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織田家のアナザー・ジャパン  作者: 青い水


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第70章 パリの春風

書いていて何かうらやましくなった。パリは秋から冬は最低だけど、春からは良い季節。新登場人物の初顔合わせだけど、みんな何かしらこれまでに登場人物とつながっていますよね、きっと。

 租借地フロリダのマイアミ軍港。日本海軍基地内の金竜疾風用特別区域。双子のミラとピアがソファに座っている。ミネとルネから5代下だ。ちなみにミネの子孫なのか、ルネの子孫なのかは不明である。あるいはもっと複雑に血筋を紡いだ可能性もある。そこにドアを開けて1人の若者が入ってきた。立っているだけで優雅な身のこなし。貴族の出だろうか?


「やあ、ごきげんよう。ぼくの名前は天寿、20歳だ。ハワイで生まれて、義務学校は樺太。」

「どうしてそんな遠くまで?」ミラが尋ねた。」

「ご先祖様が樺太出身なので、どうしてもってことで寒い世界へ飛ばされちゃったわけ。」

「気候が違いすぎて大変だったんじゃない?」ピアが気遣った。

「いやあ、南国から北国は辛かったね。でも11月から3月までずっとマイナスなんだよ。夏もめったに20度にならない。海水浴ができなくってさ、最初のうちは泣いてばかりだったな。」

「かわいそう!」ミラピアがお約束のユニゾン。


 しばらく談笑していると、ドアが開いて金髪碧眼で同じくらいの年格好の少女が2人入ってきた。」


「あら、あなたたちは?」ミラが少し訝しげに尋ねた。

「私はアンカ。」

「私はユミカ。私たち甘雪出身で、義務学校は長崎。」

「なんだ、おまえも気候急変移動組か。どうして長崎へ?」天寿が尋ねる。

「私の母が...」

「私の母も...尊敬している先輩のお墓があるからって。」

「お、おう。」この時間差発話に慣れるまで時間がかかる。

「親のエゴが強めだな。2人は姉妹か?」

「お母さんが違う。」

「お父さんはわからない。」

「なんか複雑そうね。言いたくなかったら言わなくても良いわよ。」とピア。

「お母さんが防壁の外で狩りをしていたときお父さんと知り合った。」

「私のお母さんも。」

「で、私が生まれた。」

「私も。」

「お父さんはそれを知らないの?」と遠慮がちにミラが尋ねる。

「甘雪ってそういうところだから。」2人同時に答えた。

「でもお母さんはお父さんを大好きだったって。」

「私のお母さんも。」

「そ、そうか、それは何よりだな。」天寿はどう返して良いかわからず、適当に言った。

「お父さんの顔は知らないけど名前だけ知ってる。

「私も。」

「セルゲイ...」2人同時に同じ名前を口にした。


 気まずい。何を言って良いか誰もわからない。


「私たちのお父さん、同じ人かもしれない。」2人のユニゾン。

「もしそうなら嬉しい。半分姉妹になれるから。」2人は微笑んだ。


 他国に先駆けてスクリューを実用化した日本海軍の高速艇は、フランスのル・アーヴルまで、途中の補給寄港を含めても、10日程度で到着する。ル・アーヴルからパリまでは駅馬車で約1日。パリとアメリカは、100年前と比べるとずいぶんと近くなったものだ。5人はとりあえずパレ・ロワイヤルに面したホテルに部屋を借りた。住居を借りるまではここが拠点となる。


「それにしても大きな町ね。」アンカとユミカはキョロキョロしている。

「ここで大都市から来たのはミラとピアだけか。」天寿がうらやましそうに2人を見る。

「大都市と言っても、武蔵だからね。大阪ほどじゃないし。」

「とりあえず新聞をいくつか買ってきて現在の状況を掴んでおこう。」天寿が発案した。

「なんかパリに着いてから感じたんだけど、みんな喋るのが速い。」ピアがぽつりと言った。

「みんなフランス語大丈夫か?」天寿が自信ありげに尋ねた。

「カリブ海で習った。」とアンカとユミカ。

「私たちも。」とミラピアのユニゾン。

「ハイチが独立したあとも、フランス人がけっこう残っていたからな。」天寿が思い出す。

「なんか天寿ニヤニヤしてる。」アンカが指摘する。

「カリブで良いことあった。」ユミカが推理する。

「いや、あの青い海、白い砂浜、故郷のハワイを思い出して楽しかった。」

「そうか、樺太からカリブだとテンション上がるよね。」ミラが頷く。

「さて、新聞はどこで買うものだ?」天寿はキョロキョロ見渡す。

「キオスクじゃないの?あそこにあるよ。」ピアが指さした。


「Bonjour, Madame!いくつか新聞(ジュルノー)が欲しい。これとこれとこれ。」

「ウィ、セサ。Merci beaucoup!」


「喉も渇いたし、あそこのカフェで新聞チェックしましょ。」ピアは目ざとい。


「国王、議会を解散!」

「いずれアルジェリアはわれらが領土!」

「出版機制?文化の自由を守れ!」

「鉄道、これからの交通インフラ。」

「ロマン派?芸術の新しい希望か、それとも文化の破壊か?」

「私立探偵局が設立?」


「なんか見出しだけ眺めていてもいろいろあって目移りするな。」と天寿。

「まず議会解散だけど、フランス革命で否定された絶対王政を復活させようとする動きね。国王シャルル10世は、たぶんだけど、失脚すると思う。」ミラが説明する。

「アルジェリアは、まあ帝国主義が流行してるからね。」アンカが説明する。

「出版機制か、これは議会解散と同じ根っこの問題ね。」ピア先生の解説。

「鉄道、乗ってみたい。」ユミカの希望。

「ロマン派?よくわからないからスルー。」天寿の華麗なスルー。

「私立探偵局?何だろう、これ?えーと、ウジェーヌ=フランソワ・ヴィドック氏は、警察の密偵としての働きを認められて犯罪捜査局の局長となり、それから警察を退職して民間人として捜査に協力する私立探偵になった、と。」天寿は記事を要約した。

「さて、これからどう動きましょう?」ミラが総括しようとする。

「このヴィドックという人に接触して、パリの裏情報を聞き出しましょうよ。」とピア。

「そうだな。新聞に書いてあることの裏に何かあるかも。」天寿が賛成した。


怪しい私立探偵さん。このヴィドックという人も実在した人物ですね。検索するとwikiがヒットします。

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