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創世神話Ⅰ 女神たちが紡ぐ三千五百年物語  作者: ゆみとも
第一章 神婚の儀

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第28話 許都遠征 ~拉致された星愛達~


私は紗良一緒に美優に会いに行くことをお願いしました。

紗良は優しく微笑み、私のお願いを聞いてくれて、一緒に美優のもとまで、手をつないで来てくれました。


「ありがとう、紗良」

「何言っているの、私と星愛の仲でしょ。遠慮しないで」


その言葉に嬉しさを感じ、握る手にも力が入りました。


私は美優様の軍幕に入ると、人払いを頼み、思いのたけを打ち明けました。


「美優様、私、今回の遠征で軍師として抜擢されたけど ……」

「星愛ちゃん、全部言わなくても分かるわよ」

「美優様 …… 私どうしたらいいの?」

「そうね、もう答えが出たから私のところに来たんでしょ?」


美優は優しく微笑み、私は不安な顔で紗良の顔を見ると、

紗良は私の背中を押すように優しく頷いてくれました。


「私、戦の中心に立つのは向いていないことに気付きました」

「そうね、私達もあなたのお母さんが軍師だからと言う事で、軍師に抜擢したけど ……。

それ以上にあなたには力があることに気付かされたのよ」

「力ですか?」私は期待の目で、美優の優しい瞳を見つめます。

紗良が私の手を強く握りました。


「そうよ、星愛ちゃんは私達夢咲の中心に座り、みんなに安らぎを与える力」

「安らぎを与える力……」


私はその言葉を噛みしめるように復唱しました。

紗良はにっこり微笑み私を見つめました。


「星愛ちゃんの周りには、いつも笑顔の輪ができるでしょ?」


そう、私ものことに気付いてここに来たの … 、

私は美優の言葉に頷きました。


「誰にでもできる事ではないわね、どちらかと言うと妃良の様な役割かしら」

「妃良様の役割…?」

「ええ、みんなをまとめ上げ、国の方向性を決める役割。

みんなは星愛ちゃんを信頼しているわよ」


そうなの、どんなことかはうまく言えなかったけど、美優様が代弁してくれたんだ。

私は一気に将来が見えた気持ちになりました。


紗良も、美優の言葉を聞き笑顔で頷いていました。


美優は笑顔で手を叩き、「舞姫こちらにいらっしゃい」と声を掛けると、一人の可憐で美しい女性が現れました。


うーん、どこかで見た気がするけど…と、その女性を見つめていると紗良が驚きの声を上げました。


「えっ、嘘でしょ … 孫尚香!?」


その女性はゆっくり微笑み私達を見つめ、挨拶をします。


「美優様の聖女となった、孫尚香です。

私は舞の聖女として美優様にお仕えすることになりました」


えっ嘘でしょ、昨日までの尚香はどこに行ったの!?

