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創世神話Ⅰ 女神たちが紡ぐ三千五百年物語  作者: ゆみとも
第一章 神婚の儀

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第27話 許都遠征 ~華蓮と黄月英~


◆江陵の蒼翼艦隊野営地 ◆


薄っすらと白み始める空の下、私は幾つもの竈で火起こしを楽しみながら働いていました。

その傍らには、紗良が両膝を抱え座って、私の働きを見守っていました。


パチパチパチ


薪が爆ぜる音が心地よいリズムとなって、静かな野営地に響き渡ります。。


紗良が感心したように私に話しかけてきました。


「星愛ちゃん、ほんと、火の扱い好きだよね」


「うん、私ね、火を見ていると、とても落ち着くんだよ ……

それに薪が爆ぜる音、火をつけた時の煙が、みんなに安らぎを与えているような気がするんだ」


紗良が周りを見ると、見張りの兵士たちが、無事に朝を迎えることができ、

安堵の表情で星愛の姿を見つめていました。


「ホントだね、星愛ちゃんには不思議な能力があるね」


「そうかなあ、私は炎の優しさを呼び起こしているだけなんだけどね」


やがて竈から立ち込めた白い煙が見えなくなると、私は、私の兵士達に声を掛けました。


「さあ、火の準備ができたから、四百五十人分の食事作るわよー」


「はーい」と明るい声が野営地に響き渡り、水餃子の準備に取り掛かる兵士たち。


私は真ん中に座り、じっと竈の火を見つめ、時折薪をくべて火の調整に徹しました。


餃子の中身は、干した筍、シイタケと鶏肉といったシンプルなもので、味付けは塩と香菜、そして星愛印の特製の臭豆腐でした。


「わあ、星愛様の朝食、美味しいのよね」と話しながら、目を覚ました兵士たちが、星愛と窯の周りに集まってきた。


紗良が、「星愛ちゃんは、みんなの真ん中で、笑顔を配るのが似合っているね」と、目を輝かせ私を見つめてきました。


私は竈の炎のためなのか顔を赤らめ、にっこり笑い、紗良に返事をしました。


「うん、ありがとう …… 私がみんなに安らぎを与えている間、紗良ちゃんは私を守ってくれる?」


と満面の微笑みで紗良に聞くと、紗良は耳を赤くしながら頷く。


「もちろんだよ、ずっと星愛ちゃんの横で守ってあげるよ」


――――


そんな二人の光景を美優と碧衣が眺め、微笑んでいました。


美優が「あの子たちは戦場向きではなさそうだけど、光るものはしっかり持っているわね」


と話すと碧衣も頷き、「私がしっかりみんなを守るから」と頷きました。


その二人の横を孫尚香が、「オッ、うまそうな匂いじゃないか!早速馳走になるぞ」


と言い、星愛達のところに走り出そうとしました。


ペシッ! ―― 白檀扇子が尚香の頭を叩き、襟首を掴みました。


尚香が振り向くと、にっこり笑う美優がいました。


「あら、尚香ちゃん、夢咲舞踊団の看板踊り子さんが …… はしたないわね。


―――


昨日の夜、ちゃんと聖女になるための教育をして差し上げたでしょ?


それとも、もっとして欲しいのかしら?」


美優の含みのある笑顔を見て、「ヒィ!」と声をあげ、頬を朱色に染める尚香。


「美優様 …… 」尚香は恥じらいの表情を見せ、みるみる耳が赤くなっていきました。


「そ、それは夜だけにして欲しいです」


「もうあなたは、私の聖女であり舞姫なのよ。そのことをお忘れなくてね」


「は、はーーい!」とじゃじゃ馬娘だった孫尚香が可愛らしい乙女の表情を見せていました。


その様子を見ていた、美優の聖女であり歌姫の麓沙が口下で手を隠し微笑んでいました。


――――


美優と尚香の一幕があったことは露ほども知らずに、私は兵士たちに水餃子を配膳しています。


「ねっ、紗良ちゃん、みんなが喜ぶ顔は気持ちがいいでしょ?」


「うん、でも、私は星愛の笑顔が一番だよ!

