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創世神話Ⅰ 女神たちが紡ぐ三千五百年物語  作者: ゆみとも
第一章 神婚の儀

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第20話 それぞれの役割


太陽が昇り、どんな人にも平等に光が降り注ぎます。

ただ、断絶神の糸に繋がれた者たちは、舞台で踊り、物語を紡ぎます。

やがて、断絶神に睨まれた者の糸だけが切れ、深い深淵に魂を捧げ、砕け散る運命なのです。


映像を見ていた華蓮が呟きます。


「人形は揃ったわ、リハーサルはお仕舞い。これより人形劇が始まりますわ」


怪しく光る銀の糸の先を見つめる、華蓮、碧衣、瑠璃の3人だった。




◆アクエスの街の中◆


早朝のアクエスの石畳をいそぐ二人の神官の姿が見られた。

一人は引き締まった身体、精悍な顔立ち、目に紫の炎を宿したライオス。

そしてもう一人は腹の出た身体、脂ぎった顔に、背中には大きなやけど傷を残したムルド。

行先はアクエス神学校のバハド校長の邸宅だった。


邸宅の前に立つムルドとライオス。

暫く待つと、玄関から使用人が現れた。


「ムルドだ、こちらのアルテミス神殿本部神官のライオス様の紹介に来た。通させてもらうぞ」


使用人は深く頭を下げ一旦下がる … 暫くすると、再び使用人が現れ、ムルドとライオスは邸宅の中に招かれ、客間に通される。

使用人と入れ替わる様にバハド校長が客間に入って来た。


「おはよう、ムルド神官長。今朝は、こんなに早く ……」


話し始めるバハドのことは構うことなく、ムルドはカレンドールの神能を発動させる。

ムルドの背中の3枚目の葉が紫色の光を宿し、瞳が紫色に輝きを宿すと同時に、ムルドの前でバハド校長が驚愕の表情で跪き、そして、首を垂れ、やがてその瞳に紫の光を宿した。


「ひ、ひひ、ほれ、こうしてくれるわ!」


ムルドの蹴りがバハドの腹を貫く。


「校長などただの飾りだ!」と声が神々しい轟きに変わる。


その瞬間、バハドの瞳が一瞬輝き…だが、すぐに紫に飲まれる。


「あはははは!どうした?この腐れ校長、何か言うことは無いか?えっ、どうした?何か言いたいか?ほれ、どうした?愉快、愉快」


悔しさにまみれるバハド校長を心のゆくまま、辱めた後、バハド校長を立たせ、3人で再び町の石畳の道を歩き出す。

そして、3人はアクエス領主の館の門の前に現れ、バハド校長が用件を伝えると、そのまま館の門を通され、中庭を通り、屋敷に入っていった。

バハドがいつもそうしているためか、誰も3人を止める者はいない。そのまま、病で床に伏しているアクエス領事の寝室へ入っていく3人。


驚いた表情で3人を見つめるアクエス領事も直ぐに、その瞳に紫の光を宿した。


ライオスの指が無意識に動き、空中に何か文字を刻んでいる。

それはカレンの蜘蛛の糸の動きに似ていた ……




◆温泉を堪能して帰路につく星愛たち◆


私達は楽しいひと時を過ごし、心も身体も充実させて神学校宿舎へ足を向けていました。

今回のお披露目に参加した学生たちはみな希望に満ちた表情で、話しは8月の『炎の奉納』に向けての話で盛り上がっています。

私とサラは腕を組んで、今までと違う距離感を感じていました。

サラのツインテールが無意識に私の肩を撫でるように絡みます。

街ゆく人々も私とサラ、学生たちを祝福しているような錯覚を覚えながら、サラに話しかけます。


「サラちゃん、本番まで3か月以上あるけど、私達の舞、もっと上手になるかなあ…」


「うん、初お披露目の出来が最高だったから、これ以上って想像できないけど…」


サラが何気なく私の手を握り、指を絡ませる。


「ねえ、本番も一緒に踊ろうね」と笑うが … その言葉がなぜか胸に刺さる。


「お二人さん。私の設計した舞台はこれから作られるのよ。

コロシアムと二つの神殿が舞台になる大掛かりなものよ。初お披露目の時より何倍もの演出効果が生まれるんだから」


「ははは、澪ちゃんの創造力には感服するけど、それを作って、操作するのは私達なんだよ。私達も頑張るからね!」


笑顔で話すコハク、髪飾りの鈴が『炎月星紡の舞』のリズムで鳴っている様です。

琥珀が元気に話すと、他の5人の生徒たちも笑顔で頷きます。

それを見ていたカレンが取り残されてはいけないと思ったのか、楽しそうに言葉を続けます。


「何を言っているのかしら、皆さん。私の作った衣装の事も忘れないでね。今度はもっとたくさんの糸を紡いで、星愛の炎とサラの矢が妖艶に交わる様に演出して差し上げますわ」


