第三章 最後の夜
そんな風に少女に助けてもらう日が続いてはや二日。相変わらず少女の名前は聞くことができていない。橋を渡ったあとには消えてしまうのだから当たり前だ。道路工事は今日で終わる。吊り橋を渡ることがなくなればあの子と会うこともなくなってしまうのだろうか。そのまま、もう二度と会うことは無くなってしまうのだろうか。
そう思っていた矢先、私は少女に夜、来るように言われた。
『七時に吊り橋で待ってる。』と少女が私に伝えてきたのだ。名前を聞こうとしたが『それも夜に。』とかわされてしまった。あと十五分で七時になる。私は水筒や上着が入ったリュックを持って、家を出た。
「やっぱり……暗いなぁ………。」
外はすでに真っ暗だ。電灯もなく、足元を照らすのは持ってきた懐中電灯だけになっており、木々が風に揺れる音だけが聞こえている。
「ねぇ、どこ? 出てきてよ。」
キョロキョロと辺りを見回しながら、懐中電灯で目線の先を照らす。すると、一番大きな木の枝の上に少女の姿が見えた。
「あ、いた! 危ないよ!降りて!」
「ああ、来たんだ。よっと、」
少女は十メートル以上の高さのところにある枝から降りてしまった。もちろん命綱も何もつけていない。
「キャーッ!」
「……ふぅ……。ん?どうかした?」
しかし、地面に降り立った少女にはかすり傷一つできておらずしっかりと地面に立っていた。
「え!?何で無事なの!?」
「……だって……もう人間じゃないもん。これくらいじゃ怪我何てしないよ。」
「え………?」