キョトンとしている私と同じ顔を紗良もしていたのでしょう、

美優様は含みのある笑顔で私達を見つめます。


「間違えなく、孫尚香よ。私がしっかり聖女としての教育を夜な夜なしているのでね」


その言葉を聞いた尚香は頬を赤らめ、優しい面持ちになりました。


「そうね、船では星愛ちゃんの軍を率いてもらおうかしら …

星愛ちゃんは私と同じ船で、皆に安心感を与えてくれるかしら?」

「はい、みんなに安心と言う安らぎを約束します」


私は美優と話をしてよかったと思い、美優の軍幕を後にしました。


紗良が手を繋ぎ帰りの道を歩きながら、優しく言葉をかけてくれました。


「星愛はみんなの安寧の象徴だよ。私がしっかり星愛を守るね」


この時は、将来に向けての展望が開けとても幸せな気分でした。




この日の午後、私は美優様に頼まれ、漢口までの食料や生活用品調達のため、従者5人を連れて市場に行くことになりました。


弓の手入れをしている紗良に声を掛けました。


「紗良、これから美優様に頼まれた買い物に行ってくるね」

「えっ、じゃあ私も一緒に行くよ」

「大丈夫、従者5人いるし、紗良は武器の手入れが大切でしょ?」


紗良は一緒に行きたい気持ちと、軍の指揮者としての立場と葛藤している様でした。


「まあ、そうだけど … 何もないとは思うけど、何かあったらすぐに逃げなさいよ」

「分かっているわよ、それじゃあ行ってくるね」


なんか、渋々とした見送りに胸がざわついたけれど、大丈夫だと思わなくちゃ。

心に言い聞かせても、いつも一緒にいる紗良がいないことに一抹の不安を感じながら、

市場へと5人の従者と一緒に出掛けました。


私達は市場まで歩いていきました。


ガラガラ……


私達の横を、荷物を積んだ荷車が通り過ぎようとしたとき、

荷車から4人の男たちが飛び降り、私達の鼻に布を押し当ててきました。

他の従者を見ると、男たちが従者に後ろから鼻に布を押し当て、男たちの腕の中で崩れていくのが見えました。


ツーン、とした刺激臭…目を閉じまいと足掻きました…

でも、身体の力が抜け、意識が遠のいていきました……




◆賊の本拠地◆


目を覚ますと、そこは薄暗く寝所のある部屋でした。

ツーン、と鼻には微かに残る刺激臭が …

えっ、ここ知らない場所!?私は驚き、立とうとしましたが ……

ここで手足が椅子に縛られ身動きが取れないことに気付きました。


暗所にも目も慣れてきて、唯一動く目で部屋を見渡すと、

私と同じように5人の従者が椅子に縛られていました。


声を出そうとしましたが、喉がヒリヒリして出ません。


―――


そう、あの時、荷車から4人の男が飛び降りてきて、意識を失い ……

!? 私達、拉致されたんだわ ……




◆沙市の蒼翼艦隊陣営◆


私たちが拉致されて間もなく、頬はコケ、何日も洗われていない顔や衣類、そんな見すぼらしい姿の少女が陣営に現れたのでした。


手紙を受け取った見張りの兵士が手紙の内容を読む。

兵士は慌てた顔で少女の手を取り、美優の陣幕へと急ぎました。


―――――


蒼翼艦隊 司令官 殿


我ら南州夜影の賊衆、汝が率いる星愛卿と

その従者五名を手中に得たり。


人質の無事を望むならば、下記物資を

 ・絹 五百反

 ・戦馬 二十五頭

 ・塩米三十石

を夜明け前に東門の荷下ろし場へ携えよ。


遅延または密告あらば、人質は生存を保証せぬ。

これが最後の通告なり。


本書を携えし子供に返答を委せよ。


南州夜影賊衆 別働隊


―――――


美優は落ち着いた表情で手紙を読み終え、

少女ににっこり微笑みます。


「委細承知したと伝えてくれるかしら?」


少女はコクリと頷き、兵士と一緒に陣営を出ようとしたところで呼び止めます。

美優の目にはその少女の後ろ姿に、

戦乱の中に溺れる者の姿を見たのでしょう。


「ねえ、お父さんと、お母さんは?」


少女は首を左右に振ります。


「毎日、ご飯はしっかり食べているの?」


少女は人差し指を立てました。


「あなたに伝言を頼んだ人に、私の言葉を伝えたらここに帰ってきなさい。」


少女はニコリと笑うのを見て、美優が手を叩き尚香を呼びます。


――――


幕内に尚香が入ってくると、美優は手短に事情を説明しました。


「言いはね、賊たちに気付かれぬように、

この子が賊に伝言を伝えたら、この子と一緒にここに帰ってきてね。」


「賊の後は追わなくてもいいのですか?」


美優は尚香の頬をさすりながら耳元で囁きます。


「いいのよ、もう華蓮が近くまで来ているわ ……

彼女の人形劇を邪魔したらカンカンに怒るわよ。」


尚香は頬を朱色に染め、潤んだ瞳で美優を見つめ頷き、

少女の手を引いて陣幕を後にします。


尚香と少女が出ていくのを見て、美優が深いため息をついて呟きました。


「よりによって星愛を拉致するなんて …

紗良が黙っていないわ … さてさてどうしましょう」


