第二継承王子に溺愛された私は困ってなどいません。私、婚約破棄をされそうなので今すぐメイドを辞めたいのです!
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
「ローズ」
「はい、ルト様どうなさいましたか?」
私の名前はローズと申します。
赤くて長い髪の毛が自慢です。
私は、幼い頃からメイドの仕事をやっております。
両親を亡くし、人生のドン底にいた私ですが、明るい未来がそこまでやってきております。
その明るい未来とは、私、婚約することになりました。
その相手は私のご主人様でもある、ルト様です。
ルト様はこの国の第二継承王子様です。
そしてルト様は双子の弟なのです。
双子の兄である第一継承王子のリト様も私のご主人様です。
私は双子の王子様の専属メイドなのです。
私がルト様の婚約者になるのは時間の問題でした。
私とルト様はお互いに好きでしたが、私はメイドという仕事を優先したくて、ルト様には婚約はできないと伝えていました。
ルト様は私の選択を尊重してくれたのですが、私の気持ちを知ってからのルト様は、それはもう私を甘やかし、私のメイドという仕事の邪魔までしてきます。
「ローズ、まだ?」
「少々お待ちください」
私は第一継承王子のリト様の結婚の準備で忙しいのですが、ルト様はそんな私を呼ぶのです。
明日、リト様は結婚式をするので城の人達は大忙しなのに、ルト様は分かっていらっしゃらないのでしょうか?
リト様の結婚相手の方は、隣の国の御令嬢のリズ様です。
お人形のような綺麗なお顔の世界で一番美しいと言われているお方です。
リト様もリズ様のように綺麗なお顔なので、お二人が並ぶと眩しくて目を細めてしまうほどです。
ルト様のお顔の説明をしておりませんでしたね。
ルト様のお顔は、それはそれは可愛い笑顔がお似合いで、それなのに身長は私よりも高く、引き締まった腹筋なんて男性らしくて格好いいのです。
「ローズ? 何、ニヤニヤしてんの?」
「えっ、ルト様」
私はいつの間にかリト様の結婚式の準備の手を止めて、ルト様のことを考えていました。
いきなりルト様が目の前に来て驚きます。
「変なことを考えてたでしょう?」
「そっ、そんなことはありません」
私は止まっていた手を動かします。
そんな私の手を取り引き寄せ、ルト様の腕の中へとおさまります。
「えっ、ルト様?」
「耳が真っ赤だよ。僕の裸でも思い出してたの?」
「へっ、変なことを言わないでください」
私はルト様の腕からスルリと抜け出し、距離を取ります。
「ローズって、僕の腕の中から抜け出すのが上手になったよね?」
「それは当たり前です。ルト様は一日に一回は私を腕の中に閉じ込めるのですよ? そんなに私は暇ではありませんので」
「でもさ、それはローズがいけないんじゃないの?」
「私のせいですか?」
「うん。メイドは辞めて婚約するって言ったじゃん」
そうでした。
リト様がリズ様と婚約をしたら、王子様の専属メイドを辞めて、ルト様の婚約者になると宣言したのでした。
でも、リト様が婚約をすると、婚約の儀式や色々あり、メイドを辞めることができなかったのです。
「それは、ルト様も納得していただけましたよね?」
「そうだけど、僕のローズなのにリトばっかりなんだもん」
「それはお仕事です。私にはこの三つのルト様の婚約者の証があるのですよ?」
私はブレスレットとネックレスと指輪をルト様に見えるように見せます。
するとルト様は満足そうにニッコリと笑います。
このブレスレットとネックレスと指輪はリズ様がいらっしゃる隣の国では婚約の証の品々なんです。
私達の国では婚約指輪が一般的ですが、ルト様は私に気付かれないように、一つずつくださいました。
