第78章 Remenber Pearle Harbor!
突然の最終回です。長い間お付き合いいただいてありがとうございました。
「おーい、俺だ,俺!」
「青水よ、オレオレ詐欺みたいな登場の仕方やめてくれる?」
「あれ、信参じゃん、老けたな。
「まだギリ30代だけどな。」
「いま何年よ?」
「1955年、平和なもんよ。」
「そっか、史実でもまあ平和だったかもな。」
「何だよ、その史実でもって?」
「あー、それを言っちゃあおしめえよ。」
「なんで寅さん?」
「もう技術イノベーションとか世界情勢とかの情報はいらないかな。」青水はまたビールの栓を開けた。どうやら瓶ビール派らしい。
「なんだ、ずいぶんとあっさりだな。」
「だって今回が最終回だもの。」
「そうなの?唐突~!前回のあとがきで告知すべきだったのでは?」
「良いんだよ、別れは突然に来るものなのだ。」青水の遠い目。
「第2次世界大戦がどうなったか知りたくない?」信参は語りたい。
「ん?じゃあ頼む。」青水はビールを流し込んで喉がグビグビ鳴った。
「結果としてドイツの敗北。イタリアは早々に降伏。日本はもちろん不参加。日本を含む太平洋の友好国はすべて不参加。ソ連は最終的にベルリンを占領して王手をかけた。フランスはイタリアが降伏したときにようやく主権を取り戻し、傀儡政権が打倒された。南北アメリカ大陸の国々もすべて不参加。東アメリカと東カナダは、イギリスからずいぶん圧力を受けたみたいだけど、他人の喧嘩に出張る義理もないからね。」信参は珍しく白ワインを開けた。
「なるほど、世界大戦と言いつつも、基本的にヨーロッパ限定か。」
「うん、オーストアリアやニュージーランドも英連邦ということで参戦を要請されたようだけど、戦場に到着するだけで船の燃費が半端ないし、何の得にもならないので拒否したらしい。」
「中国や朝鮮は?」
「知らねえ。台湾に飛び火しないよう,警戒だけは怠らなかったわ。」
「他国の戦争でめっちゃ儲かった?」
「それ言ったら好感度が駄々下がりだろうが!」
「ヨーロッパの金竜疾風は?」
「もちろん全員撤退よ。流れ弾に当たっちゃったら何の意味もない。」
「まあそうだろうな。脱出させたユダヤ人は?」
「金竜疾風の偽装団体が基金を作って手厚く支援したよ。」
「ほう、どんな?」
「粉雪甘味慈善協会とかラナ・チョコレートでみんな笑顔基金とか。」
「お、おう....」
「あと信長餅つきペッタン協会というのもある。偉大なご先祖様ゆかりの。」
「そんなもので何十万人ものユダヤ人を助けられるのか?」
「いや、あの人たちは国際ネットワーク作りが上手だし、商売熱心だし、シェークスピアの時代から培った金融業の手腕がすごいので、みんな大金持ちだよ。」
「だとすると、そろそろ自分たちの母国が欲しくなるんじゃないの?父祖の地を取り戻せ,的な?」青水はそろそろ別の酒を飲みたくなってきた。
「いや、それがだね、確かにシオニズムという運動が盛り上がりかけたんだけど、いま地球上に空き地ないじゃん。必ず誰か住んでるじゃん。その人たちを追い出して自分たちの国にすると、せっかくナチスから逃れることができた悲劇のヒーローという立場を失うかもしれない。なので賢いあの人たちは、構築したネットワークこそが自分たちの国だということにしたみたい。」信参はそう言って冷蔵庫へ酒をあさりに行った。
「ネットワークが国か。あと50年もすると別の意味で説得力がある言葉になるな。」
日本領ハワイのオアフ島。星5ホテルの「ホテル・グランドギンザ・ハワイ」のラウンジ。
「ねえ、ダーリン、ハネムーンでハワイに来て本当に良かった。」新婦が夫にしだれかかる。
「ハニー、ぼくは世界一の幸せ者だよ。ヴィヴィアン、愛してる。」
「私もよ、エドワード。一生離さない。」
「星が綺麗だね。」
「ええ、ずっとこのままが続けば良いのに。」
「いや、それでは困るよ,ハニー。ぼくの想いは...」
「まあ、暴れん坊さんなのね。」
「そろそろ部屋へ戻ろう。」
3年後、ニューヨーク州ロングアイランド。
「ねえ、エド、観葉植物にお水あげた?あとバスルームの掃除は?」
「ヴィヴィアン、頼むよ、いまそんな状況じゃないんだ。」エドワードはイラッとした。
「どんな状況なら約束した家事の分担をサボれるの?」ヴィヴィアンは追い詰める。
「立ち上げた事務所が正念場なんだ。君は良いだろ、一日中家にいるんだから。」
「ええ、一日中家にいてくれというあなたの願いに従った結果ね。」
「それは、早く2人の子どもが欲しくて。」
「子どもの作り方、知ってるのかしら?」
「う、それは...」エドワードは言葉に詰まる。
「どうしちゃったの、あなた、ここ最近は?」ヴィヴィアンが睨む。
「事務所が気になって,何も考えられなくなって。」
「あなた、そんな人だったかしら?」
「え?」
「Remember Pearle Harbor!」
「あ!」
「あのときのあなたは...」
「すごく幸せで、すごくその...」
「そう...すごく...」
「こんな風にか? はっはっは。」
「ウフフフ、イヤン!」
「ええやろ、ええやろ!」
最後の脱力シーン、本当にすみません。そして最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。これが処女作です。次は何か文芸スピンオフでも考えましょう。オ・ルヴォワール、メダム・エ・メッシュー!