きっと、みんなもそう思っているよ」


星愛の作る人の集まりは、兵士たちに十分な活力を与え ……


450人の兵士たちはそれぞれの船に乗船し、沙市を目指しました。




◆荊州南部の公安郡◆


朝靄の中、幾頭もの馬の嘶きが響いています。


張飛の顔が喜びの声を発します。「オッ、連れて気おったわい」


と言いながら左肩に琴葉を乗せ、右手に蛇矛を持ち立ち上がります。

その姿、まるで親子の様でした。


「わーい、わーい、髭だるま。周りが良く見えますねー」


と、8歳らしい反応を示す琴葉でした。


それを見ていた関羽が思わず言います。


「お前ら、いつから親子になったんだ」と、笑いながら立ち上がり、その手には青龍偃月刀がしっかり握られていました。


劉備、孔明、華蓮、貂蝉も立ち上がり、嘶きの聞こえる方へと歩いていきます。


外では手に3mにはなる涯角槍を持った凛々しい漢が立っていました。


「劉備様、お待たせしました」


「済まぬかったな、趙雲 … 急な18頭の馬の用立て、ご苦労であった」


趙雲は両拳を頭の前で合わせ礼をする。


「この程度の申しつけ、この趙雲には容易いこと。

もったいないお言葉有難く存じます」


「趙雲よ、面を上げなさい」孔明の声が朝の空気に通ります。


趙雲が面を上げたところで、孔明は話を続けます。


「これから、関羽と張飛、そして主の3人で、ここいる華蓮様、貂蝉、琴葉 …… 

そして月英を護衛して欲しいのだ」


趙雲は貂蝉の顔を一瞥し、再び孔明を見、孔明は話を続けます。


「沙市まで、明日の夜まで届けられるな」


「ここにいる、関羽、張飛と一緒ならば容易いこと。

しかとお届する故、ご安心を」


劉備と孔明は安心の表情を浮かべ、「頼んだぞ」と声を掛け頷きました。


―――


「華蓮さまー、私も馬にまたがりますの?

