表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創世神話Ⅰ 女神たちが紡ぐ三千五百年物語  作者: ゆみとも
第一章 神婚の儀

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/127

第29話 許都遠征 ~賊殲滅~


◆南州夜影賊衆の娯楽施設◆


耳元で囁くような声が聞こえてきました。


「星愛 … 星愛 …」


私は喉の痛みが酷かったのですが、何とか小さい声は出せそうです。


「えっ、その声は琴葉ちゃんなの?」


「うん、琴葉だよん。いまね、星愛の肩の上にいるんだよ」


「琴葉は華蓮様と一緒だったと思うけど …」


「うん、一緒だったけど … 

華蓮様がきっと星愛達が拉致されているから様子見てきなさいって言われて、私だけ先に来たの」


「じゃあ、華蓮様がこっちに向かっているのね」


「うん、他に聖女の貂蝉様と聖女候補の月英様でしょ …

それに、とーっても強い関羽、趙雲、それに髭だるま(張飛)が一緒に向かっているんだよ」


私は琴葉の話を聞き、ホッとしました。

そして琴葉が更に話を続けます。


「それと、賊には華蓮様の糸の契約の呪縛を受けているものがいるから、

星愛達には手は出せないって言ってたよ …

だから、安心してね」


この話、他の五人にも教えてあげたいけど大きな声が出ません。

声を出そうと焦っても不安を煽るだけなので、

ここは気丈に振舞うことにしました。


暫くすると、二頭の馬の蹄の音が遠くから聞こえてきました。


「星愛、私、そろそろ行くね。

必ず、華蓮が助けるって言っていたから頑張ってね!」


琴葉はそう言い残し、窓の方に移動していきました。

そして二頭の馬がこの建屋の前で止まったみたいです。


外では賊が話していました。


「お前がお頭のところに報告に行ってこい。

俺は、ここにいる女を先にいただいているから」

「兄貴、ずるいですぜ」

「子供は別として、他に女が五人 …

お前の分も残しておいてやるから、安心しな」

「分かりやした、ちゃんと残しておいてくださいよ」


言葉を残し、子分と思われる男はお頭と言う男の下に馬を走らせた」


(さてさて、どこに行くか楽しみですねー)


子分と思われる男の肩にはしっかり琴葉が乗っていました。


耳を澄ましていると、外から声が聞こえてきます。


どうやら、見張りの男と話している様です。


ドアが開き、外の光が部屋の中を明るくし、

男が三人入って来ました。


「さてさて、どのねーちゃんにするかな」


男は肩で顎をさすりつつ、醜い笑いを浮かべ、

五人の女兵士を値踏みする様に顔を覗き込んでいきます。


「よし、お前に決めたぞ!」


口から涎を垂らしながら女兵士の襟元を開こうとした瞬間でした。


「うっぎゃー、歯が、歯が ……!」


女兵士の前で跪き、大きく口を開け、やがて動かなくなりました。

それを見ていた二人の見張りは腰を抜かし震えています。

(ホント、情けない男達だわねー)


「う、う、うぬら …… 何をした?」


私達を守るのは今しかないと思い、

大胆で狂った笑い顔を作り小さな声で言いました。


「あなた達、私達の病気を貰いたくなければ早くこの部屋を出ていきなさい!」


「ひっ、ひぃーーー」


思った通り、残りの二人は部屋を出ていきました。

(腐れ外道が…100万年早いわよ)



