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第02話 私達の出来ること


教室に戻る途中、私は紗良と一緒に心の中を整理しようとしました。

私は「もし本当にそんなことが起きているなら、

どうにかして助けられる方法があるといいのだけど……」

と独り言のように言いました。


紗良は私の手をしっかりと握りました。

「きっと、解決策はあるはずだよ。

私たちにできることで、少しでも力になれたらいいよね」


「ねえ、紗良、このまま教室に戻るのは話が聞かれているようで嫌だから、

少し生徒会室に寄ってこれからのこと話していこうよ」

「うん、そうだね。

生徒会室だったら嫌な気配は感じないし、少し話していこうか」


毎日、何かしら用事があり、いつも居る生徒会室に入ると、大分落ち着きました。

窓を開けて、外の空気を入れて校庭をぼんやり見ます。

今起こっている事とは正反対の穏やかな景色が広がっています。

春を感じられる陽と相まって、嫌なことを忘れさせてくれないかなと思っていましたが、

紗良の言葉で現実に引き戻されました。


「ねえ、星愛ティア、私達は気配の出どころは分かっているよね。

それに、気配が動いているから間違えなく、

嫌な気配の持ち主はその生徒の中にいるはずだよね」


私が黙ってうなずくのを見て、紗良は話を続けます。


「廊下側の後ろの席の5人のうち1人が気配を出しているはず」

「そうね、でも疑いの目を向けるのはあまり気持ちが良い物ではないわね。

それに、魂を何に使うのか、皆目見当がつかないし、

私は魂の存在自体疑問を持つわ」


紗良が「ホントだよね、人には魂があってそれを抜かれているなんて、

悪魔か邪神の物語に魂食らいとかの名前で出てきそうだよね」と話し、私が続けます。

「それに、これから魂食らいを探します、みんな動かないで!

何ていえないよ、空港で感じたあの嫌な気配は本当に寒気がするほどだったから、

そんなこと言った時にはクラスの誰かの魂が無作為に抜かれるかもね」


紗良は腕を組み神妙な面持ちなり、

「クラスのみんなが人質って感じだね」と呟きました。


紗良は腕を組み、眉間に皺を寄せて真剣な眼差しを浮かべました。

「クラスのみんなが人質にされている状況なのよね」

と、静かな声で呟いた。

「でもママの話だと、私たちの手が及ぶレベルの問題じゃないわ。

それに、私達の話を聞いたから、ママ達は何らかの手は打つと思う…」


ほんの少し間を置いて、私は言葉を続けました。

「不明確なことばかり悩み続けるより、まずは私たちにできることを考えた方がいいかも。

対応は学校に任せて、私たちの手の届く範囲でこれからの対策を」


そう提案すると、紗良は少しだけ肩の力を抜き、

「それも一理あるわね。今後のことを話し合おう」と頷いた。


お互い考え込む沈黙が流れた後、私が口火を切りました。

「まずは私たちの身を守ることに集中するべきだと思う」と伝えると、

紗良は深く頷き、

「特に瑠璃は狙われる可能性が高いのよね」

と腕組みをしたまま指摘しました。


「ねえ紗良、早いけれど…試験前合宿を今すぐ開始しない?

メンバー全員を集められる状況じゃないけど、瑠璃には今すぐ参加してほしいの」

と提案すると、紗良は黙って私を見つめ返しました。


「星愛、それはいい考えだね。

瑠璃の家は神社だし、今回の件は理解を示してくれるんじゃないかな…

それに、星愛の家は学校敷地内にあるし、そこから学校に通って、いつも三人一緒にいた方が安心だしね」


紗良の言葉に、私と紗良の表情が同時に明るくなります。

「瑠璃も気配感じているでしょ?

