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創世神話Ⅰ 女神たちが紡ぐ三千五百年物語  作者: ゆみとも
第一章 神婚の儀

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第22話 カレンドール


私は澪の肩をゆすり、何度も呼びかけました。「澪!澪起きて、澪!」


私の声は空しく、アテナ神殿内に響くだけでした。


「どうして、どうして、着いてきちゃったの。どうして、いつも一人になっちゃうの?」


紗良、琴葉、琥珀、碧衣、瑠璃は黙って下を俯いているだけでした。

そしてその後ろにいる神、カレンドールに初めて気付きました。


「えっ、どうしてあなたが?なんでカレンドールあなたがここにいるの?」


カレンドールは黙って私の瞳を見つめ、ゆっくりアテナの祭壇を指さしました。


「えっ、この青い神核はアテナの神核なの?」と、サラが尋ねるとカレンドールは頷いた。


そして同時に、アテナの姿が3D映像で表示されます。


「よう、みんな元気していた?どうやら私の試練は乗り越えたようだな」


私は澪を見て、「澪が返って来ないの、どうしたらいいの?」


アテナはにっこり笑い、「安心しな、星愛達が見てきたのは、創世神話の内容を経験してきただけなのさ ――

それに、澪のこの先の記録は創世神話には残っていないんだよね」


「アテナ姉ちゃん、じゃあ澪はどうなっているの」と琥珀がアテナに尋ねる。


「おう、我が愛弟子、元気だったかい?

星愛と紗良が宇宙神になるには、後三つ試練を乗り越える必要があるだろ?

その試練の中にもう一度、澪が出てくる ―――

そして、その試練を乗り越えることで、澪にも宇宙神なる権利が与えられる―――

だってそれだけの苦労を人としてしてきたんだもんな」


「ちょっと、アテナ、その試練ってどの試練なの?

それに、今、澪の意識はどこにあるの?」


私が質問すると困った顔でアテナが答える。


「試練の内容を話すのは禁忌に触れちゃうからね、話せないよ。

ただ澪の意識は教えることが出来るよ―――

外にスーパーコンピューターとサーバーが並んでいただろう?

あの1/4は創世神話に使われていて、その中に存在している―――

澪は仮眠状態と一緒だよ」


琴葉の目が輝き「やっぱり、そうだったんですね。創世神話尊いですねー」とスマホに頬を摺り寄せた。


「さて、君たち澪のその先を知りたいかな?」


私達は黙って頷くと、「カレン、こっちに来てくれるかな?」


アテナが祭壇の前に来るようにカレンを呼んだ。


「仕方ないわね、まあ、私も澪は嫌いじゃないし協力してあげる」


カレンが祭壇の前に座ると祭壇からヘッドギアが出てきて、すっぽりカレンの頭を包む。


「私嫌なのよね、見た目格好悪いでしょ?お願いだから早く済ませて頂戴ね」


―――


カレンが2700年前の記憶を呼び覚ますと、創世神話より画質の落ちる2Dの画像が表示された。


どうやら、甲板の後ろに走っていくシーンからの再生の様だった。


「おーい、みんなたまには本土に遊びにおいでー。それにコハク、あんた夜中に私を起こしに来てトイレ付合わせていたけど、もう一人でトイレ行きなさいよー」と叫んでいた。


コハクの顔が赤くなり、私達は顔がほころぶ。


(あの時、こんなこと言っていたんだ)


船員が話し合っている。「おいおい、船の上の海鳥いつもより多くないかい?」


「ホントだ、これじゃ帆を操作するのにも邪魔になりそうだし、このフン見ろよ、どうにかしてくれよ」


ミオと一緒に丘を見ていたカレンが振り向いてマストを見ると、所狭しと海鳥が羽を休めていた。


名残惜しそうに丘を見つめているミオに話しかけるカレン。


「ねえ、ミオちゃんおかしいと思わない?この海鳥、きっと何かあるわよ」


ミオは後ろを振り向き、驚愕の表情になる。


「後ろ、後ろ!山のような波がこっちに向かってきている」


「こっちに来るんだ」ライオスの太い腕が二人を抱え、自身のトガを脱ぎ解き、二人を抱きかかえる様にトガごと巻き付け、更に、船の手すりに巻き付けぐたりの頭を抱えた。


大波の第一波が船を襲う。

船は滑らかに30度の角度で波に乗り、第一波を乗り越える。


臓器がひっくり返るのではと思うほどの勢いで波の山を落ちていった。


(うっ、声が出ない、神威を発動するか…いや人界で使うのは…止めておこう)


