第二章 聞きたいのに聞けない
私は授業を終えるとすぐに学校を出た。つり橋の近くまで来てみたものの少女は見当たらない。
「あの子、何者なんだろう……。」
少し助けてもらっただけなのになんとなくあの子の事が気になった。なんだか懐かしいような感じがしたのだ。私がここに引っ越してきたのは五年前。小学三年生の時だ。もしかしたら、都会に居た時の友達かもしれない。それよりもっと小さな頃の友達かもしれない。そんな気がしてならないのだ。
「居ないのかな。帰ろう。」
くるっと振り向いたところで気がついた。思えばつり橋しか帰る道が無いのだ。朝はあの子に手伝ってもらったおかげで渡れたが、一人でなんてとても怖くて渡れない。ほんの少し勇気を出してつり橋に足を載せるが体重をかけていなくとも、板が外れそうで一向に渡れないのだ。
「どうやって帰ろう……。」
遠回りをすれば道はあるが、そんな遠回りをしていれば真っ暗になってしまう。それこそ危ない。
「あ、居た居たー!」
後ろから声が聞こえ振り向くとあの少女が居た。少女は息を切らしながら走ってくる。
「はぁはぁ……。やっと見つけた……。予想道理だった。恐くて渡れなかったんでしょ。」
「なっ! そ、そんな事……あるけど……。」
「じゃ、帰ろっか。」
「うん!」
私と少女は手をつないだままつり橋を渡った。私は少女の名前を聞こうと思ていたが結局、つり橋を渡った後には少女の姿は無かった。
「また……いなくなっちゃった……。」
「んー……あの子何者なんだろう……。」
自分の部屋のベッドに寝っ転がり、ぐるぐると思考を巡らせる。ベッドの上はぬいぐるみで埋まっているため、なぜかぬいぐるみに話しかけているかのような状態になっていた。
「明日も……会えるかな。」
私はそのまま深い眠りに落ちて行った。