◆華蓮 -沙市まであと三里- ◆


華蓮はニヤリと笑い、ぽつりと呟いた。


「あらー、動き出したわねぇ」


馬列を整えながら、月英が華蓮に尋ねた。


「華蓮様、どうなされたのですか?」

「うふふ、今、私のところに醜い魂が届いたのですわ」

「み、醜い魂?」


「そうよ、私は輪廻転生に値しない魂を私の力にしているのよ」


月英は理解しようとしましたが理解できずに質問しました。


「でも、そのことがどうかなさいました?」

「ウフフ、黄巾の乱の時に怒りに任せて …

私、幾千もの呪縛の糸をばらまいたことがありましてよ」

「今回届いた魂は、その呪縛が発動して届いたという事ですか?」

「そうよ、この呪縛は、嫌がる女性に手を出そうとした瞬間に発動するものなのよ」

「どんな呪縛なのですか?」


……


「ウフフ、糸が全歯の神経に絡みつき、まるで全てが虫歯の疼きに見舞われるかのような激痛を与えるの。耐え切れず悶絶する者もいるわ


……


そして、耐えられずに悶絶死するのよ」


月英の瞳が跳ね上がった。


「す、素敵です…華蓮様!

その糸――どのように神経に構築されているのか、ぜひ解析してみたいです。

そ、それに、痛みに抗い切れない様子をもっと詳しく…!」


華蓮はしばらく微笑みを絶やさず、月英を見据えた。


「どうかしら、月英。

私の聖女として、この仕組みを探求してくれない?」


「はい、もうこの世界観、我慢できません。

華蓮様にずっとついていきます」


その話を聞いていた貂蝉がにっこり笑い、

月英に声を掛けます。


「同じ聖女同士、これからよろしくー」


ふと、月英はこの雰囲気に危機感を持ったのか華蓮に尋ねます。


「ところで、聖女になるって何か儀式みたいな物があるのですか?」


「ウフフ、今晩は月が真っ赤に染まるわよ、

その下でしっかり教えてあげましてよ」




後ろで、前の三人の会話を聞いていた張飛がたまりかねて尋ねます。


「あ、兄者!女神ってみんなあんな感じなのか!?」

「ハッハッハッハッ!わしに分かるはずがなかろう!!」

豪快に笑い飛ばし、ごまかす関羽でした。


張飛が次に趙雲を見つめます。


「張飛兄者、何事も楽しめればそれが一番です!」


趙雲はにっこり笑い親指を立てます。


馬の群れは、おかしな会話を乗せ、疾風のごとく流れるように沙市へと近づいていきます。




◆南州夜影賊衆の娯楽施設◆


子分と思われる男の馬は娯楽施設の奥へと進んでいきます。

そこには目を細めて、ニヤケながら花畑を見つめる男が立っていました。


子分が馬から降り男に話しかけます。


許無情シュ・ウーチン様、今、女船団のところに脅迫所を置いてきました。

やつら、交換条件を飲んでくれやした」

「ふん、その女どもも、我々の肥やしにしようかのう ……

ほれ大麻草を沢山準備しろ、荷受け前に風上から沢山いぶしてあげろ」


そうだったんです、南州夜影賊衆は大麻草を大量に栽培していたのです。


「へえ、女どもを腑抜けにして、好みの相手に売り飛ばせばいい。


奴らの軍隊、いい女揃いですぜ」


「ハッハッハッ、お前なかなか抜け目がないなあ ……

さあ、街の男どもがここに上がってくる時間だな、

女たちに煙を嗅がせ働かせて来い!」


「へえ、あっしも頂かせてもらいますぜ」


再び男は馬に乗り、松明が灯されている朱色の楼へと向かっていった。

楼の中からは煙が漏れ、囚われた女たちのうめき声と狂った男の声が聞こえてきた。


(フフフ、800の目は見逃しませんよ。

華蓮様に魂を絶たれるといいですねー、フフフフ)


琴葉蜘蛛はそう言い残して姿を消した。




◆美優の陣幕内 ◆


美優の肩の上に乗る琴葉蜘蛛。


「美優様、報告に来ましたよ」


一言伝え、華蓮の肩から飛び降り、琴葉の姿に戻りました。


「琴葉ちゃん、待っていたのよ ……

直ぐに状況を話してもらえるかしら?」


美優の陣幕には、美優、紗良、碧衣、麓沙、孫尚香が揃い、

琴葉が情報をもたらせるのを待っていた。


紗良に至っては今にでも飛び出していきそうな表情をしていました。


「えっとね、まず華蓮様からの伝言を言いますね。

『満月を赤く染め上げてみますわ』と言えばわかると言っていましたよ」


「まあ、華蓮ったら大はしゃぎね。

華蓮一人だったら、飛んで賊のところにすぐ行けると思うけど……

他に従者がいるのかしら?」


「えっとね、関羽、張飛、趙雲、貂蝉、黄月英の五人が馬で向ってるよ。

もうそろそろ着くころかなあ……」


その名前を聞いて驚いたのは孫尚香でした。


「えっ、えっ、えーーー!?