瑠璃は神社の巫女をしているから、昨日の夜には家族にも話しているんじゃないかしら。

もしかしたら、良い情報があるかもしれないし、3人で話し合えば 何か良い案が浮かぶかもね」


紗良が力強く頷き、

「じゃあ、早速、瑠璃に話さないとね」と言いました。

私も頷き、生徒会室を後にしました。


私と紗良は手を握り、廊下を急ぎました。

教室が近づくにつれ、空気に微かな不穏な震えが走るのを感じました。


教室につくと、私は神楽坂瑠璃かぐらざかるりに声をかけ、

少し驚いた様子の瑠璃の手を引いて、中庭まで連れて行きました。


「紗良、もう嫌な気配は感じない?」と私が聞くと、

紗良が頷いたので、テーブル席に座り一息入れてから、私は瑠璃に話しをしました。


「ねえ、さっきホームルームで、空港の事件があった時から、嫌な気配を感じていたって言っていたけど……

実は私たちも感じているの」


瑠璃の瞳が微かに輝きました。

彼女は私たちの手を両手で包みながら話し始めます。


「そうなんだ、仲間がいてホッとしたよ。

私ね、小さい頃から巫女の修練を積んできたためか、『気』みたいなものが視覚化できるんだよ」


瑠璃は微笑みながら指でフレームを作り私達を見ました。

微笑みが消えて、フレームの中の眼が私と紗良を凝視します。

「なんちゃって、こんなことしなくても気は普通に見えるんだけどね」


「人の『気』は黄色が多いんだけど、 あなた達の気の色には、

純白の粒子がわずかばかり見えて…」


私たちは同時に息を呑んだ。

瑠璃の言葉が、中庭の空気を凍りつかせます。


「それって、どういうことなの?」と私が尋ねると、

瑠璃は手甲を指でなぞり…


「ごめんね、変なこと言ってしまって…まだ確証はないんだけど、

父の話だと、純白の粒子は神や神の使い、あるいは神に繋がる存在の『気』らしいの」


その瞬間、紗良と私の瞳が交差しました。

私たちは、「クスッ」と顔を見合わせて笑いました。


紗良が「私と星愛が神様に関係するなんて、それは無いと思うよ…

もしそうなら、今回の事件もスムーズに片付けられたはずだし」


瑠璃の少しがっかりした表情を見ながら、

私はあることが気になり質問してみました。


「ねえねえ、気の色が分かるっていう話みたいだけど、

嫌な気配の人は色が違うんじゃないのかな?」


瑠璃は思い出すようにゆっくり話します。

「それがね、狡猾と言うか何というか、

空港で黒い気を見た後は全く気を出さないというか、

嫌な気配はあるのに、気をコントロールしているのか、

同じ色の気は教室では見ないのよね」


紗良が眉をひそめ、「黒い気って何の気なの?」と尋ねると、

瑠璃が私と紗良の瞳を見て、

「黒い気は邪神の気よ。 ごく稀に、人にも同じ気がある人はいるけど…」


冗談なのか本気なのか分からない答えが返ってきました。


部屋の温度が一瞬下がった感じがし、瑠璃の意味深な言葉を理解しようとして…

私と紗良は言葉を失い、頭の中は拒否するかのように混乱しました。


一体何が起こっているのか…

この予期せぬ「邪神」という言葉の意味が掴めずに…


「あっごめんね、邪神なんて言われると、

何やら得体の知れぬ者で、頭の中混乱しちゃうよね」

と苦笑する瑠璃。


紗良が瑠璃の顔を覗き込みながら尋ねます。

「でも、何で嫌な気配がある中であんなこと言っちゃったの?

もう、目を付けられたんじゃない?」


瑠璃は恥ずかしさを隠すように微笑みながら答えます。

「ええ、あの時は嫌な気配をずっと空港から感じていて、

クラスの友達たちのことが心配になり、

黙っていられなくなっちゃって言っちゃった。もう完全な失敗ね」


瑠璃は少し頬を赤らめながら続けます。

「その後は授業中でも、トイレに行くときも、

殺気のようなものを時々感じて、 密かに結界を張っていたけどね」


突然、瑠璃の表情に影が現れました。

その表情を見て…

(もし紗良が隣にいなければ、私も瑠璃と同じ行動を取っていたかもしれない…)

と私は考え、自分の無謀さと、そう考える自分に複雑な気持ちを持ちました。


そんな私に、紗良は真剣な眼差しを向けて…

冷静さを失わず、的確な判断を下す紗良の言葉。

その声には、いつも不思議と安心感が宿っていました。


紗良が理事長の話を伝えると、瑠璃の瞳が真剣な光を帯びました。


紗良は合宿の提案を瑠璃にします。

「ねえ、瑠璃、状況が深刻なの ――

2週間後の試験までに、 いつもやっている試験前合宿を、今すぐ始めない?」


瑠璃の表情が少し明るくなり、私が話を引き継ぎました。

「試験前合宿とはいっても、私たちには特別な意味があるの。

お互いを支え合い、励まし合う時間。

私の家は学園敷地内だから安全だし、私たち3人一緒なら、相手も甘く見ないはずよ」


瑠璃は頷き、放課後に瑠璃の家と紗良の家にお泊りセットを取りに行くことになりました。




◆放課後◆


「あっ、瑠璃ちゃん、こっち!」

後を付いてくる者がいないか確認のため、私と紗良が正面通りを外れた小道で待ち合わせました。


「気配は感じない? 紗良、瑠璃」

と私は尋ねましたが、 二人は首を横に振りました。


「残念だけど、もしかしたら黒い気が ――

自分たちを悟ったのかもね」と紗良が苦笑いを漏らします。


三人は夢咲学園のモノレール駅へ向かいました。

歩いているときに、私は足下の影が揺れる感じがし、一抹の不安を感じました。




ここまで読んでいただきありがとうございます。


初めて小説を書いて、投稿した作品です。


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