ブレスレットはガラス玉が連なった物で、ガラス玉の中に青い液体が入っており、その一つ一つに薔薇の模様が彫られています。
ネックレスは私の名前にピッタリな赤い石が真ん中についています。
そして指輪は王族の紋章が入ったシンプルなシルバーリングです。
ルト様からいただいた時は本当に嬉しくて泣いてしまいました。
幸せを感じ過ぎると、人は泣いてしまうということを初めて自分で体感しました。
「ローズ、少しだけ時間を僕にちょうだいよ」
ルト様は私にお願いをします。
そんな可愛いお顔で言われては、私は拒否などできずに頷きます。
「それじゃあ、遠慮なく」
「待ってください。ここはリト様のお部屋です。ルト様のお部屋へ参りましょう」
「そうだね。リトに邪魔されたら困るからね」
リト様とルト様のお部屋は隣同士なのですが、部屋の真ん中に行き来できるドアがついています。
そのドアを通り、ルト様の部屋へ行き、ルト様は私を見つめます。
私もルト様を見つめます。
ゆっくりとルト様の顔が近付き、私は目を閉じます。
その時です。
「ローズ、大変だ」
恒例のリト様の邪魔が入りました。
恒例過ぎて、邪魔されたルト様は怒る気にもならないようです。
「リト様、どうしましたか?」
「俺、リズに、婚約破棄をされたよ」
「「えっ」」
リト様の言葉を聞いて、私とルト様は同時に驚きの声を出しました。
「待ってよ。リトが婚約破棄なんてされたら僕達も婚約破棄だよね? だって、ローズはリトのメイドを最後まで仕えるって言ってたんだから、リトの結婚がなくなったら僕達も結婚できないの?」
ルト様は困った顔をしています。
ですが、ルト様の言う通りです。
私はメイドを辞めることができません。
メイドの数が少なく、私がいなくなれば誰がリト様のお世話をするのでしょうか?
それも婚約破棄をされた王子様なんて言われるようになったら、大変です。
「ローズ、僕達の関係はどうなるの?」
ルト様は確認するように私達の関係がどうなるのかを私に訊いてきます。
「それは、私達も婚約破棄ですね」
「え~、ヤダ。絶対嫌だよ」
「ルト様、子供みたいなことを言わないでください。嫌なら何故、婚約破棄をするのかリズ様に訊きに行けばよろしいのですよ」
「あっ、そうだよね。そして仲直りさせればいいんだよね?」
「そうですね」
私だって、今の幸せを手離したくなどありません。
私だって、ルト様の婚約者のままがいいのです。
婚約破棄は絶対に阻止しなければなりません!
それから、すぐに隣の国へ向かうことになりました。
リト様も一緒に行きましょうと誘ったのですが、リト様は拗ねているようで、私とルト様の二人で行くことになりました。
「イアン様、ユーリ様お久し振りです」
隣の国のお城へ着くと、隣の国の王子様とそのお妃様が迎えてくれました。
何度見ても、お二人の大きさの違いには驚きます。
ふわふわの天然パーマの小さくて可愛らしいユーリ様と、背が高く威圧感のある体格の良いイアン様。
しかし二人の関係は、ユーリ様の言うことを聞く、可愛らしい犬のようなイアン様。
イアン様がユーリ様を大好きなのがよく分かります。
「ローズ、久し振りだね。ルトとは婚約したのは聞いたけど、まだ儀式はしていないよね?」
「そうなんです。色々とバタバタしていたのでできなくて」
「だからルトは拗ねているのかな?」
ルト様を見ると拗ねているようで、口を尖らせ何かブツブツと言っているようです。
「ルト様、何を言っているのですか? 早く馬車から降りてください」
私が言うと、リト様は私を一度見て顔をそむけて、馬車から降りません。
「ルトは困った奴だよ。そんなルトにはこれをすれば、すぐに出てくるよ」
そうイアン様は言うと私の手を取り、手の甲にキスをしようとします。
