第一話「金髪の子供」
第一話「金髪の子供」
羅城門を通り抜けると、
人々が賑わう朱雀大路が
朱雀門へと繋がっている。
その朱雀大路をそれた路地には
複数の浮浪者がいた。
そのなかに世では珍しい
金髪に翡翠の色をした目の
男の子がいた。
名は、「翡翠」
食べる物も探しても
見つからず、
毎日腹を空かしていた。
今日もいつものように路地で
ぼんやりと空を眺めていると、
誰かが近づいてくる
足音がした。
それは翡翠と
同い年くらいの女の子だ。
女の子は鮮やかなシルクの衣を
身に纏っていた。
懐から一個の饅頭を取り出した。
。
「あなた、
お腹空いてる?」
「……。」
「これね、今朝のご飯
だったんだけど、
食べ切れなくて、
こっそり隠し持ってたのあなたにあげるわ」
と、翡翠に渡した。
翡翠は最初は
警戒していたけど、
しばらくして恐る恐る
手を伸ばし、饅頭をもらった。
翡翠はほおばった。
「…やっぱり、
お腹空いてたんだ。」
すると、路地の向こうから
女の子の母親らしき人が
こちらに向かって
「琥珀!帰りますよ!」
「はい!…じゃあ、元気でね」
と走り去っていった。
翡翠は、琥珀が
走り去っていった方向を
見つめていた。
それから数日後、
翡翠は大路を歩いていた。
すると、誰かと
ぶつかってしまった。
翡翠は謝ると、
「いてぇな、気をつけろガキ!」
と、護衛人に言われた。
「おい、そんな言い方は
無礼だろう。」
と護衛人を制した男が前に出た。
見るからに高貴な人物であった。
「すまないな、少年。
……ん?」
すると、男は翡翠を見るなり
目の色が変わった。
(…この子供……金髪に碧眼)
「お主、名は?」
「…翡翠」
名を聞くなり
だんまりと考え込む男。
「…翡翠とやら、
我が豪邸に来ぬか?
今の貧しい生活から
解放されるぞ」
翡翠はその言葉に
驚きと喜びの表情を浮かべる。
そして、
「行きたい…」
翡翠の人生が
大きく変わった瞬間だった。