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創世神話Ⅰ 女神たちが紡ぐ三千五百年物語  作者: ゆみとも
第一章 神婚の儀

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第17話 アクエス神学校


◆7歳の頃 アクエス神学校進学の時の出来事◆


別荘の生活は快適でした。

あっという間に7歳の年齢が見えてきました。

子供たちは自由奔放に生活をし、3人の絆は深まっていきました。

そして、あっという間に6年が過ぎようとしている。


(ねえ、澪ちゃん、神能が封印されていても、

何かその神の性格っていうか、神意みたいのは出るのね)


(そうね、星愛は一人になると、必ず土間か風呂焚き場に佇んでるし。

じっと火の番をするその姿は、竃の女神の本質を如実に表しているわよ)


琥珀が澪の話しの後を追います。


(そうだよね、それに料理や風呂焚きの腕前はアクエス島一で、

使用人たちも舌を巻くほどって使用人たちが言ってたよ)


私は澪に続き琥珀のことを話しました。


(そうそう、琥珀なんかは、使用人を兵士に見立てた戦争ごっこに夢中だし。

策略を練り、陣地を築き、勝負に執念を燃やすその様子は、華やかに鼓舞をし、多彩な戦術を用いる姿が正に陽彩の聖女だよね、澪ちゃんはどう思うかな?)


(うん、戦争ごっこより、使用人を使うのは上手いよね。だって、アクエスパパが言っていたよ、琥珀が指示出すと、みんなテキパキ動けて、持ち場の指示も適切だって)


琥珀が笑いながら、昨日の花火事件の話を始めました。


(澪ちゃんはこの別荘の周りにいろいろ仕掛けを作っているけど、昨日なんか夜中に花火が打ちあがって何事かとみんな大騒ぎだったよね)


私は昨夜のことを思い出し、不安な気持ちになった。


(そうだよね、変な人が網に引っかかって大変だったね。)


使用人と親しくなった琥珀が自慢げに話しはじめます。


(そうそう、使用人の話だと、今日はそのことで、テイアとミューズ、アクエス領主、バハド神官長がそこの岬に集まって密談するみたいだよ)


さらに、琥珀は声のトーンを落として話しを続けます


(何でも、家の中では壁に耳ありだから、岬の外れで密談するらしい。

何か重大な話があるんだろうな。)






蜘蛛の糸は神々の会話を静かに紡ぐ。

岬の風に揺れる巣が情報を伝え、情報収集を目的とした「コトハ」の意思と「琴葉」の意思はいつも一緒。


「むふふ、どこでやろうともこの琴葉様には話は筒抜けよ」


話を切り出したのはムルド神官長だった。


「昨日の男、やはりアルテミス神殿の神官だった」


テイアは眉をひそめ、岬の向こうに広がる海を睨みながら静かな口調で話す。


「我々の子供達の噂はアルテミス神殿まで届いている様ね。

アルテミス神殿はローマ帝国の勢力を背景に、我々を脅かすつもりかしら?」


ムルド神官長が続ける。


「アルテミス神殿の総本部はローマにあり、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの帝国発展の波に乗って、

アルテミスを崇拝する信者の数が相当増えているみたいですよ」


ミューズが口を挟む。


「それに、サラの弓の能力はアルテミスが降臨したと言われる程って聞くけど…ムルドさんの耳にも入っているかしら?」


ムルド神官長は頷き、前を見据えて落ち着いた口調で話し始めました。


「間違いなく、幼少ながらこの島一、いえ、ローマ帝国一の腕前ではありますな。

私もアルテミスが降臨したのではと思いましたよ」


アクエス領主は相槌を打ちながら話を付け加えました。


「そしてこの島に本部を置くヘスティア神殿にも、火の扱いや家事全般に優れたティア、

創造力に秀でたミオ、戦術や人を励ますのが上手なコハク。

それぞれがヘスティア、ミレイア、アテナかニケ、はたまた陽彩の聖女が降臨したと言われているな。

島民の噂は止まることを知らない」


ミューズが心配そうに話す。


「4月から学校に行く予定だけれども、昨日の件もあるし、あの3人、本当に大丈夫かしら...