これは王族同士の挨拶で、男性が女性にするものです。
するとイアン様の唇が私の手の甲に当たる前に、ルト様が私の手を引いて挨拶をさせませんでした。
「その挨拶は、相手が未婚の場合にするんだよ」
ルト様がイアン様を睨み付けながら言います。
「でも、ローズはまだ未婚なのでは?」
「ローズは僕のなの。ローズは僕の妃になるの」
ルト様はギュッと私の手を握ります。
私は、そんなルト様を見て嬉しくなりました。
「分かってるよ。そんなに大事なら離れるなよな」
イアン様は私達のことを心配してくれたのです。
そしてルト様に私を必ず守れと、言ってくれたのです。
「リズは?」
いきなりルト様は言います。
ご機嫌斜めのようですね。
そうですよね。
自分の婚約破棄を招いた張本人に会いに来たのですから。
「リズ様でしたら、お部屋にいると思いますよ」
ユーリ様が教えてくれます。
私とルト様はリズ様のお部屋へ向かいます。
『コンコン』
リズ様のお部屋のドアをノックします。
「無理、絶対無理。入って来ないでよ」
リズ様の困っている声が聞こえます。
「リズ様、私です。ローズです」
「えっ、ローズお姉様? 他には誰もいないですか?」
「ルト様がいらっしゃいます」
「ローズお姉様だけ、中に入ってください」
私がルト様を見ると、ルト様は一人で入って良いよというように頷きます。
「それでは、失礼いたします」
私が中へ入ると鏡の前で泣いているリズ様がいらっしゃいます。
近付くと、何故泣いているのか分かりました。
「そのお顔はどうなさったのですか?」
リズ様の右の頬に赤い斑点があります。
私はその斑点がどうしてできたものなのか、すぐに分かりました。
「リズ様、どうして青い花の毒がお顔に付いたのですか?」
青い花の毒とは、私のブレスレットのガラス玉の中に入っている青い液体と同じ物です。
青い花は、リズ様達の国の象徴であるお花のゴールドフラワーの一種です。
ゴールドフラワーの特性には色々とあり、青い花はその中の毒を持つ特性の花です。
私のブレスレットのガラス玉の中に入っている毒は、私の身を守るためにルト様が、特別に職人に作らせたものなのです。
その青い花の毒には、素手で触ると赤い斑点が出ます。
そして、その斑点は消えるのに時間がかかります。
「青い花の毒をどうしても無害なものにしたくて、研究をしていたのですが、不注意で青い花の毒を溢してしまい、顔についてしまったのです」
リズ様は、この顔では結婚式なんてでられないので、婚約破棄を申し出たそうです。
「婚約破棄までする必要はありませんよ?」
「でも、この赤い斑点がなくなるのに、時間がかかりますよね?」
「そうですね。すぐには赤い斑点はなくならないと思います」
「そうですよね。その間にリト様のお気持ちが変わってしまっては、私は耐えられません。なので今の内に婚約破棄を申し出たのです」
どうして、そんな考え方になるのでしょうか?
好きなのでしたら、どんな顔でも、どんな姿でも関係ないのではないでしょうか?
私はどんなルト様でも、好きの気持ちは変わらない自信はあります。
私はルト様と一緒にいれるだけで幸せなのですから。
「わんっ」
わんっ?
この声はエリザベス?
エリザベスとは、私が飼っているゴールデンレトリバーです。
連れてきていないはずなのですが、エリザベスの声が聞こえます。
私はリズ様の部屋を出て、声がした方を見ます。
そこにはエリザベスがいました。
そして隣にはリト様がいらっしゃいます。
エリザベスとリト様はこちらへ歩いて来ます。
「エリザベスがローズに会いたいって言うから、連れて来たんだ」
リト様は最もな理由をつけて言いますが、私には全てお見通しです。
やはり、リズ様を心配して来たのですよね?