カレンは神威を発動するのをやめた瞬間、船が海にたたきつけられ、船も人も悲鳴を上げる。


そして、何も摑まらずに立っていた者は全員船から放り出された。


ライオスも背中を手すりに打ち付け、苦悶の声を上げる。


「ライオス、しっかり」カレンはライオスに励ましの声を掛ける。


続いて、二波が襲ってくる。


舵取りの腕がいいのか、船は波を横切る様にかわしつつ、頂点に達し、落ち行く。


またもや船は悲鳴を上げたが、悲鳴を上げる者は海に放り出され、残った者はしがみつくことに全神経を集中し、悲鳴を上げる者はいなかった。


船が海に打ちつけられるとライオスは再び苦悶の声を上げる。「グフッ」


徐々に波は収まり、凪いだ海に戻った。


「ふう、やっと落ち着いたわね」カレンがライオスとミオに声を掛けた。


「ライオスさんありがとう」とミオがライオスに抱きついた瞬間、今度はアクエス島から轟音が聞こえた。


後ろを振り向くと島があったと思われる場所から天に向かい白い煙が噴き上げていた。


「嘘でしょ」ぽつりとミオが呟いた。





◆アテナの神殿では◆


私がモニターを見ながら呟きました。


「これって、地震が発生して、それに誘発して火山が爆発。それかその逆の事が起こったって言うの?」


カレンが頷き「紀元前700年の頃は地震も津波も認知されていなかったけど、間違いなく地震で津波が起きたのね。火山が先か、地震が先に起きたかは不明だけど…」


紗良が悲しい顔でモニターを見ながら、


「私達は噴火の事は知らなかったと言うことは、私達は津波で亡くなったんだね」


琥珀が心配そうに聞きます「ひょっとして生存者は無しだったの?」


「うん、そうよ。この後、船でアクエス島に戻ったのだけど、地獄絵図だったわ。

星愛、紗良、琥珀、琴葉には知り合いもいたでしょ?―――」


「アクエス島に戻った時の私の記憶は見ない方がいいわね―――」


「良いわね、アテネ?」アテネの3D映像が頷くと、暗い空と白い煙を噴き上げている海を背にして、船が本土に向かっている映像が映し出された。





私は声を掛けた「待って、カレンと澪が経験したこと、私達も共有した方がいいと思うの―――

だから見せて」


カレンは他の5人の顔を見渡すと、皆真剣な表情で頷く。


「あらま、断絶神の私が残酷というのだから、本当に残酷な思い出よ。

でもいいわ、あなたたちが望むなら見せてあげる」


そして映像が暗い海と、白い噴煙を噴き上げているアクエス島があった場所に向かっている船の映像となった。


◆紀元前700年前のアクエス島跡の海上◆


私は映像を見て目を見張りました。


アクエス島があったであろうと思われる場所は白い噴煙を噴き上げていました。


船が白い噴煙に近づくと、火山灰の量が増え、水温も上昇してきた。


真黒に煤けた海鳥や島鳥が、あっという間に甲板を埋め尽くした。

そして、水温が異常上昇しているためか魚が浮いて漂い、

更に近づくと子供の靴や、衣服、建物の残骸が流れています。


そして、カレンが神眼の神能を発動したのでしょうか、映像がズームアップします。

私と紗良は目を見開きます。

そう、2年前の『炎月星紡ぎの舞』で着た巫女服が浮いていました。


「ねえ、船員さん、あそこまで行けない!」と巫女服が見えた方向を指さすカレン。


「もう、これ以上は無理だね。ここから先は地獄の入り口でさあ…」


ライオスさんがカレンとミオに声を掛けようとして、止めました。

多分掛ける声が見つからないのでしょう。


船がゆっくり島があったであろう場所を背にします。

カレンが空を見上げるとテイア、ティア、ミューズが天空に浮いていました。


カレンはミオの見守りをライオスに頼んで、物陰に隠れてから天空に舞い上がりました。


ミューズがカレンに声を掛けます。


「ティアとサラ、コハク、コトハは無事に天界に戻れたから、今回の事を転生門の管理者のオーディンに報告しないといけないの―――


だから、導き神としてミオを見守ってくれないかしら?」


暫く白い煙を噴き上げる海を眺め考えるカレン………


「宜しいです、ミオの事は見守りましょう。でも、本音を言うと自信がありませんのよ。


(項垂れ、座り込むミオを思い出すカレン)


だって、あまりにもこのアクエス島の人たち、そして無くなってしまったアクエス島を愛していたのですから―――


何かあっても責任はとれないことを理解していただけまして?」


ミューズが「分かっています。私が側にいても危険なことは変わりないと思います。どうかあの子に間違えを起こさないようにお願いしますね」


言葉を言い残し、3神は光の尾を残し天空へと消えていった。




カレンは静かに船上に戻ると、ミオは両膝を突いて顔を甲板に向けたまま微動だもしません。


さすがのカレンもライオスと同様に掛ける言葉が見つからない様です。


ミオの頭が少し動いたかと思うと、甲板に落ちていた木の破片を手に取り喉につきたてました。


カレンは咄嗟に「ダメ!」っと声を掛けた瞬間、


“キーーーン”


音がし、『転生神の番人』である、アルティメットが現れました。


周りの時間が止まり、神だけが動ける状態です。


「チッ、遅かったか…糞爺」珍しくカレンが悪態をついていました。


カレンを一瞥したアルティメットにカレンが歯を食いしばる。


「老いぼれ神、また私の楽しい時間を台無しにしに来たの?用が無ければさっさと帰れ」


「珍しいのう、カレン嬢。嬢がそんな口を利くなんて子供の時以来じゃ―――


余程、ミオいや創造神ミレイアを気に入ったんであろうな」


ミオは転生中に自殺をしてはいけない禁忌を犯していたのです。

禁忌を犯した今、ミオは神の記憶を取り戻しています。


「ミレイアよ、もう神の記憶は取り戻したな?

