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創世神話Ⅰ 女神たちが紡ぐ三千五百年物語  作者: ゆみとも
第一章 神婚の儀

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第86話 天下三分の計


――丞相府の賓館での縁談騒動から遡ること、二日前。

浮島夢咲の会議室には、まだ重苦しい空気が漂っていた。


曹英の縁談をどう破談に導くか――その難題を背負った周瑜は、腕を組み沈思している。

私を含め、紗良、曹英、碧衣、琴葉、荀彧、徐庶、龐統、孫瑜、魯粛、そして星蓮も席を立たず、彼を見守っていた。


周瑜は皆を見回し、苦笑を浮かべた。

「皆さんも残ってくださるのですか……。国や軍を動かすのは得意ですが、縁談の破断となると勝手が違いますな」


困惑する周瑜に、星蓮が静かに口を開いた。

「曹英が一度は『縁談を受ける』と宣言するのです」


曹英が不安げに視線を向けると、星蓮は柔らかく微笑んだ。

「安心してください。実際には洛陽でのお披露目の場で、星愛(ティア)様や私が用意した“理念の演出”を披露するのです。

黄河開発の計画を曹英様が語り、『私は夢咲の未来と結婚します』と宣言すれば、婚姻を理念にすり替えられるでしょう」


荀彧が目を細めて頷いた。

「なるほど。ただし曹操だけなら通じようが、程昱ら文官に『ならば婚姻を結んで夢咲と魏が同盟を結べばよい』と返されれば、うやむやになりかねぬ」


琴葉がにこにこと手を挙げた。

「じゃあ、曹英が『お嫁に行くくらいなら黄河に飛び込む!』って大騒ぎするのはどう? 曹操も呆れて縁談を取り下げるわ」


貂糜が曹英に問いかける。

「曹英様、琴葉様のようなことができますか」


曹英は困った顔で首を振った。


私は曹英の顔を見つめた。

(やはり……琴葉だから言える台詞。夢咲の才女と呼ばれる曹英には似合わないし、たとえ叫んでも誰も信じない)


重苦しい沈黙が流れる。

その空気を破るように、龐統が手を叩いた。


パン!――乾いた音が会議室に響き渡った。



皆の視線を受けた龐統が、大胆不敵な笑みを浮かべた。

「妙案がありますぞ。孔明の策を利用するのです」


徐庶が問いかける。

「孔明の策とは?」


「天下三分の計です」


荀彧の眼の奥が光った。

「面白い……天下三分の計であれば、上手くいきそうですな」

周瑜の顔が明るくなり、他の軍師たちも理解したようであった。


(えっ、軍師なら分かるかもだけど、私には見当がつかない)