私はエリザベスを抱き締め、リト様はリズ様のお部屋へ入っていきました。
お二人がどんなお話をしているのか分かりませんが、私は外でお二人を待ちます。
「えっ、リト様。おやめください」
リズ様の声に驚き、エリザベスが立ち上がりドアの前へ行きます。
私もすぐにドアを開けると、リト様が青い花の毒が入った小瓶を持っており、リズ様がそれを取り上げようとしておりました。
「リト様、何をなさっているのですか?」
「ローズ。だってリズが顔の赤い斑点を気にしているから、それなら俺も同じ赤い斑点をつければ婚約破棄なんてしなくていいだろう?」
「そんなことをしなくても私が解決策をみつけますので」
「でも、、、あっ」
リト様の隙を狙って、リズ様が青い花の毒が入った小瓶を取り上げようとし、その小瓶がリト様の手から滑り落ち、リズ様の顔にかかりそうになっています。
私は急いで近付き、リズ様を守るために、髪の毛先に青い花の毒を浴びてしまいました。
痛くないのは確かなのですが、何も起こらないはずはないのです。
「ローズ、ごめん」
「ローズお姉様。大丈夫ですか?」
リト様とリズ様が私の心配をします。
何もなかったので私は大丈夫だと伝えます。
「ローズ、エリザベスがいるんだけど?」
ルト様がリズ様の部屋のドアが開いていたので、エリザベスと一緒に入ってきます。
「ローズ、どうしたの?」
ルト様は私を見て、不安そうに言います。
どうしてそのような顔をするのですか?
「ルト様?」
「ローズ、髪の毛先が真っ白だよ。せっかく真っ赤で艶々の髪の毛だったのに」
ルト様は私の髪の毛に触れます。
「痛っ」
ルト様はそう言うと、すぐに掌に赤い斑点ができました。
「ローズ、どうしたの? この赤い斑点って青い花の毒と同じ現象だよね?」
「あっ、その、、、」
リト様やリズ様のせいにはしたくないので、ルト様に何と言えば怒られないのか考えます。
「俺のせいだよ」
「いいえ、リト様ではありません。私のせいなのです」
リト様とリズ様がお互いに庇います。
「ローズ、おいで」
ルト様は私の手を引いてリズ様の部屋を出ます。
感情のない声で私を呼んだルト様は何を考えているのか分かりません。
以前、ルト様が使用していたことのある部屋へ入り、鍵を閉めます。
そしてルト様は、私をバスルームへと連れていきます。
服のまま私にシャワーをかけます。
私というよりは、私の髪の毛にかけます。
ルト様は、青い花の毒をシャワーで流しているのです。
「白いままだよ」
ルト様は私の髪の毛を見て言います。
「仕方がないですよ。切ってしまえば元の色なので大丈夫ですよ」
「せっかくの長い髪が短くなるのは嫌だよ」
「でも、この白くなった髪の毛は、元には戻らないと思いますよ」
「いいや、何か解決策があると思うんだ」
ルト様は考えています。
「ルト様、先ほどシャワーで青い花の毒を落としていましたが、手は痛くありませんでしたか?」
「いいや。全然、痛くなかったよ」
ルト様のその言葉に私は気付きました。
この国の水は青い花の毒を洗い流すことができるのだと。
以前、私は青い花の毒を素手で触り、赤い斑点が出たことがあります。
私の国の水では洗い流すのに青い花の毒が落ちずに苦労しました。
しかし、この国ではすぐに洗い流せたので、水に何か秘密があるのだと気付いたのです。
濡れてしまった服を着替えるために、ルト様にはバスルームを出てもらい、私はバスローブを着ました。
それから私の白い髪の毛を少しだけ切り、
ルト様に準備をお願いしていた物を混ぜ合わせて白い髪の毛にかけます。
私の思っていた通りでした。
私は青い花の毒の解毒剤を作ったのです。
その材料は二つだけ。
この国のお水とゴールドフラワーだけです。
この国のお水は不純物もなくとても綺麗なので、そのお水で育ったゴールドフラワーは無敵です。
青い花もそのゴールドフラワーと同じお水で育っているので、お水を加えることで毒が中和されたのです。
ゴールドフラワーをすり潰し、無色透明の蜜が出てくるので、その蜜とお水を混ぜ合わせます。
すると気泡ができ、気泡がキラキラと輝きます。
これを私の髪の毛に塗ると、元の赤い髪の毛に戻ります。