主は転生して自殺をしようとした―――

もう分るな、3000年人界で暮らしてもらうぞ」


ミオは黙ってうなだれていた。


「嬢よ、嬢は導き神としてミレイアを見守れ。

但し、見守りだけじゃ―――

まあ、可愛い孫娘にそんな目で見られると辛いのう――

よし、50年に1日だけ会うことを許そうぞ」


「ミオは自殺をしようとしていない、甲板を掃除していただけよ」


「もう良い、さてどこに飛ばそうかのう……」


アルティメットが指を鳴らした瞬間、知らない街に二人は立っていた。





◆アテナの神殿の祭壇の前◆


カレンはゆっくりヘッドギアを外し、髪の毛を整えながら私達を見つめる。


「お話はここまででいいかしら?――」


私が「カレンちゃんが澪ちゃんにご執心だったから、この先も気になるんだけど……」


「というか、カレンちゃん黒羽華蓮だったのー!?」


「そうよ、気付くの遅いわね。


ずっと、澪の事は見守ってきたのよ――


と言うか、私と澪の話しよりあなた達の試練の方が大切でしょ?」


「うん、そうなんだけど……」私はもっと知りたい気持ちと格闘しています。




琥珀が「ねえ、華蓮嬢はどうしてここにいるの、私、そっちの方が気になる」


「琥珀ちゃん、嬢と言う呼び方は御止めになってくださいな」


琥珀が舌を出し苦笑いする。そして、華蓮が話しを続ける。


「いえね、風羽が今は銀鏡星には断絶神は必要ないけど、輪廻転生を始めるとすさんだ魂が生まれるようになるから、それに澪も行くって言うから……

澪ちゃんの導き神として放っておけないでしょ…だから一緒行こうかな…と、思ったのよ」


華蓮の頬が薄っすら朱色を帯びた。


紗良が口を開く「そう言えば、ムルドに神能を与えた時に4枚の葉の紋様を背中に刻んでいたでしょ?」


華蓮がニヤリと笑い頷く「さすが察しがいいですわね、きっとサラちゃんは月詠みの儀式に使う紋様も似ているとでも言いたいのかしら?」


「うん、ひょっとして、澪に月詠みの儀式を教えたのは華蓮なの?」


華蓮は頷き「風羽がね、どうしても創造神の力が欲しいと相談がありましてね。そうそう、私、断絶神だから、自由に天上、地上、冥界の三界を行き来できますでしょ―――

この学園のお仕事もたまにお手伝いしてるの」


紗良が「それで、澪に私達が夢咲学園にいること、そして、月詠みの儀式についても教え、この学園に呼び寄せたという事なんだね」


「ええ、そうよ。私と澪ちゃんは50年に1日だけしか話せない。でもね、2700年以上見守ってきたのよ。当然、魂を弄ぶことはしないのは分かっていたから、月詠みの儀式について教えたのよ」


私は「それで、私達と銀鏡星に一緒に行ってもらえるの?」と聞いたら、ニコリと笑い頷く。


「ところでさ、なんで地上層には華蓮の像が無いの?」琥珀が華蓮に尋ねた。


「フフフ、私は断絶神です。魂を力の糧にしている。だから祈ってもらう必要もありませんし、信者を持つ必要もない。自由気ままな女神なの。おわかり?」


「うん、そう言う事だったんだね」琥珀は納得した表情で、頷く。


アテナの3D画像が「そろそろ、私は屋上にある、星愛と紗良の神殿に行かせてもらうよ。残り、3つの試練も乗り越え、しっかり神婚の儀を済ませてくれよ。そして私を産んでくれるのを待っているよ」


アテナの映像が消える直前、私の腹部に北斗七星の形の光が浮かぶ。


「ほら、私の本当の姿はまだこの世に存在していないの」


そう言い残し、3D画像は消え、青く光る神核は天井をすり抜け屋上へと向かっていった。






私は皆を見回し「さあ、第二層を目指しましょ」と声を掛け、皆が頷く。


華蓮が大切そうに澪を抱きかかえ終わるのを待って、第二層を目指し歩き出す。


新たに断絶神である華蓮を仲間に加えた8人は、アテナの神殿を後にしました。




ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

初めての投稿ですので、いただいたご感想や評価は次回作品づくりの大きな力になります。

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23話は7月24日22時を予定しています。引き続き楽しんでいただけると嬉しいです!

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