……

劉備のところの将軍たちじゃない …

それに貂蝉とか、死んだんじゃなかったの?

黄月英って何よ?何で発明家が一緒なの?」


疑問だらけの尚香を他所に美優が口を開きました。


「あらあら、派手に立ち回る気かしら …

こちらから軍を出す必要はなさそうね。


ところで、賊の本拠地は見てきたの?」


「うん、最初に星愛と従者五人のところに行ってきた」


紗良の目の色が変わり琴葉に聞く。


「星愛、星愛は無事だったの?」

「うん、ただみんな口の周りが少し赤くなっていて、

喉がやられていたみたいで、思うように声が出ないみたい…」

「おのれー、賊が … 許さない、許さない …」

「椅子にぐるぐる巻きにされていたけど、

みんな無事だったよ!」


紗良は美優を見つめ、声を張り上げます。

「美優様!!早く出立を!」

「紗良ちゃん、落ち着きなさい …

ところで、琴葉ちゃんは六人を助けなかったの?」

「うん、華蓮様の話しだと、賊に呪縛を掛けたものが見張りにいて、

手を出せば勝手に死ぬから大丈夫と言っていた…

縛られている方が安全みたいだから助けなかった」


紗良は、少し安堵の表情を浮かべ、美優はにっこり笑う。


「あらー、可哀いそうな、賊さんね。

今頃見えない恐怖に恐れおののいているかしら、ウフ …

他に情報はないのかしら?」


「うん、親玉みたいのを見つけてきたよ」

「お手柄ね、どんな様子だったの?」


心なしか、美優は楽しんでいるようにも見えるけど …

琴葉の方はもう完全に、どや顔で話し出します。


「親玉は許無情っていうやつで、冷たい目が特徴的。

……

それと大麻を栽培していて、女たちを腑抜けにしているみたいで、

多分、朱色の建物は酒池肉林だと思うな―」


酒池肉林って…まあ、琴葉らしい言い方で、分かりやすいのだけど…

美優の方はそんな琴葉を理解しているのかニッコリ笑い頭を撫でました。


「琴葉ちゃん、ありがとう」

「エヘへ」照れ笑いする琴葉だった。


―――


「さあ、私達のやるべきことは決まったわ!」


一同が美優を見つめる。


「残念ながら、私達には借り馬十頭しかいません。

だから無駄な人選はできません」


一同を見回し人選を発表する美優。


「賊を蹴散らすのは華蓮に任せます。

私達は薬漬けになった人々を浄化することに徹します。


浄化隊は私と麓沙、尚香。

そして、星愛救出は紗良!」


紗良の瞳に青き炎が宿り、半月の弓を握りしめます。


「残り六人は、麓沙と尚香で、あなた達が歌舞がしやすい子を相談して選びなさい」


「承知しました」麓沙と尚香は息の合った返事をします。


……


「最後に碧衣、あなたはここに残りこの陣を守ってくれるかしら?」


「はい、承知しております」


「任せましたよ、碧衣」美優はにっこり微笑みました。


再び美優はみんなの顔を見回し頷き、凛々しい顔になりました。


「さあ、出るわよ … 出陣よ!!」




◆華蓮 -沙市まであと一里- ◆


「フフフフフ もう一人呪縛の罠にかかったわね …

あらあら、真黒な魂だこと」


関羽が華蓮の馬に寄せてきて声を掛ける。


「華蓮様!もう、沙市の明かりが見えてきましたぞ!!」


「さあ、関羽、張飛、趙雲、よくお聞きなさい!」


「ハッ!!」三人の男の息がぴたりと合う。

これが歴戦の勇者達、いえ漢の姿のなのよね。


「立つべき魂はすべて私が頂きましてよ!」

長い黒髪を馬に乗り、優雅に風になびかせて走る華蓮の姿に、

惚れ惚れする目を向け漢達が頷きます。


「よいか?主らはまだ転生できる魂を切ってはならぬぞ!

