世界の未来ってやたら規模でかいし。俺は確かに人助けをしたいから弁護士を目指すわけだけど、それにしても世界?世界救うの?なんの弁護したらそんな規模になるの?
父が弁護士をなにか別のジョブと勘違いしている可能性を感じ、え?そんな根本的なところから意思の疎通できてなかったの?とかヤバい疑問が浮かびつつ、考える。
わざわざ店を閉めて面談に来てくれた。
親から子への親切さや愛情は義務じゃない。
感謝を噛み締めて未来に進もう。
進路相談室の扉が開く。
「模試の成績がこちらです」
「そして希望の大学と、奨学金の要綱がこちら」
「充分に実現可能です。他にもいくつか候補がありますが、現実的に実現可能なのはこちらです」
さながら訪問販売のデモンストレーションの如く、担任教師と父親に向かってまくしたてる俺。
そう。俺。
なんで俺がデモンストレーションしてんの!?
支援しろよ担任!なんか言えよ父!
なぜか進路相談室に入った直後から、担任と父の態度はおかしかった。ので俺は空気を変えるべく喋るしかなかった。
「ええ…ハイ」
「ひとつお願いします」
わけのわからない目配せと相槌を打ち、俺をちらりと横目でみる。
「あのね、とても言いにくいんだけど」
「昨日、政府からお達しが出てね」
「君、今日から勇者です」
勇者ものを現実世界で展開したら結構ハードになりそうだなと思っていて、誰か書いてくんないかなーと5年くらい待ってたのに誰も書いてくれないので書くことにしました。