私、華蓮様と一緒の馬がいいんだけどー ……」


上目遣いに華蓮を見る貂蝉の姿 … 普通の男ならすぐに了承しそうだけど …

華蓮は指先で貂蝉の顎を持ち、目を見つめ言いました。


「あら、貂蝉?あなたの女神様の言うことは聞けないのかしら? ……

もう、星の屑作るのは止めにしたいの?」


貂蝉は悲しい、不安な表情を浮かべ謝ります。


「華蓮様、それだけはお許しください。

この貂蝉、身も心も華蓮様に捧げています … 」


華蓮は表情を変えずに、貂蝉の頬を撫でながら言います。


「分かればいいのよ、馬に大人二人も乗れば直ぐに馬は潰れるでしょ …

この人形劇終わったら、沢山可愛がってあげるわよ、フフフ」


「ねえ、ねえ、髭だるまー … あの二人何しているの?」


張飛は大声で笑いながら、「さあな、儂らは見ない方がいいと思うぞ」


と言い、前に座っている琴葉の頭を撫でた。


―――


華蓮と貂蝉も別々の馬にまたがり華蓮が劉備と孔明を見て微笑みました。


「劉備と孔明よ、今回の用立て、本当に感謝しましてよ。

あなた方とはこれからも縁がありそうね … 

私の人形劇に気付いた可愛い、人形使いの坊やたち」


華蓮は感謝の言葉を残し、馬の腹を蹴ります。

馬は嘶き勢いよく走りだし、貂蝉、関羽、張飛、趙雲を乗せた馬と、その後ろには10頭の空馬が続きました。


「行ったな、孔明 … 我が陣営に欲しい女傑だったのう」


孔明は目を細め、「あの女傑たちは決して、我らの手には届かない高貴な方たち…

その気になれば、あの貂蝉ですら、容易く中華を統一、いや、滅ぼすのはた容易いでしょう」


二人は馬の土煙が消えるまで、走り去った方向を見つめ続けました。




黄月英の庵 荊州南部の公安郡


朝の柔らかい陽が美しい顔を包み、目を覚ます月英。

大きく伸びをして、布団から出ようとしたとき、その場に似つかわしくない18頭の馬が大地を蹴る音が遠くから聞こえてきました。


まだ夢心地の月英に緊張の糸を張り、月英は布団を払いのけ、

剣を手に取り仁王立ちになります。


みるみる近づいてくる馬の大地を蹴る音、

次第に庵が振動で震えるのが感じ取れ、馬の嘶きが朝の空気を震わせます。


月英は剣を構え、じっと開き戸を見つめています。


「月英!月英は居らぬか?」


関羽の声が月英を呼び、肩の力が抜けていくのを感じた時、開き戸がゆっくり開かれました。


「月英 … そんな剣を持って何をしているのかしら」


華蓮が問いかけると、月英は布団の上で力なくへたり込みます。


「華蓮様ではないですか、それに他にも関羽様もいらしているのですか?」

「そうね、他には、張飛、趙雲、それに貂蝉に琴葉」

「えっ、そんな大人数、この庵には入れません」

「月英は可愛いこと言うわね」


華蓮は月英の顎を指先で持ち上げ瞳を見つめる。


「これからね、月英も私達と一緒に許都に行くことになりましたの」


月英のうっとりした瞳が一変、驚きの瞳になります。


「華蓮様、ご冗談が過ぎます … 私を孔明から奪うつもりですか?」

「月英…そうして欲しいのかしら? ウフフ」


月英の頬はみるみるうちに朱色に染まり、耳は赤くなる。

華蓮は優しくこれからの事を伝えます。


「これから夢咲の蒼翼艦隊と沙市で合流して、許都を目指すのよ」

「えっ、許都ですか?」

「これは、劉備と孔明からの願いでもあるのよ。

許都で曹操の軍事力を見てきて欲しいと言っているのよ ……

さあ、準備しますわよ」


「えっ、か、華蓮様 …… はっ恥ずかしい」


赤らめた顔を両手で隠す月英を他所に、

華蓮は手際よく寝衣を脱がせ、美しい絹の様な肌を優しくなで ……


「ねえ、孔明に紹介したけど、惜しくなったわ …… ウフフ、

月英、あなた、私の聖女になる気はあるかしら?」

「えっ、それはどういうことですか?」

「その気になったら、教えて差し上げるわよ」


華蓮は優しく月英の顎を持ちあげ、唇を軽く重ねた。

みるみる朱色に染まる月英の頬 ……

そして瞳がとろけ、月英だけ時間が止まった様に見えました。


華蓮は自身と同じ紫地の神軍の衣を纏わせ耳元で囁きます。


「私の信頼できるものだけ纏うことが出来る紫地の神軍の衣よ。

さあ、出かけますわよ」


華蓮は両手で骨抜きになった月英を抱えそのまま馬に乗せ、

馬の尻を叩くと馬は走り出します。

我に返った、月英は悲鳴とともにしっかり手綱を握ります。


「キャーッ!?華蓮さまー、何をなされるんですかー!!」


「ウフフ、さあ私達も、月英を追いますわよ!」