主らは槍の腹で私の呪縛に落ちなかったものの意識だけを奪うのよ!」


実のところ、それは尋常ならざる命令であった。。

普通の武将なら切り捨てた方がよっぽど楽なのに…


関羽が大きな声で叫びました


「華蓮様、承知しましたぞ!!」


「ウフフ、みんないい子ね。さあ行くわよ!」


―――


一気に、南州夜影賊衆の娯楽施設になだれ込む、

六人と十五頭の馬。


「何ごと ―」言葉を最後まで言わずに関羽の槍の腹で投げ飛ばされる賊。


本当に気絶だけで済ませる技量を持つ漢達。


賊の一人が半鐘をけたたましく鳴らす。


「カーン、カーン、カーン」


怖いぐらい一糸乱れぬ馬の蹄の音が賊たちに近づいていきます。

この音が、盗賊たちに恐怖を与えている様です。


直ぐに悲鳴と、土に放り出される賊の音

そして「ドス、ガス、ガシ」と槍の腹でたたかれる賊たちの音と、

「ドス、ガス、ガシ」

漢が槍を一振りすると、吹き飛ばされていく。


更に、額に華蓮の呪縛痕がある者たちは、

華蓮が睨むだけで全ての歯が痛み、

中には石に歯を打ち付ける者、痛みに耐えきれず自害しようとするもの、

阿鼻叫喚の地獄絵図を描いていました。


「ウフフフ、ただで死ねるわけないでしょ!

私が魂を貰わない限りは、あなた達はもがき苦しむのよ」


さらに、華蓮が指を立てると、苦しんでいた男達が紫の炎に包まれ、

灰と化し、さっき見ていた顔なのに記憶から消え去っていった。


「さあ、私達女三人は大麻草の畑に行きましてよ。

関羽、張飛、趙雲は伸びている男と、女子供をそこの広場に集めておきなさい!」


「華蓮様、承知しました!」大きな声で関羽が答える。


「この後、美優がくるから、後は美優の指示に従いなさい。

決して大麻草の畑には来ないでね…

私達これからいいことするのよ…ウフフフ」


と言い残し、華蓮、貂蝉、月英は大麻草の畑へと走り抜けていきました。


―――


大麻草の畑には許無情が震えながら立っていました


華蓮がにらみつけると重圧に耐えられず膝まづく許無情。


華蓮がつま先で無情の顎を持ち上げます。


「断絶神カレンドールよ、あなたと話すのすらつまらないわ」


真っ赤に染まった満月を背に、

あまりにも美しく、可愛いカレンドールが無情を見下しています。

無情は下半身を汚し震えるだけです。


静寂が永遠に続くかのように思えた時、

華蓮は、無表情で無情に告げました。


「このまま魂を絶ちなさい」


パチン!


華蓮が指を鳴らすと、無情の体内にあった華蓮の糸が分裂し全神経を刺激します。

この世の最高の激痛を味わい、無情は崩れ落ちます。

やがて紫の炎に包まれ灰となり土に帰っていきました。


真っ赤な月が怪しく、華蓮と、貂蝉、月英を照らし出し、

華蓮を見つめる月英の目は、好奇心から羨望の色に変化していました。


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

初めての投稿ですので、いただいたご感想や評価は次回作品づくりの大きな力になります。

■ 気に入っていただけたら、☆☆☆☆☆評価やブックマークをお願いします!

■ ご意見・ご感想はコメントへお気軽にどうぞ。

更新は木曜日、日曜日を予定しています。原稿たまりましたらそれ以外の日にも更新します。

引き続き楽しんでいただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