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第8章 侍傭兵団

正規軍編成と傭兵団募集の話

 信忠は羽柴秀吉とともに軍隊の編成に取り組んでいた。日本国となった今、銃士隊を中心とする織田軍だけで日本の防衛を支えるのは無理だった。全国レベルで軍隊を組織しなければ、今後予想される外国との戦いに対応できない。だが、これまで尾張の領主として、同じ日本の別の大名との戦いを前提に戦を考えてきた秀吉と信忠は、日本軍というものがどうあるべきなのか理解できなかった。

「うーむ、父上のように青水殿のような存在がアドバイスとやらをくださるのなら良いのだが、私のところには来てくれない。困ったことだ。」

「ここはひとつ信長様にご相談なされてはいかがだろう。」秀吉は諦め加減である。

「いや、とりあえず自分でできるところまではやってみよう。私は日本の王なのだから。」


「なあ、信長よ、信忠が困っているみたいだぞ。。」


「そうか、何に困っておるんじゃ?」


「軍隊の編成。俺にもよくわからん世界だ。アドバイスのしようがない。」


「なるほど、軍隊か。強い武器と兵士の高い士気と優れた将校の作戦立案能力、だな。重要なのは。それらが有機的に結びつけば戦に勝てる。」


「まあそうなんだろうけど、その前に軍隊そのものを編成しなければならないので、信忠も困っているんだろう?」


「通常、陸軍は歩兵と騎馬兵、指令系統で成り立つ。海軍は軍艦と駆逐艦からなる艦隊と、それを指揮し運用する司令部だな。」


「信忠は、どうやら織田の大名だった自分から離れられなくて困っているようだぞ。広く日本全体から人材を募って軍隊を編成しなければならないのはわかっているのだが、手立てがなくて固まっている。」


「そうか、ならば全国一律の将兵採用試験を実施するのはどうじゃ?」


「おお、それは名案だな?銃士隊採用試験も男女身分関係なしに募集したし、その方針で全国実施という案を信忠に吹き込もう。」


「うむ、それはわしがやるより、青水、おぬしがやってくれ。これからの織田の国王は、末代まで青水のアドバイスが必要だからな、信忠とも親しくしてやってくれ。」


「わかった。今度声をかけてみよう。」


 信忠は悩んでいた。日本の公安担当を担う柴田勝家と膝をつき合わせて悩んでいた。

「各地で乱暴狼藉が絶えないな。」

「はい、戦のない時代になりましたゆえ、仕事を失った侍衆が徒党を組んで乱暴狼藉に走る事件が頻発しております。警察隊との衝突も度々で、死者やけが人がたくさん出ております。」

「このままでは国の安全が担保できない。どうしたものか?」

「どうしたものでしょうなあ。」


「おーい、秀忠、お初~!俺だよ、青水だよ。」


「お、青水殿、お初にお目にかかる。」


「調子狂うので、その堅苦しいのはやめてくれ。」


「わかった、で、さっそくアドバイス頼む。」


「うむ、まず軍隊だが、全国一律で将兵採用試験を大々的に実施するんだな。格闘、剣術、槍術、弓術、射撃、基礎体力、筆記、碁や将棋での作戦能力判定、なかなか長時間の試験になる。なお対象は15~20歳の男子限定、身分は問わない。そして同時に銃士隊は廃止。銃士隊の隊員は、これから設置する軍事学校の教員とする。」


「銃士隊の役割は終わったと?」


「ああ、元々あれは織田家のための組織だったからな、日本国になったらもうお役御免だ。」


「次に、軍隊の階級を決める。上は大将から下は兵まで、15段階ぐらいに分ければ良いと思うぞ。それぞれどこまで命令系統に入るのか、そこが大事だ。織田の忍び「金竜疾風」が異国に潜入しているから、他国の軍隊の編成を調べてもらい、参考にすると良いぞ。」


