第六章 思い出せない約束
「忘れてるって何を……!?」
「約束。」
「約束……? ゆりちゃんとの……約束……。」
「明日。明日の夜まであたしはここにいる。もしも、思い出せたならここに来て。あたしの最期の約束。」
そう言うと、ゆりは消えてしまった。
「あ……っ! ……まだ……聞きたいことたくさんあったのに……。」
何も覚えてない……。ゆりちゃんがどんな風に笑っていたかも。話していたかも。どうしたら思い出せるの……。
「……もしかしたら……。」
あたしは急いで家へ走った。家に着くなり、あたしは部屋中のアルバムを引っ張り出す。アルバムには自分の小さな頃の写真が大量に並んでいた。
「どこ……。どこなの……!」
きっと一枚くらいは写真があるはず……。見たら何かを思い出せるのかも……。根拠はなくても、何かがわかれば……。
「何これ……。写真がはがされてる……?」
アルバムをめくっていると四枚だけ写真がはがされていた。たった四枚それ以外は全部貼られている。パラパラとアルバムをめくっていくと、最期のページに小さな花柄のメモが挟まっていた。そのメモには小さな字でこうかかれていた。
『またあしたいっしょにおれんじのはな、みにいこうね。ゆり』
「オレンジの花……?」
すると、ドアをノックする音が聞こえた。
「はーい。」
「さくら、いつまで起きてるの。もう十二時よ。あら、アルバム……?」
「あ、お母さん! お母さん、ここに貼ってあった写真どこにあるかわかる?」
「……。」
「あたし、ゆりちゃんに会ったの!ゆりちゃんに約束覚えてる?って聞かれたけど全然思い出せなかった。明日にはゆりちゃん消えちゃうの!だからお願い!知ってることがあるなら教えて!」
「お母さんが知っているのはこれだけよ。」
お母さんは少し後ろめたそうにもしながら引き出しのなかにしまってあったオレンジの封筒を取り出した。夕日のようなオレンジ色をした封筒には4枚の写真が入っていた。