自由奔放な3年を過ごしたから、他人の怖さを知らないわ。

心配で胸が締め付けられる…」


テイアもミューズに相槌を打って言葉を続ける。


「あの3人も神が降臨したと言う噂が広まって、この島はヘスティア神殿の総本山だかから、ティアにはヘスティア様が降臨したと大騒ぎになっているみたいね…


…それに、ヘスティア神殿の信者が多いのは事実。

成績を上げてローマ本部に栄転したいムルド神官長にとっては、まさに目の上のたん瘤だわ」


ミューズが付け加える。


「今回侵入したアルテミス神殿の神官は、武器らしい武器は所持していなかったみたいだけど、誘拐や命を脅かすことも想定した方がいいと思うわ。」


3人はミューズを見つめて頷づき、ミューズは更に話を続けた。


「3人は他の同年代の子と関わることを非常に楽しみにしているわ。

如何なる理由であろうと3人の意思は尊重したいの…

でも、馬車で通うには時間がかかるし、やっぱり入寮するのが一番よね…」


アクエス領主が少し考え提案した。


「うちの女兵士を3人ずつ、9人を神学校の職員として配置して、神殿からは巫女を世話役として1人ずつ護衛に付けるのはどうかな?」


一同、同意してアクエス神学校には寮から通学し、人とのかかわりの機会を増やすことにした。






◆アクエス神学校の入学式の日◆


神学校は町の中心地にあり、別荘からは片道30分くらいの距離だった。

ティア、ミオ、コハクは真新しい制服に身を包んで、アクエス神学校までの道のりを、外景色を楽しみながら移動していた。

馬車は3人の子供達の希望に満ちた声で満たされ、ゆっくり移動していった。


馬車が正門前で止まると、柵の向こうに白い大理石の校舎が見えたてきた。

校章が陽に輝き、新入生たちの賑やかな声が風に乗って聞こえてくる。


私はテイアママと手を繋ぎ、ミオとコハクはミューズと手を繋ぎ、正門をくぐっていった。


最初に目を引いたのは、人だかりができている掲示板でした。


(ああ、クラス分けの掲示かしら。

夢咲学園の頃が懐かしいな)


「あっ、あれ何かしら!」


コハクはミューズの手を振り解き、金色のリボンが風に舞うように駆け出した。

足音が石畳を軽やかに叩き、周囲の視線を一瞬で集める。


「えっ、ちょっと待ちなさいよ、コハク!」


ミオも手を振り解き、コハクの後を追う。


「あらあら、うちの子ったら落ち着きのない」


ミューズが呆れたように呟く。


テイアは私の顔をじっと見つめ、ふわりと微笑んだ。


「ティアちゃんは行かなくていいの?」


「うん、だってあの二人が教えてくれるでしょ」


ティアは落ち着いた口調で、ニコリと笑い答えました。


(この子ったら、まったくお姉さん気分なんだから)


憑依している澪と琥珀の叫び声が頭の中で響いてきた。


(うっそー!)


更に、


(やっと見つけたー)


脳裏を駆け抜けるのは、懐かしい紗良の声だった。

(あんたたち元気だった?……星愛は一緒じゃないの?)


私とママとミューズはゆっくり歩き、掲示板の前にいるミオとコハクに追いついた。


目線がゆっくりと銀髪のツインテールの子に移る。


サラは銀色のツインテールを揺らしながら、月明かりの様な青い瞳でティアを見つめた。


「初めまして、金髪セミロングでルビーのような赤い瞳のあなたは…

ティアちゃんだよね?よろしくね!」


差し出された手は弓の修練のためか少し硬く、そして月明かりの様な神秘的で安心感を与える不思議な手だった。


ティアはその手を優しく握り、微笑んだ。


「初めまして、銀髪ツインテールで瞳の青いあなたは、サラちゃんでしょ」


サラはルビーの様な赤い瞳に飲み込まれそうになり、頬を赤く染めながらにっこり笑う。


(あら、ホント、紗良ちゃんは7歳でも可愛いのね)