そんな私の気持ちを代弁するように、紗良が龐統に尋ねた。

「魏・蜀・呉に分けて天下を支配する計ですよね……

曹英が魏・蜀・呉から婿を取るということですか?」


龐統は静かに頷いた。

「蜀、呉からも婚姻を持ちかける。曹英様はどうなると思いますかな」


曹英はしばし沈黙した後、静かに口を開いた。

「……つまり、私は魏・蜀・呉の三勢力から同時に求められる存在になるのですね。

それは誇らしくもありますが、同時に重荷でもあります。

けれど、夢咲の未来を守るためなら――でも、嫌です」


龐統は笑みを浮かべ、話を紡ぐ。

「早まらないでください、曹英様。

蜀と呉からも縁談話がある中で、曹操が強引に祝言を挙げると思いますか?」


曹英は目を細めて答えた。

「それをしたら、蜀も呉も黙ってはいないでしょう。

蜀とは漢中をめぐる戦の最中、呉とは濡須口の戦いが終わり和睦したばかり。

今、呉と事を構えるのは得策ではありません」


龐統は満足げに頷いた。

「さよう。どの国との縁談も、天下三分の計が働いている限り縁談は進まぬということです」


会議に出席している面々は、深く頷いた。


赤壁の頃から交渉事で苦労してきた魯粛が問いかけた。

「して龐統殿、曹操との会談は明後日であるが、それまでに縁談話を作る算段は……」

言いかけてしばし龐統を見つめ、言い直す。

「いや、龐統殿のことだから、すでに算段はあるのであろう」


龐統が策の概要を語ると、場の空気が一変した。

皆が頷き、表情に光が差す。


「曹英殿、いかがですかな……納得いただけましたか」


曹英はにっこりと笑みを浮かべ、力強く頷いた。

「素晴らしい策です。必ず成功いたします」


龐統は魯粛、孫瑜、貂糜へと視線を移す。

「どうです、実行できますかな?」


魯粛が孫瑜と目を合わせ、口元に笑みを浮かべて答えた。

「もちろんですとも。いや、実に愉快ですな」

貂糜は袖で口元を隠し、静かに微笑む。

「ええ、本当に愉快ですわ。これなら成功間違いなし」


龐統は自信に満ちた笑みを浮かべ、声を張った。

「ミレイア先生、相談に乗っていただきたいことがあります」


すると、ホログラムではなく、ドアを開けてミレイアが入室した。

「面白い話をしているものだから直接来たわよ。

龐統君、なかなか面白いことを考えたわね」

「この功績に……磁気学の単位を一つ頂ければと思いまして」


(そんなことで夢咲学園の単位を稼ごうだなんて……龐統さん、ほんと抜け目ないわね)


「龐統君、そういうところが駄目なのよ。で、私を呼んだのは――華蓮を呼び出して欲しいのでしょう?」


龐統は頭を掻きながら苦笑いを浮かべた。

「さすが先生。襄陽にいる華蓮様を呼んでいただけますか」


ミレイアは琴葉の席に視線を移し、龐統を見据えた。

「もっと察しのいい人が、いなくなっているわね」


その言葉と同時に――上空から光がぐんぐん迫ってきた。


グァン――!


衝撃波が窓を震わせ、そこには華蓮が浮かび立っていた。

その肩には、琴葉蜘蛛がしがみついていた。


ガラスを通り抜け、華蓮が部屋に入ってきた。

肩に止まっていた琴葉蜘蛛は通り抜けられず――

「あっ、落ちた」私は思わず声を上げたが、煙とともに元の席に戻り、何食わぬ顔で座っていた。


そんな琴葉には目もくれず、華蓮は龐統に視線を移す。

「龐統さん、何か面白い人形劇のシナリオを描いたのかしら?」


華蓮の妖艶な立ち居に身じろぎもせず、龐統は語り始めた。

その内容を耳にした瞬間、私は――この策は必ず成功すると確信した。


「あら、面白いことを考えるわね。曹操と程昱の顔が思い浮かぶわ……うふふ」


華蓮は満足げに微笑んだ。


「うふふ……あなたたち、面白いことを考えたようね。

愉快な人形劇が見られそうだわ。手伝ってさしあげます」


周瑜が静かにまとめに入った。

「時間がありませんな……ミレイア様、超高速型の流星を使わせてください」

「ええ、構わないわよ」

「では、魯粛と孫瑜、龐統と貂糜は直ちに準備を整え、華蓮様と同行してください」


一同は自信に満ちた表情で頷き、会議室を後にした。


―――――


午前零時、夢咲学園(浮島夢咲本校)の講堂に集う神々と人々。


満足げな顔で皆を見渡すミレイア。

「皆さん、お揃いのようですね」


妃良(ヘラ)が微笑みながらエミリアに命じた。

「澪の真似してもったいぶらないで、早く映像を見せてちょうだい」


ミレイアは妃良に一礼し、指を鳴らす。

すると、会議室の前方に、3Dホログラムビジョンが立ち上がった。

映像は琴葉蜘蛛が見て、聞いている世界が広がっていた。


曹英が感嘆の声をあげる。

「ねえ、見て……すごいわね。やっぱり二千百年後の技術だわ」


私は周囲を見渡した。曹英と同じように驚いている者はなく、むしろ皆楽しげに映像を眺めている。

(さすが夢咲学園で先端の学問を学んでいるだけあるわね……あの“新しい物アレルギー”持ちの曹英まで目を輝かせているんだから)


