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創世神話Ⅰ 女神たちが紡ぐ三千五百年物語  作者: ゆみとも
第一章 神婚の儀

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第16話 アクエス島での新たな旅立ち


私の神核はアクエス島のヘスティア神を信仰する神殿の巫女に宿り、10か月後、私は誕生した。

初めて見るママの顔に、“えっ、ママ?”と私は驚いた。

そこには夢咲学園高等部の灯里芳美理事長の顔があった。

ここでも同じ母親から生まれたのだ。


そして、重大なことに気付いた。

“嘘でしょ、光と視覚の女神テイアが私のママ!?

えー、テイア叔母さんから私は生まれていたの!?”


私は本当に驚いた。

胸が高鳴り、頭の中で疑問が渦巻いた。

どうして私と紗良は、他の神と比べて、使える神能が異常に多かったのだろう?

私はある推測を立てた。


多分、私の神核をテイアがお腹に宿している時、テイアの神核と私の神核が触れ合い、私の神核は胎児のようにテイアの神威を受けていたのだ。

そして、私は、竈と家庭、光と視覚の神意を組み合わせた神能が使えるようになった。


(ひょっとして)


私は夢咲学園の校長の顔を思い浮かべ気付く。


(えっえー、月弓校長は法と掟の女神テミスじゃない?!)


そう、紗良は月と弓、法と掟の神意を組み合わせた神能持ちの女神となっていたのだろう。


(自分自身でも、私と紗良が他の神より多くの神能を持っていて不思議だったんだよね)




一方、アテナの神殿で転生の様子を3D映像で見ている瑠璃と碧衣。


「ねえ、みんな生まれたみたいね、瑠璃」


「そうね、転生では天界と人界の繋がりは全て断ち切られると言われているけど、そんなことは無かったのね」


転生先の様子を興味津々に見ている二人。


微笑みながら、星愛と紗良の二人が生まれたシーンを見ていた。


「ねえ碧衣、星愛がヘスティアを信仰する神殿の巫女の子として、そしてそのお母様がテイア様だなんて、何か話が出来過ぎだと思うでしょ」


「うんうん、それに、紗良はアルテミスを信仰する神殿の巫女の子。それも母がテミス様だなんて、こっちも話が出来過ぎだね」


「ねえ、碧衣、二人とも自分で自分を信仰することになるんだけど…転生門ってオーディンが作ったのよね…

………

…これってさ、オーディンは今の状況を見越していたんじゃない?」


「そうね、その可能性は否定できないわね」


「そして、澪と琥珀は領主の一人娘に宿ったみたいだねって、ねえ、碧衣子の一人娘ミューズじゃないの?」


二人は顔を見合わせ、互いの驚きと興味を共有した。


そして声を合わせて、「それに琴葉ちゃん!?」


「瑠璃、あの子は何よ、転生先でも天使の様に飛び回っているの?」


「うん、これが多分、琴葉が禁書の聖女と言われている所以だと思う。

そして、いつも星愛と紗良の側にいる理由なんだね」


「瑠璃ちゃん、何一人で納得しているの?私にわかる様に説明しなさい」


「琴葉は禁書の聖女として、星愛と紗良の行動を常に記録しているんだね。

その記録が禁書に残され、未来の神々に伝えられるのよ…

………

私達が見ている映像は、多分、琴葉の禁書の映像。

言い換えれば、琴葉目線の映像なんだね」


「だから、琴葉の映像が無いのね、ここに帰ってきたら琴葉に確認しないとね」

と3D映像を見ながら碧衣が呟いた」


琴葉がいない理由を教えてもらい安心した表情の碧衣。


3D映像は場面が切り替わり、領主らしい衣服をまとった男と、白地に炎のシンボルを描いた法衣を着た男、白地に弓と月のシンボルを付けた法衣を着た男の三人が話し合っている映像が映し出された。