ティアの視線がテミスに移る。


ティアは背筋を伸ばし、優雅にお辞儀をするその姿は、まさに女神ヘスティアの風格を宿していました。


「初めまして、ティアです。

テミス叔母様、よろしくお願いします」


声の奥に宿る懐かしさを、テミスだけが気付いたかもしれない。


(うん、うん、さすが生徒会長の前世、挨拶も堂に入っているね。関心、関心。


…と言ってる場合じゃなくて、女神テミスに紗良!会えて良かったよー)


私はやっと紗良に会えたことと、サラの母として法と掟の女神テミスが側にいて、とても安心しました。


戦争ごっこ好きのコハクが直ぐにサラに目を付けます。


「ねえ、ねえ、サラちゃんって弓使いが凄く上手って聞いているけど、今度、私に見せてくれないかな?

神学校で私が指揮官としてサラちゃんを使ってあげるからね」


(何言っているの、このコハク!私のママを使ってあげるだなんて、100万年早いわよ!)


琥珀は心の中で拳を振り上げ、コハクの無神経な発言に赤面している様だった。


「ええ、良いわよ」


サラは涼やかな青い瞳を細め、アルテミス神殿の神官らしい威厳を漂わせた。


「あなた達とは友達になりたいし、お手柔らかにね。」


ミオが好奇心旺盛な目でサラ尋ねる。


「お二人とも楽しそうで何よりですこと。

ところで、サラちゃんは弓と矢はこの神学校に持ってきているの?」


「うん、持ってきているわよ。

修練は毎日欠かせないからね」


「ちょっとさあ、その弓と矢、後で見せてくれないかな?

弓と月の神様の神殿がどんな弓使っているのか知りたいの」


「ええ、良いわよ。

月弓の模造品だけど、なかなかいい弓と矢なのよ。」


サラは余程弓術が好きなのか、楽しそうに答えた。


澪が紗良に尋ねる。


(ねえ、ねえ、月弓って、私が700年前に18歳のお祝いで作ってあげたあの神器だよね)


(そうよ、でも澪に作って貰ったのは神器でしょ。

人が作るものとは比較にもならないけど、

人が作ったものとしての完成度はかなりのものだと思うけどね)


(ふーん、そうなんだ……)


澪は胸の奥で小さなため息をついた。

700年前に自分が作った神器と比べられるのは、誇らしいような、寂しいような…

期待半分、残念半分の気持ちが渦巻いた。


そこに、ティアが突然サラの腕をがしっと掴み、膨らませた頬で二人の会話に割り込んだ。


「二人でサラちゃんに質問攻めするのは止めなさい!

サラちゃんだって、きっと緊張しているんだから。

この後、話す時間はたっぷりあるでしょ。

それより、早く教室に行こうよ!」


サラはティアの突然の接触にぎゅっと目を細め、耳まで真っ赤に染まった。

アルテミス神殿の高貴な令嬢としてこんな無防備な姿を見せるのは初めてかもしれない。


ティアはサラの照れにお構いなしに、腕を引っ張り歩き出す。


「ちょっと、ティアちゃん、教室の場所は知っているの?」


ミオが慌てて呼び止める。


「あっ!」

ティアは叫んで立ち止まり、サラと見つめ合う。


二人はぽかんと顔を見合わせ、次の瞬間「あはははは!」と声を揃えて笑い出した。


女神の笑い声は校舎の廊下に軽やかに響き、通りかかった生徒たちも思わず微笑むほどだった。


「全くあなたたちは何をしているのかしら。さあ、教室に行くわよ」


微笑みながらテイアが言う。


女神テイアと女神テミスと女神ミューズに続き、

女神ティア(ヘスティア)と女神サラ(アルテミス)と女神ミオ(ミレイア)、そして星愛と紗良の子の聖女コハク、ティアの肩には蜘蛛の姿の聖女コトハが乗っていた。


(地上界の人が本当のことを知ったら、多分、腰を抜かすだろうな——)


憑依している私は少しニヤケた。


そして、教室に入った。

これから退屈な入学式とこれからの生活についての説明会が始まる。






入学式は星愛や紗良たち憑依女神たちにとっては、

あまりにも退屈な物だったので、もっぱら近況報告会となった。


私がアルテミス神殿の怪しい動きが気になり紗良に話しかける。


(ねえ、紗良。アルテミス神殿は私達の別荘に偵察を出すとか、大丈夫なの?)


