間章
賊を撃退せし一行が。
村へ辿り着く暫し前。
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どうしてだよ、レニス。
「薄汚い餓鬼だ」
よく俺を怒鳴りつけた。
へまをする度に殴られた。
どうしてだよ、レニス。
赤裸顔のデブ野郎。
本当に憎らしい顔。
けど、笑うと人を魅せる。
どうしてだよレニス。
うまくやると、にっと笑う。
遠まわしに、誉めてくれる。
明日は我が身、人を騙すな、捨てるなと、あんたが俺に、教えてくれたんじゃねえか!
「やっと、一端になったな」
あの日の笑みは、言葉は、なんだったんだよ、レニス・・
◇◇◇◇◇◇◇◇
「手練れは長物使いの戦士一人。それを無視し、護身具程度しか持たぬ他を人質に」と言われた首領はすんなりと俺の策に頷いた、もう数段下の策でも多分頷いていただろう。
しかし、いややはり奴は、腹立たしい事に生き延びた。それを思うと笑みも失せる。
だが、まぁいい。
俺はすべてを伝える。そして新たな人生を歩めばいい。
◇◇◇◇◇◇◇◇
御者ケインの流した一筋の涙を拭い、ルージは憤りを覚える。ケインは少し生意気な、しかし憎めない奴だった。商隊の一員である事に誇りを持っていた。
苦しそうな顔は、裏切られた怒りと憎しみも在る。しかしそれ以上に悲しみが、その涙から感じられた。
軽業とちょっとした手業で、金は無いが勝手に生きてきたルージは、他者にすがる勇気などなかった。その勇気を振り絞ったケインを裏切った商人ケニスには、相応の痛みを与えなきゃならないと、ルージは思った。
◇◇◇◇◇◇◇◇
一行は、集落へ辿り着く。
そして、物語は紡がれる。