華蓮は素早く自分の馬に跨り、腹を蹴り月英を追い始めます。

華蓮の流れる黒髪を追う様に貂蝉たちの馬もすぐに続きます。

みるみる、百戦錬磨の漢達の馬は離されていきます ―――


「コラッ!髭だるま、どんどん離されているよー」

「そう言うではない、琴葉よ、あれこそ鬼神の走りじゃ……」


関羽、趙雲の馬が張飛に近づき轡を並べ、初めて華蓮に会った趙雲が驚きの声を上げます。


「あれこそ、鬼神 … まさか貂蝉までもが …」

関羽が、「そうじゃな、あれは我が首を入れぬはずじゃ」

「キャッ、キャッ、早くー、髭だるま、早くー」とはしゃぐ琴葉した。


―――


いつの間にか華蓮を中心に左右を紫の神軍の衣を羽織る麗人が並びます。


「ねえ、月英、驚いたでしょ?馬が暴れず騒がず、走ってますでしょ?」

「はい、私、こんなに早い馬に乗るのは初めて…でもしっかり乗れるなんて…」

「私と唇を重ねた時に、月英に私の加護を少し分けたのよ…

聖女になれば、もっと別の世界が開けますわよ」


二人の会話を聞いていた貂蝉が叫びます。


「ずるいわー、月英と唇を重ねて、私にも華蓮様の唇をくださーい!!」


華蓮は微笑みニッコリ二人の顔を見て、後ろを見ます。


「あらあら、糸が届くなっちゃうわね…

さあ始めますよ、私の人形劇を」


華蓮の髪が伸び18本の糸となり、18頭の馬と結ばれます。

馬は、活力を取り戻し、みるみる一つの集団となり、

まるで、栗毛色の彗星のごとく駆け抜けていきます。


張飛が「こ、これが、神のご加護 … 赤兎馬以上の馬になったぞ!!」


驚く張飛の言葉に関羽、趙雲は頷くだけでした。


「華蓮様は凄いんですー、キャハッハッハ」


琴葉の笑い声を残し、一路馬群は沙市を目指します。


沙市までの4日間の旅が今、始まりました。




◆沙市入り(蒼翼艦隊)◆


沙市の昼下がり、大きな城壁に囲まれた沙市が見えてきました。

兵士たちは自然と笑顔になります。

浄化の機能を持つ神軍の衣を纏い清潔を保っていたとしても、

長年の習慣は抜けません。

やはり女子、早く陸に上がって湯あみを楽しみ心身をリフレッシュさせたいようです。


へへへ … ここは私の出番です。

今回の旅で、何となく私の居場所を見つけた私、

私が作るお湯池ではしゃぐ、女子たちを想像し、ニンマリしてしまいました。


桟橋が見えてくると、どこからともなく行商人たちが集まってきます。

何となく手を振りたくなるのでしょう、手を振る兵士もいました。


静かな波の音を残し、船は滑る様に船着き場に入っていきます。


ドン!


船着き場に当たる船の振動も最小限でした。

みんな、この旅で成長しているのを実感しました。


紗良が先に船から飛び降り、私に手を差し伸べてくれました。


「星愛、こっち」


私は紗良に手を引かれ桟橋に飛び移ります。

紗良は私をしっかり抱きしめてくれました。


(紗良も、いつの間にか大人っぽくなったようだ)


私はにっこり笑い紗良を見つめます。


―――


美しい漢服姿の女性だけの集団です。

あっという間に人だかりができました。

その人だかりの中心に全員集まり、各隊ごとに整列しました。

整列したところで美優がゆっくり歩いてきて、全員の前に立ち話します。


美優の可憐な衣の裾が風に揺れ、優しい香りを漂わせている様でした。


「みなさん、ここまでお疲れ様でした。

ここで、華蓮将軍と4日後に合流する予定になっています。

それまでは、交代で休日とします。

あまり嵌めは外さぬようにお願いします」


兵士たちは満面の笑顔を見せます。


その人ごみの中、二人の男がニヤケながら夢咲の兵士たちを値踏みする様に見ていました。


「おい、こいつらこんなところに来やがったぜ」


「おうよ、4日もいるみたいだし、貰えるものを頂いちまおうぜ」


「ホントにこいつら運がないな … まさか、俺らの拠点にのこのこ足を運んでくるなんてなあ」


「まずは、お頭に報告だぜ」


足早に走り去っていく男達でした。



ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

初めての投稿ですので、いただいたご感想や評価は次回作品づくりの大きな力になります。

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次回更新は8月10日(日)を予定しています。引き続き楽しんでいただけると嬉しいです!

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