浮島夢咲に暮らす人の子たちは、時間があるときには学園でミレイアから先端技術を学んでいたのだ。


「懐かしいわ……ここ、建業の太初宮の門ね」

曹英が懐かしむようにホログラム映像を見つめる。


「そうよね。建業には人質のようにいた時期もあったし、今では夢咲建業府の責任者でもあるものね」

私がそう言うと、曹英は映像を見ながら静かに頷いた。


華蓮が門の前にいる琴葉に声をかける。

「琴葉、そろそろ始まるのかしら」

「ほーい、始まるよ……周瑜さん、華蓮の方に頭を向けて」


どうやら琴葉は周瑜の頭の上にいるらしく、映像には髪を逆立てた華蓮の姿が映し出された。


(ああ、やっぱり夏口の鬼女の衣装に大鎌……余程気に入っているのね)


そんなことを思いながら映像を見ると、逆立った髪の毛から幾千本もの銀糸が空へ一直線に伸び、渦を巻いた。


「ああ、華蓮様……」

貂蝉と黄月英が羨望の眼差しでその光景を見入る。


「では、参りましょう」

華蓮は妖艶な微笑みを浮かべ、指を鳴らした。


パチン――


渦を巻いた銀糸が、太初宮へ一直線に降り注ぐ。


「えっ、華蓮さん、何をしたんですか!」

私は思わずホログラムの華蓮に声をかけた。


ホログラムの華蓮がこちらを振り返る。

「あら、その声は心配性の星愛(ティア)かしら……安心なさい。

あの銀糸が刺さった者は、周瑜と魯粛、孫瑜に関する情報の脳内閾値を零にしてしまうのよ」


「閾値……零? 一体何なんですか?」琴葉の声が響く。

講堂ではクスリと笑いが漏れ、場の空気が和らいだ。


「あら、あなた夢咲学園でまだ学んでいないの?

簡単に言えば、銀糸が刺さった者には周瑜も魯粛も孫瑜も認識できなくなるの」


華蓮が諭すと、琴葉が不安そうに尋ねた。

「では、華蓮様と私はどうなるのですか」


「あなたは小さな蜘蛛だし、私は断絶神カレンドール。

闇夜に紛れ、闇夜に現れ、黒き魂を狩る女神。

そのような銀糸は不要なのよ……うふふ」


「孫権の寝所で待っていますわ」と言葉を残し、華蓮は大鎌を担ぎ、膝を曲げると一気に跳躍し、太初宮の闇へと消えていった。


魯粛と孫瑜は顔を見合わせ、静かに頷く。

そして正門をくぐり、中へと歩みを進めた。


―――――


寝所に近づくと、灯花が煌々と焚かれ、物々しい雰囲気が漂っていた。


椅子に腰掛け、大鎌を肩に抱えた華蓮が足を組み、孫権を見下ろしている。

遠巻きには近衛兵が取り囲み、緊張が張り詰めていた。


「ペルセポネが許可したのよ。今から冥府より魯粛と孫瑜が現れるわ」

華蓮が妖しい微笑みを浮かべ、孫権に視線を向ける。


「華蓮様、そのようなことは……」

言いかけた孫権の眼がこちらを捉え、驚愕に染まった。

「ば、ばかな……亡き者が、なぜここにおるのだ」


(あら、孫権には周瑜だけ認識できないように銀糸を仕込んだのね……ふふ)