―――


手を繋ぎ歩きながら、見すぼらしい少女に名前を聞く尚香。

少女は左右に首を振ります。


どうやら、父も母も知らずに、名もなくここまで育った様でした。


暫く二人が歩いていくと、少女は立ち止まり尚香を見つめました。

尚香は察して木陰に姿を隠します。


一人で歩きだす小さな背中を見送り様子を見ていると、

二人の男が駆け寄り、少女から伝言を聞いて顔を見合わせ、

繋いである馬に飛び乗り走り去りました。


残されて少女は尚香の方を振り向きゆっくり、でも、しっかりした足取りで戻ってきました。


尚香は少女を抱きしめ、頭を撫で優しく話しかけます。


「さあ、私達のお家に帰って、美味しいもの沢山食べようか?」


少女は初めて笑顔になり頷きます。

陣営に戻る二人に、昼下がりの陽光が温かく降り注いでいました。




◆宿場にて◆


公安郡から沙市までの距離は約二十二里です。

馬を休ませる必要もあるので、一般的には六日の旅路になります。

替え馬を引き連れた騎兵隊でも三日の移動になるのです。


しかし、華蓮の糸の神能を帯びた馬は、一日にして十八里を駆け抜けていました。

今は、一行は馬に休息を与えるために馬場に馬を入れました。


一同はゆっくり馬を降り隣の茶屋へと移動していきます。

神軍の衣を纏う女性陣は汚れ知らずですが、

漢三人の衣類には馬蹄の泥跳ね跡が残り、長い旅を物語っていました。


一行は隣の茶屋で、しばしの休憩を取っていました。


「兄者、信じられんぞ。わしは信じられん!」


「何を言う、張飛。いまさらではないか」


趙雲は二人の会話に耳を貸しつつも、

馬屋から聞こえる馬具を外す音を聞き、静かに茶を楽しんでいました。


「神能とは言えまだ一日だぞ、一日でここまで来たんだ」


「何も考えるな … 神は人知を超える存在だ」


……


趙雲は黙って頷き、再び馬を見ながら茶を楽しんだ。


……


一方の華蓮は腕を組んで静かに座り、何か考えている様子。


心配になった貂蝉が華蓮に寄り添い声を掛けます。


「どうなさいました?華蓮様らしからぬ難しい顔をされていますよ」


馬旅で疲れ、華蓮の膝に頭を乗せ横になっていた月英も華蓮の顔を見つめる。


「華蓮様もお疲れですか?私が身体を解しましょうか」


華蓮が我に返り口を開きました。


「私の糸をみなさんの神軍の衣に縫い付けているんだけど …

星愛と兵士五人の位置がみんなと離れた位置に居て動かないのよね」


「えっ、華蓮様は自分の糸の位置もわかるんですか?」


驚く英月の頭を優しく撫でながら言葉を続ける華蓮。


「しかもね、十八年前に私がばら撒いた呪縛の糸がうごめいているのよね…

これってどういうことかわかるかしら?」


貂蝉が華蓮の肩に両手を添えて、わざと息を感じる距離で話します。


「それわぁ、悪い奴らに星愛様達が連れ去られたという事よね」


華蓮の目に怪しい断絶神の火が灯ります。


「さあ、私と美優の合流の人形劇に、新たな波乱のご褒美ね。

嬉しいわ …… ウフフフフ」


そんな華蓮を見て貂蝉と月英が同時に呟きます。


「華蓮様 … 素敵です」


二人の鼓動の乱れが華蓮に感じられ、二人を抱きしめる華蓮。


やはり月英には華蓮の聖女になるべく素養があった様です。


華蓮は立ち上がり手を叩きます。


「琴葉ちゃん、こっちにきなさい!」


張飛の髭をいじっていた琴葉が華蓮の方を振り向き、

走り寄ってきます。


「華蓮様どうしたんですかー?」


「あなた、今から星愛のところに行きなさい…」


「星愛のところにー?何かあったの?」


「多分、悪い奴らにさらわれているのよ…

神軍の衣にはあなたの蜘蛛の糸も縫い付けてあるでしょ?

行けるわよね?」


「もちろんですー、それでどうするの?」


「星愛のいるところの様子を見て、美優に報告ね。

私達はこれから星愛のところに行くって伝えて … 


そうね、満月を赤く染め上げてみますわ … 

と言えば時間の見当もつきますわね」


「ほーい、行ってきまーす」


琴葉は蜘蛛の姿になり、小さな煙を残し、姿を消しました。


華蓮は関羽、張飛、趙雲を呼びます。


「さあ、行くわよ、これから楽しい人形劇の始まりよ …

ウフフフフ、フフ、フフフ、ウフフフフ …

私はカレンドールよ」


一同は馬に跨り、風のごとく宿場を後にしました。




ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

初めての投稿ですので、いただいたご感想や評価は次回作品づくりの大きな力になります。

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更新は木曜日、日曜日を予定しています。それ以外もたまに更新します。

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