「これでローズの綺麗な赤い髪の毛は元に戻ったね」
ルト様は私の髪の毛を大事そうにヒト束持ち、自分の唇に近付けキスを落とします。
「ルト様、これだけではありませんよ」
私はルト様の手を取り、掌を見ます。
そこには青い花の毒でできた赤い斑点があります。
「この赤い斑点にこの解毒剤を塗ると、、、」
やはり、赤い斑点は消えました。
すぐにリズ様の元へ行き、解毒剤で赤い斑点を消しました。
リズ様は大喜びでリト様に抱きつき、結婚しますと言っていました。
リト様はホッとした顔をした後、嬉しそうにリズ様を抱き締めていました。
後で聞いたのですが、リト様がリズ様の所へ来たのは、エリザベスがリト様の所へ来たからだそうです。
エリザベスがリト様に、リズ様の所へ行こうよと言っているように見えたそうです。
エリザベスは本当に賢い子ですね。
翌日、リト様とリズ様の結婚式が行われました。
二つの国が一つになる日は近いのかもしれません。
お二人はとても幸せそうで。
なんだか私は泣いてしまいました。
それに気付いたルト様が、私の涙を拭ってくれます。
「ローズ、泣くのはまだ早いよ」
「えっ」
ルト様は私に意味深なことを言うと、私の手を取り、リト様達の元へ向かいます。
参列者達の視線が一気に集まります。
「ルト様、何をするおつもりですか?」
「ん? ローズを泣かすつもりだよ」
ルト様はニコニコとしながら言います。
泣かすとはどういう意味なのでしょうか?
私とルト様はリト様とリズ様の前に二人で立ちます。
「今日は、第一継承王子のリトが結婚しました。そこで僕から皆様へ報告があります」
そうルト様が言うと私に向かってニッコリと笑いかけます。
緊張していて固くなって重くなっていた体が、軽くなりました。
「第二継承王子のルトは、今日ローズを婚約者にします」
「ルト様」
私の目には涙がたまって、ルト様の表情も分かりませんが、ニコニコと笑っているのだと思います。
「ローズ、まだ泣くのは待ってよ」
ルト様は耳元で囁きます。
「ローズ、僕の婚約者になってくれますか?」
「はい。喜んでお受けいたします」
私の目にたまった涙が頬に流れて、ぼやけた視界が少し解消されると、ルト様が嬉しそうに笑っています。
私もルト様と同じように笑います。
本当に嬉しいのです。
ルト様とはいろんなことがありました。
いろんな出会いもありました。
ただ一つ言いたいのは。
「ルト様と出逢えて私は本当に幸せです」
「僕もだよ。ローズ」
「ルト様、起きてください」
「ん? 何でローズが起こすの?」
「あっ、そうでした。私、メイドを辞めたのを忘れてました」
「いいよ。せっかくだし、、、」
「きゃっ」
ルト様は私の腕を持ち、ベッドの中へと引っ張ります。
「ルト様、ダメですよ」
「いいじゃん。ローズは僕の婚約者なんだよ?」
「ダメですよ」
私はベッドから起き上がろうとすると、ルト様が私に覆い被さります。
目と目が合うと、ルト様がゆっくりと近付きます。
ルト様の眼差しに負けて私は目を閉じます。
今日こそは、邪魔者はいないはずです。
「わんっ」
エリザベスの鳴き声が聞こえたと思ったら、ルト様の横腹へ頭突きをしてきました。
ルト様は痛がりながら、ベッドから落ちます。
私はルト様を心配してルト様を見下ろします。
ルト様はやれやれという顔をした後、私の後頭部を押さえ、短いキスをしました。
「ローズ、顔が真っ赤だよ」
ルト様はニコニコと笑って言います。
「私は薔薇ですよ? 赤くて当たり前です」
私はそう答えた後、油断していたルト様にキスをしました。
驚くルト様を置いて、私とエリザベスは部屋を出ました。
これから幸せな毎日が続くのです。
ルト様が隣にいれば、私はそれだけで幸せなのですから。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。
この物語は『第二継承王子に溺愛された私だったけど、第一継承王子にも溺愛されて困っています。隣の国の王子にも求婚されて色々ありましたが、婚約したいので私メイド辞めます!』のその後のお話となっております。