その映像は、まるで過去が現在に蘇るかのようだった。


「良かった、てっきり一生分の映像を見せさせられると思ったけど、要所、要所で映像が切り替わるみたいね」


と、ほっとした表情で呟く碧衣。


「そうね、彼女たちの一生分の映像をこの神殿で見続けるのは嫌よね」


と、瑠璃も苦笑して答えた。

二人は、映像が切り替わることに安堵していた。


そして映像を真剣な表情で見る二人。




領主の様な男が困惑したように口を開いた。


「まさか、うちの島で4人も父なし子が同じ日に生まれるとは思わなかった」


炎のシンボルを付けた神官着を着た男が頷きながら続いた。


「そうですね、子供達ももう4歳になるし、そろそろ顔合わせをしてもいい頃ではないのかな?」


その二人をあざ笑うかのように、月と弓のシンボルを付けた神官着の男が言い放つ。


「私は、うちの巫女のテミスが授かった子は神の子と信じてはいるが、あなたたちの子が神の子とは思っていない。

そもそも、父無しの神の子がこの小さな島に、しかも一度に4人生まれることは断じて無い。

どうせ、親に話せないような男との間に出来た子供に違いない。

話合いなんて時間の無駄だよ。私は神事があるからこれで帰らせてもらうよ」


月と弓の冷たく言い放つと、席を立ち、部屋から出て行った。


 ………


部屋は沈黙に包まれ、やがて領主らしき男が口を開いた。


「バハドさん、やっぱりアルテミス神殿のムルド神館長は、神の子の名声を自身の神殿に集めたいみたいだね」


「アクエスさん、ムルドさんはローマ本土の大神殿へ栄転したい気持ちが強いようだからね」


領主執務室の分厚い革張りの椅子に深く腰かけ、バハドは琥珀の入ったグラスを傾けた。


アクエス領主は窓枠に肘をつき、 遠く雷雲が湧く水平線を険しい表情で見つめていた。


「アクエスさん…子供たちのことを考えると、神の子は一緒に育てるのがいいと思うのだが」


バハドが指輪を回しつつ提案すると、 アクエスはふと笑みを浮かべた。


「では岬の別荘で母と子を隔離しよう。

7歳までは神の心を養い、人智は封印する——私の祖母もそう育てられた」




時は経ち1週間後


ヘスティア神殿から遣わされた双子の巫女は神事を執り行い、アクエス家の護衛たちは常に刀に手をかけていた。


私とママ、付き添いの巫女はロバに荷物を載せて、歩いて別荘を目指しました。


歩いて、半日くらいの距離、4歳の子供の私にはきつく、ロバの背中に揺られての移動でした。


淡い期待を抱いているティアに憑依している星愛が呟きます。


(4歳のティアはかなり緊張しているみたいね。

まあ、私も4歳のミオとコハクに会えるのは楽しみだから、ひょっとして、心の中の女子高生の澪と琥珀と意思疎通できるかしら…ずっと話し相手が欲しかったんだよね)


 ………

(あっ、見えてきた、見えてきた。何かわくわくするわね)


切り立った崖の上に建つ白亜の別荘が青い空に映えて見え、遠くには積乱雲が、穏やかながらも不穏な予感を孕んだ日々が始まりました。


玄関ではミューズとコハク、ミオが手を振って私達を出迎えてくれました。


(コハクとミオは4歳で、でも何となく女子高生の琥珀、澪に顔立ちにているわね。

それに、ミューズは天界の時と変わりなさそうね)


(えっ、ちょっと待ってよ、ミューズって、あの芸術の女神9姉妹が作った女神じゃない)


(静かにしなさい、星愛ちゃん!

実はね、あなたの心の声は生まれた時から聞こえてたの。あなたは、多分、試練を受けてる最中かしら?)


(えっ、テイアママ、私の声が聞こえるの?)


(神だから当たり前でしょ。

但し、話しはできるけど歴史は変えられないわよ。

だから、聞こえていたけど私はずっと黙っていたんだけどね。

これだけ神が集まると黙っていられないからね。

そうそう、あなた私にひどい悪態を言ったこと全部覚えているからね)


ニコリとティアの顔を見て笑うテイア。

笑われたティアは何のことか分からず呆気に取られています。

「ティアちゃんは気にしなくていいの。

今の笑顔は星愛にしたのよ。」


ますます、混乱するティアでした。



私達一行は大広間に通され、お茶を飲みながら一休みです。


ただ、従者から見ると異様な光景だったでしょう。

二人の母は黙って微笑み合いながらお茶を飲み。

子供たちが色とりどりのおもちゃを投げ散らかす中、ミューズとテイアは灰色の絨毯に正対し、紅茶のカップを完全に同期した動きで傾けていた。


砂糖が空中で静止し、笑い声だけが遅延して響く——

まるで現実と神域が重層したかのようでした。


その、側ではすぐに打ち解けた子供たちが騒いでいる。


1人の従者が巫女に話します。


「ねえ、ねえ、変だと思わない?あの光景。

子供たちが周りで大騒ぎしているのに、あの二人、黙って、笑顔で見つめ合ったままよ」


「そうね、異様な光景ね…私にもわからない」


そんな従者の言葉を他所に、心の中で5人、いえ6人の女神の会話が続きます。


(澪ちゃんも琥珀ちゃんも無事だったのね。

でも、紗良に琴葉ちゃんはどうしているのかしら)


大きな聞き慣れた声が頭の中で響きます。


(琴葉ちゃんならここに居ますよ)


(えっ、どこにいるの?)


視界は遊んでいる子供の物なので、探すことはできません。


視界の端に八本足の影がゆらめきました。

琴葉の声は蜘蛛の糸のように脳髄を這いました。


(私の目は800個あるから全景見えてるわ、ここよ、天井に張りついている蜘蛛よ)


(えっえー!)


私と澪、琥珀は心の中で叫びました。


(そうそう、私には禁書の聖女としての役割があるの。

みんなのことは私が見ているのよ。

紗良も無事にアルテミス神殿で成長しているから、先ずは安心してね)


星愛はホッとした。胸の重石が溶けていくのを感じながら、疑問をぶつける。


(ねえ、琴葉ちゃんは、転生先はいつも蜘蛛なの?)


(えっとねー、その質問には答えられないの。

だって、星愛も澪も琥珀も他の転生の記憶はまだ戻っていないでしょ。

その質問に答えることで、歴史が変わる可能性があるからね)


琥珀が質問をします。


(歴史を変えられないって言ったけど、ミオを救うこともできないの?)


(歴史を変えることは神々の掟に触れるの。

歴史を変える禁忌を犯した者は永遠の孤島に閉じ込められ、時間から切り離され、存在そのものが忘却される…)


(でも、よくそんな小さい身体でここまで来られたのね)

と琥珀が尋ねると。


(星愛の荷物に潜り込むのは簡単だったわ。

蜘蛛の体は砂粒ほども軽いから。

それに、蜘蛛の巣は創世神話のページみたいなもの。

一度行った場所には巣を残し、意識を糸のように張り巡らせることで瞬時に移動できるの)


夜が深まるにつれ、私の胸は久しぶりの再会に満たされた。

憑依している子供たちが眠りについても、澪、琥珀、琴葉、テイア、ミューズと一晩中話し続けた。

窓から月が覗き込み、女神たちの笑い声が絨毯の上にこぼれ落ちた。


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

初めての投稿ですので、いただいたご感想や評価は次回作品づくりの大きな力になります。

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今日は22話まで投稿を予定しています。引き続き楽しんでいただけると嬉しいです!

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