映像を見ながら納得し、近衛兵が周瑜・魯粛・孫瑜に無反応なのが可笑しかった。


孫権は近衛兵に向かい叫ぶ。

「ぬしらは孫瑜と魯粛が見えぬのか!」


「だから言ったでしょう、冥府から呼んだのよ」

華蓮は呆れ顔で孫権を見返す。


静かに近づく魯粛と孫瑜。


魯粛が真剣な面持ちで告げる。

「孫権様、曹操が曹真と曹英を結ばせようとしています」

孫瑜が言葉を継ぐ。

「その縁談がまとまれば、夢咲は魏に傾き、星紙幣や夢咲の技術が一気に魏へ流入し、呉も呑み込まれるでしょう」


「な、なに……!」孫権は腕を組み、深く考え込む。


魯粛がさらに身を寄せ、目を細めて語りかける。

「長男の孫登様がおられるではありませんか。

すぐに婚姻書状をしたため、私にお預けください」


孫瑜が頷く。

「濡須口で疲弊し、その後の和睦。そう容易く曹英様との婚姻は進みますまい」


孫権は頷き、素早く筆を走らせて書状をしたため、魯粛に託した。


「次は蜀ね」華蓮は呟くと、大鎌を担ぎ、高く跳躍して太初宮の黒い屋根に消えていった。


夢咲学園の講堂では、一斉に拍手と賛辞が湧き上がる。

荀彧が徐庶に言う。

「さすが百戦の将二人、鮮やかなものを見せてもらった」

徐庶も頷いた。

「明日は、蜀の劉備殿ですな」


ミレイアが最後をまとめる。

「明日も華蓮劇場は午前三時に開演します。皆さん楽しみにしてください。

それと、夢咲学園はいつも通り九時から開講です。遅刻はしないように」


――こうして、呉の婚姻書状は夢咲の手に渡った。




◇◆◆ 成都の宮殿 ◆◆◇


成都の宮殿を、白装束の龐統と糜夫人(貂糜)が堂々と歩いていた。

午前三時、宮殿内に人影はなく、門兵だけが厳しい目を光らせていた。


龐統も糜夫人もこの宮殿には不慣れで、華蓮が案内をしていた。


「ここね……あら、お邪魔かしら」

華蓮が糜夫人(貂糜)をちらりと見やる。

そこは甘夫人の奥の間、劉備と甘夫人が同じ寝床にあった。


「大丈夫です。実は何も感じないのです」

糜夫人(貂糜)はそう言うと、寝ている劉備の横に座り、頬を軽くたたいた。


「う、うーん……卿よ、もうよいではないか」

劉備が目を擦りながら甘夫人を見た。そこには甘夫人の寝顔があった。

頭を掻きながら半身を起こす劉備。


この様子を映像で見ていた夢咲学園の講堂では、クスクス笑う者、恐る恐る見る者と様々だった。

私は甘夫人と劉備が一緒に寝ている意味が分からず、周囲の反応を見て不思議に思った。

碧衣も同じように首をかしげていたが、紗良と曹英は顔を赤らめて俯いていた。


再び3Dホログラムビジョンに目を戻すと、劉備と貂糜が目を合わせていた。

「糜夫人ではないか……生きておったのか、まことに糜夫人なのか?」


糜夫人(貂糜)はにっこり笑い、頷いた。

「今晩は、甘夫人とお楽しみだったのですね」


「いや、それはそれだが……」劉備は下を向く。

「玄徳様、どうなさいましたか?」甘夫人が単衣を羽織りながら半身を起こした。

「ここに、糜夫人がおるのだ」

甘夫人は劉備の顔を撫で、劉備の手に自らの手を重ねた。

「誰もいませんよ」


再び視線を糜夫人(貂糜)に戻す劉備。

だがそこにあったのは、袖で口元を隠し笑う夏口の鬼の顔だった。


「ひえっ!」劉備は驚いた。

「あら嫌だわ、人を化け物のように……劉備はお盛んですこと、うふふ」


「こっ、これは華蓮様!」

華蓮の後ろから顔を出す糜夫人(貂糜)と龐統。


「龐統まで……い、生きておったのか!」

劉備が大声を上げると、何も見えない甘夫人は立ち上がり叫んだ。

「だ、だれ……」


華蓮の瞳が光ると、甘夫人は声を上げかけ、そのまま布団に身を沈めた。


「劉備よ、落ち着きなさい。

この二人に頼まれて、冥界から案内してきましたのよ」

再び華蓮の眼が光ると、劉備は平静を取り戻した。


華蓮が龐統に合図を送ると、龐統が頷き劉備の前に座る。


「実は、曹操が曹英と曹真を結ばせようと画策しております。