生徒たちの笑い声が、無意識に『星紡ぎの歌』のハーモニーになりました。

歌の調べに合わせ、木々の葉が金色に輝き、道が光の絨毯と化す。

まるで自然が私達を祝福しているようでした。


私はサラの肩に頭を預けぽつりと独り言を言う。


「ずっと、このままでいられればいいのにな」


聞こえたのか聞こえないのか、サラがそっと私の頭を撫でた。

その後ろでは口元が緩んだカレン。


(あら、力が … 全部の葉を使い切ったみたいね … ウフフ … 糸が絡んだ先は……もう、ほどけないわね)




◆アルテミス神殿巫女の宿舎◆


宿舎にはテミス、テイア、ミューズとロクサ、と4名の巫女が席を一緒に話し合いをしていた。


「さて、カレンドールの人形劇が始まったはね。

劇の中での私達の立ち位置を確認しないと、先走る女神が出ると困るのでね」


カレンに愛着があるのか少し柔らかい口調でテイアが話すと、テミスが口を開く。


「まあ、伽巫女を使っていろいろ悪事を働いてきたし、あの男には丁度いいのよ。

私がここに来るまでに何人の巫女たちが涙を流したか考えると、許されることではないわね」


ロクサが不思議に思い質問します。


「あ、あの…カレンドールとは誰の事なんですか?」


「カレンちゃんは断絶神なのよ。人の子が言う悪魔、死神っていうところかしら。でも、とても優しくて思いやりのある子なのよ。だからロクサさんはここにいるわけですし…ね?」


ミューズが優しい口調で答えるとロクサが「人の子…人の子ですか?」。


ぽかんとしているロクサを見て優しい口調で話す。


「そうよ、神から見ればあなた達は人の子なのよ。

実はね、私達は神なのよ」


更に意味の分からなくなるロクサを見かねたのかテイアの聖女である巫女のミリアがロクサの頭の中に話しかけます。


(そうなんですよ。だから、今起きている事、これからどうなるかは見当がついています。

地上界にいる時は神威を消し、神能を使わないので…)


驚くロクサを見て、テイアがロクサに優しく伝えます。


「お分かり?さて、これからの事ですが、ムルドはライオスさんを引き連れて神殿に帰って来るでしょう。そこで、予定通りテミスはローマ本部の副神官長けんアクエス支部の神官長に任命される」


「テイアさん、どうしてそんなことが言いきれるんですか?」と聞くロクサにミューズが変わって答えます。


「私ね、地上の役割の一つに転生してく琴葉ちゃんをお腹に宿す役割があるんだ。

今回ね琴葉ちゃんは4回目の転生で、4回も神核が触れ合っているのよ。だから見えるようになってきたの。

そう、禁書の聖女が持つ『創世神話』そしてその予測がね」


ロクサの湯呑みが突然浮かび上がる。ミューズが苦笑。


「あら、私の感情が漏れたわ」


テイアが素早く指を弾き、紅茶の水滴を空中で停止させる。


「もう、ミューズちゃんったら、おいたが過ぎます…ロクサさんが困っちゃったじゃない」


テミスが少し渋い顔になり話します。


「ちょっと、そんなことやっても何のことかロクサさんには分かりませんよ。

ごめんね、ここでは神様の神能と思ってもらえばいいわ」と慌ててフォローするテミス、そして厳しい顔で皆に伝えます。


「私達は静観するだけで…多分、少しだけテイアの力が必要になるかもだけどね。

事が起こるのはまだまだ先よ。

取り敢えずは任命の儀が終わったら、事を静観します」


テイアがまとめ会合が終わろうとしたところでミューズが一言付け加えます。


「ねえ、ロクサちゃん、いま、私の聖女の席が空いているのだけど、聖女やってみない?