「なるほど、大仕事だが未来が見えてきた。」


「他に困っていることはないか?」


「ああ、全国的にかつての侍どもが仕事にあぶれて乱暴狼藉を働くことが多くなった。皆殺しにするわけにも行かず、困っている。」


「なるほど、それなら解決策がないでもないが、いったん信長と相談してみるので、次に会うまで待っていろ。」


「わかった、青水、これからも頼りにさせてもらう。」


 翌月、全国将兵採用試験の布告が全国に貼り出された。義務教育学校でもビラが子どもたちに配られ、男子たちは大いに盛り上がった。身分に関係なく手柄を立てて出世する、子どもたちの夢は大きく膨らんだ。乱暴狼藉に加担していた侍たちも、ここに希望を見いだそうという気運が高まった。試験会場は熱気に包まれた。試験官たちは熱くなりすぎて相手に怪我をさせそうな受験者を止めるのに必死だった。100万人を超える受験者から日本軍の第1期生となる10万人が選ばれた。武士なのに農民に負けて不合格になった者の目には不穏な炎が宿っていた。逆に、貧農の身から上位合格者に選ばれた者は、興奮と使命感で顔を上気させていた。


「信長よ、軍隊の第1期生が誕生したみたいだぞ。」


「うむ、10万は少ないが、このくらいで始めないと混乱するからな。」


「で、不合格者だが、」


「みなまで言うな、わかっておる。元侍の不満分子の問題じゃな。」


「ほう、何か策があるか?」


「おうよ、おぬしも同じ考えだと思うぞ。海外で活路を開いてもらう。」


「それな、日本の侍は需要があると思うぞ。」


「そうじゃろう、斬り合いをさせれば最強じゃ。」


「で、どこに出すかだが。」


「海外に潜伏させている忍びから情報が上がっておる。まずはシャムじゃ。ここは古い王国が、隣国のビルマやカンボジアと戦っているので強力な傭兵が欲しいらしい。忍びが確立した情報網から聞き出したところ、5000人ぐらいは喜んで雇いたいらしい。なので国内で募集をかけて準備金を与えて送り出し、シャム王家からは傭兵契約として傭兵団に金を払わせるのが良いだろう。次に安南だが、ここでも傭兵を欲しがっておる。ただし状況は少し複雑で、安南はシャムともやり合っておるのじゃ。日本人傭兵同士がぶつかるのは避けたほうが良いので、ここはやめておくか。面白そうなのはルソンだな。ここにはスペインの総督府があるが、現地人の抵抗組織がある。金は取れそうにないが、ここを支援する形で武士団を大量に送りつければ、スペインはいろいろ困って痛快じゃ。1万人ぐらい送りつけてやろうか。スペインはヨーロッパでイギリスに負けて、そろそろ落ち目じゃ。ルソンから手を引く日も近いかもしれん。そうなれば、恩を売っておくのも悪くはないぞ。」


「なるほど、信長よ、えらく目が輝いていたな。さすが第六天魔王だ。こういう軍略になるともう止められんな。」


「そしてもう一つ、これは公式に動ける話ではないのだが、中国大陸に侍を大量投入するといろいろと面白いことになる。」


「と言うと?」


「潜入させている忍びからの報告によると、明はそろそろ滅ぶらしい。北方の異民族との戦いに負けそうだという話もあるし、さらに北方からロシアという鬼のような民族も南下してくるらしい。北方の異民族が明に代わって中国の覇者になるのはかまわんが、ロシアの南下はいろいろ面倒じゃ。ここに侍、特に手が付けられない乱暴者どもを大量に送り込めば、日本にとっていろいろ都合の良い成り行きになるかもしれん。少なくとも国内から乱暴者を一掃できる。ここは秘密裏に口入れ屋に動いてもらって、できるだけたくさんの乱暴者を大陸へ渡したい。留置場にぶち込まれている侍どもにも口入れ屋を紹介させることにしよう。口入れ屋を通して準備金をそれなりに渡せば、おそらく喜んで大陸へ渡るだろうさ。」


「信長よ、おぬしも悪よのお!」


「なんだ、それは?」


「いや、なんとなく口から出た。うん、いい話じゃないか。シャムへ5000、ルソンに10000,中国に10000、合計25000か。ずいぶん乱暴侍が減るな。良きかな。」


「まだ東南アジアには国がいくつかあるようなので、もっと忍びを潜入させて調査させようと思う。海外に出すようになってから、忍びの調査能力が上がっておるようじゃ。日本の世界戦略において大事な役目を果たすことだろう。」



いよいよ金竜疾風は海外へ飛翔?

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