殿、考えてください……この縁組は、漢中で魏と対峙する蜀にとって不測の事態となりましょう」


糜夫人(貂糜)が劉備の手を自身の太ももに乗せ、静かに言葉を紡ぐ。

「夢咲星環府が魏に傾けば、強力な軍勢、そして全国紙幣となりつつある星紙幣(しんしへい)までもが魏に流れてしまうのです」


劉備は腕を組み、うつむき考え込む。


龐統が囁く。

「劉禅様がおられるではありませんか。

すぐに婚姻書状をしたため、私にお預けください」


糜夫人(貂糜)は劉備の手を重ねたまま耳元で囁いた。

「玄徳様の書状があれば、曹操といえども迂闊には手を出せなくなります」


劉備は黙って頷き、手早く筆を走らせた。


書状を渡すとき、劉備は糜夫人(貂糜)に声をかける。

「肌の温もり、息づかいまでも……幽霊とは思えぬ。

いや、幽霊でもよい。正室として戻ってはくれぬか」


糜夫人(貂糜)は単衣を羽織ったまま崩れ伏す甘夫人を見やり、劉備に視線を戻した。

「私には冥界に想い神が居ります。ゆえに、その願いはかなえられません」


映像を見ていた貂蝉の眉がわずかに動き、隣の小喬は微笑みながら顔を赤らめた。私はその反応を不思議に思いながらも、再び映像に目を戻した。


すでに二通の婚姻書状が揃い、映像は華蓮の肩の上に移る。

周瑜、龐統、貂糜が手を振る姿があった。


映像は一気に上空へ――


――ドーン!


夢咲学園講堂の壁を揺らす衝撃波。

映像は講堂の入り口から中へと流れ込んだ。


「洛陽行きの船には間に合ったわね……ふふ」

華蓮の声が講堂に響き渡った。



◇◆◆ 洛陽 ◆◆◇


そう、曹英の破談には天下三分の計が仕組まれていた。


晩餐の席で曹操が黄河開発を夢咲に協力を求める中、曹英は突然立ち上がり、自ら曹真との婚約を発表した。

場内が祝賀の拍手に包まれるが、彼女は「でも、私は安くないわよ」と啖呵を切り、二通の婚姻書状を曹操と程昱に示した。

さらに「私は夢咲と同じく中立」と宣言し、場の空気は一瞬にして凍りついた。


書状は一通が孫権の認めた「長男・孫登と曹英の婚姻書状」、もう一通が劉備の認めた「次男・劉永と曹英の婚姻書状」であった。


曹真が何ごとと覗きに来る。

唇を噛み、じっと書状を見つめる曹操と程昱。

腕を組み、仁王立ちで二人を睨む曹英。


その三人を見て曹真が豪快に笑った。

「丞相に程先生、まんまとしてやられましたな!」


曹操は養子のように思っている曹真を睨む。

「黙れ、曹坊……してやられたわい」


曹真は、今度は曹英を見て涙を流しながら笑う。

「クックック……腕を組んで立っているのは、怖い怖い曹娘」

「何よ、叔父さん!私は高い女なのよ」

「ガハハハッ、愉快!愉快!流石は曹の血を継ぐものよ。

天下三分の計を謀るとは、差し詰め孔明も真っ青だな。

のう、丞相殿」


曹操も血統の力を感じたのか笑い出した。

「良い余興が楽しめた。さあ、皆の者、夢咲の黄河開発協力を祝おうぞ!」


ウォォ――!!

万雷の拍手が上がる。


曹英はやっと肩の力を抜き、腰を下ろした。


その時、程昱の眼の奥が光り、曹英に声をかける。

「曹娘様、あなたがたには優れた軍師が後ろにいるようですな……しかも一人ではない」


そう言い終えると、曹操と曹真は談笑を始めた。


(あら、程昱は何か感づいたのかしら)


私はそんなことを思い、外を見やると雨も上がり、雲の隙間からいくつもの星が瞬いていた。

魏の後ろ盾も得られ、いよいよ夢咲が黄河進出を決めた日の、裏の物語こうして幕を閉じた。



ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

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更新は偶数日の朝7時過ぎを予定しています。

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