(あぁ、あの件ね。私も知らなかったわ。

ただ、ムルド神館長はあの日は血相を変えていたわよ)


女神テミスが口を挟む。


(あの件はムルド神館長が腹心に命じてやったことなのよ。

アルテミス神殿は紗良、あなたの信者の集まりでもあるから、みんながみんな、ムルド神館長のような人っていうわけでもないのよ)


(そうよね、私の信者だから、しっかり私の教えを行っているものの方が多いわよ。

高潔で気高く、気品ある狩猟と月の神の信者なんだから)


紗良は胸を張り、まるで自分がアルテミスの広報官のような口調で宣言した。


(ねえねえ、それ自分で言うかしら?)


澪は心の中で呆れ顔で紗良をチラリと見やり、舌をちょいと出した。


(でも、ムルド神館長って相当のくせ者のような感じがするけど…)


私は紗良のことが心配になり呟く。


(そおね、実はこの神学校にも入学させる気はなかったみたい。

サラを手元に置いて洗脳教育をするつもりだったみたいだけど、私達の聖母派閥が猛反発して、やっと入学させることが出来たのよ)


テミスは深いため息を吐き、窓の外に広がる校庭を見つめた。

その瞳には、母親としての無力感と怒りが渦巻いていた。


(そして、私の弓術が一流だとしても、彼にとっては奇跡を起こさないと意味が無いと考えているの。

この島はヘスティア神殿の聖地…

それなのにアルテミス信者を半数以上も集めるなんて、まさに神々の領域に刃向かう行為よ)


(そう、その奇跡を持って、サラを12歳で自身の妻として迎え、本土のアルテミス本神殿に返り咲き、神殿長となることがムルド神官長の望み)


テミスは一旦話を止め、深い呼吸をして話しを続けた。


(そして、奇跡が起きなかったとき、ムルド神官長は何をしでかすか分からない。

これはまだ私の想像ではあるけど、ティアの命を奪うか、それに等しいことをムルドはするでしょう。

何故なら、ムルドにとってはそれが一番確実な方法だから)


法と掟の女神としての威光が、テミスの青い瞳から迸る。

一瞬、講堂の空気が神聖な炎で焼かれ、無意識に跪きたくなる圧迫感が出席者を襲った。


父親たちの喉が締め付けられ、女子学生たちの指先が氷のように冷たくなった。

講堂に広がった静寂は、まるで時間そのものが止まったかのようだった…


が、何も無かったことに人々は気付き、直ぐに入学式の式典は継続された。


式典も無事終わり、寮の部屋割りが発表されました。

ティア、サラ、ミオ、コハクの4人全員が同じ部屋になりました。


(これ絶対に、テイアとミューズとテミスが何かしたわよね)


「わぁー!嘘みたい!私たちみんな一緒ね!」


ティアはサラの両手をぴょんぴょんと跳ねながら握り、目をきらきら輝かせ、抱きしめ、頬を寄せました。


「学校生活楽しみだね!」


サラは突然のティアに抱きしめられぎゅっと目を閉じ、耳まで真っ赤に染めました。

アルテミス神殿のお嬢様らしくない自分に戸惑いながら、それでも嬉しそうに微笑んだ。


この夜は、4人で楽しい神学校生活を夢見て、話が咲き乱れ、なかなか寝付けない夜となった。

夜が深まるにつれ、4人の会話も次第に途切れ、幼い寝息が部屋の中に溶けていった。

月明かりがカーテンの隙間から差し込み、並んだベッドの上で小さな胸が静かに上下する。


明日からは、神学校生活が始まるのだ。


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

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今日は22話まで投稿を予定しています。引き続き楽しんでいただけると嬉しいです!

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