今回の件であなたならできると確信持てたの。

それに私達の秘密も知ったしね」


ロクサは深くお辞儀をし、少し考えさせて欲しいことを伝え、話し合いはお開きになりました。




お昼前に、アルテミス神殿では辞令の交付式が行われた。

アルテミス神殿の巫女であるサラも呼ばれた。

夕方に紗良がアクエス神学校の寄宿舎に帰ってきた。


私達はサラの周りに集まり事例の交付式について聞いてみた。


「私のママ(テミス)がアルテミス神殿本部の副神官長兼アルテミス神殿支部長になって、悪い噂の絶えなかったムルド神殿長はアルテミス神殿本部付けになったわ」


「良かった、子供の頃12歳になったらムルドと結婚するっていう噂とかあったから心配していたんだ」


私は心からの気持ちをサラに伝えると、サラの耳が赤くなっていたのを目敏いコハクが見つけ、サラの赤い耳を指さしました。


「ねえ、ティアちゃんがムルドよりずっと優しくて良いって思ってるでしょ?」


サラの目が潤む。


「でも…あの時……テミス様が私を守ってくれたから」


(あら、ムルドは神官の名前もないから半分首になったみたいね)ティアに憑依している私が呟くと…


(だから危ないのよ、言い換えれば自由に動けるという事ですわね。人形劇のクライマックスは8月10日の夜で決定ですわね)とカレンが私に教えるように話した。




8月の最初の満月の夜まで後、3か月。

ここからは、それぞれの役割を理解している子供達は、舞台を作り上げていきます。


澪は『炎月星紡の舞』の舞台作りに余念がありません。

コロシアムの舞台から、アルテミス、ヘスティア神殿の仕掛け、またその途中の仕掛け作りの設計図を仕上げ琥珀に託します。それが終わると半月弓と矢の調整に取り掛かりました。


コハクは生徒を引き連れて、舞台作りを指揮していました。

実際、コハクとは学校と宿舎以外で会うことが無くなるほど忙しかった様です。


そして、カレンは私達の本番用衣装作りをミオと共同でしていました。


「だから、私の糸はこれ以上長くすると、ティアやサラだと扱えなくなるわよ。絡まって転ぶのが落ちよ」


「えー、そこを何とかできないかな。もう少し長いと、ティアの炎が遠くに飛ぶようになるんだけど…じゃあ短くして数を増やすのは?」


「まあ仕方ないわね、それならできるけど。また糸を仕込み直さないと…ブツブツブツ…もうミオちゃんは注文が多いんだから」


と言いながらもミオの注文には妥協案を考えながらカレンも応え、なかなかいいコンビになっています。


そして、「星紡ぎの歌」を歌わせて欲しいと、ミューズ芸術院より申し入れがあり、承諾されました。6月の最初の休日にミューズ学長が40人の生徒を引き連れ、アクエス神学校にやってきました。


(あれ、やっぱり今日も学長出てこないな。ミューズ学長が来訪しているのに、お身体の調子が悪いのかな…)


とティアが考えている時に、ミューズとカレンが話していました。


(ねえ、ミューズ。その女の女官はあなたの連れなのかしら?)


(初めまして、聖女ロクサです。カレンさんにはムルドの件では助けられました。ありがとうございました)


(ムルドね、そう言えばあの人形はそんな名前だったっけ…ていうか、ミューズちゃん!あなた、ムルドの件って4月にあった件でしょ。まだ、二月も経ってないのでは…随分ご盛んなことで)


(ロクサちゃんが事件から1か月過ぎて、突然、私のところに来たのよ。

もうその日から私の聖女にしちゃった。

聖女にしたらね、彼女の歌声が覚醒しちゃってね………炎の奉納が成功したら「歌姫」の称号を与えようかと思っているのよ。)


(だって、ミューズ学長、寂しかった私に毎日優しく声かけてくれたから、だから…)聖女になったロクサが頬を赤らめポツリ。


(面白いはね、この人形劇は見ていて飽きないわね。フフフ)とカレンは言葉を残しミオのところに軽やかに歩いて行った。




私とサラの練習に芸術院の生徒と神学校の生徒の歌声が練習に拍車を掛けました。

私の炎はサラちゃんの心を燃やす程熱く、

そしてサラちゃんの青い冷たい光が炎を優しく包み私を導いてくれます。

半月弓から放たれる矢が3本に割れ温かい炎の灯りを放ち、

カレンの糸が炎を操り、衣装からは星の粒子が散り、

見ている人の心を浄化し、温もりを与える様でした。


練習が終わり、サラちゃんの顔を見ると涙が浮かんでいました。

何故だろう、私も涙が出てサラちゃんの顔が見えなくて、

サラちゃんの胸に顔を埋めました。

サラの汗がオリーブ油灯のように温かく甘く香りがし、とても落ち着きました。




後ろの方から手を叩き近づいてくる音がしました。


「あっ、ママ」満面の笑みがこぼれ私はテイアに抱き着きました。


「なかなか、良かったね。明日は休んで、明後日に備えなさい」


そしてテイアはサラの方を振り向き白い矢を渡しました。


「もし何かあったらこの矢を使いなさい。この矢も3本に割れる矢だから、迷わず射抜きなさい」


珍しく、テイアはとても厳しい顔でサラに矢を手渡しました。


「はい、確かに預かります」サラも真剣な表情になり矢を預かりました。




少し離れた位置でカレンが一人で私達の様子を見ていて口元が緩みます。


「最後のカギが、アルテミスに渡されたわね。明後日はどんな劇になるか楽しみだわ」


神殿を照らす、オリーブ油灯の明かりと、満月に近くなった月明かりが、

神学校の神殿を怪しく照らしていました。






ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

初めての投稿ですので、いただいたご感想や評価は次回作品づくりの大きな力になります。

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本日22話まで投稿を予定しています。引き続き楽しんでいただけると嬉しいです!

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