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織田家のアナザー・ジャパン  作者: 青い水


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第64章 スヴィーテンの苛立ち

スヴェーテン先生がセルビアまでやってきました。あまり喜び勇んで来た感じではありませんね。


「なあ、信太郎、ウィーンはどうなってる?」


「捕まえたそうですよ、ヴァンパイア。」


「ほう、では串刺しじゃなくて杭を刺して終わりか?」


「いえ、医学的に調査するんだとか。」


「マジか?そんなの聞いたことがない。」


「当世きっての名医が直々に検分するとか。」


「でもって場合によっては執刀とか?なんだその展開は?」


「啓蒙主義だそうで。」


「ロマンもクソもねえな。」


「科学的に解明されたらどうなるんでしょうね、ヴァンパイア?」


「知るわけねえだろ。そんな設定、いままで見たことがねえ。」


「いままではどんな感じでした。」


「だいたい追い詰められて最後は消滅だな。」


「消滅ってどんな?」


「日光を浴びて蒸発とか、心臓に杭を打たれて塵になるとか。」


「えぐいですね。」


「消えてもらわないと話が終わらん。」



「で、そのヴァンパイアはどこに?」到着してすぐにスヴェーテンは尋ねた。

「総督府の裏庭に特殊な結界を張って勾留しています。」フロムバルトが答える。

「シュピールベルクに搬送したのではないのですか?」

「はい、それはあまりにも危険ですので。」

「ふむ、ではさっそく検分いたしましょう。」

「これをお持ちください。」フロムバルトは聖餅と十字架を差し出した。

「これは?」怪訝な顔でスヴェーテンは受け取った。

「近所の教会からいただいたものです。」

「何に使うのでしょうか?」

「万が一のためです。襲われた場合に効果があります。」

「科学的根拠は?」

「不明です。」


 スヴェーテンは不服だったが、教会が掲げる信仰を否定するわけにはいかなかった。魔物や魑魅魍魎は、キリスト教から見れば異教崇拝のたまもので、魔女と同じく排斥すべき存在だ。そして科学にとっても、理性を混濁させる忌まわしき存在である。ここにキリスト教と科学の野合とも言うべき共闘関係がある。それに、万が一の場合にそれが役に立つとあれば、実利的にはそれを利用しない手はないだろう。


 裏庭には布の伽藍のような建築物があった。小屋のような広さで全体が布で覆われている。布には油が染み込んでいてギラギラしていた。


「この布には聖油が塗り込められていて瘴気を通しません。」フロムバルトが説明する。布をめくって中に入ると銀色の檻があり、中に魔物が横たわっていた。


「この檻は鉄製で銀箔が施されています。」

「魔物は銀を嫌うのですか?」スヴェーテンは興味なさそうに尋ねた。

「そのように聞き及んでおります。」

「教会筋からか。」スヴェーテンは尋ねるともなく呟いた。

「いえ、カイアさんから。」フロムバルトは少し躊躇して答えた。

「なぜ彼女が?」

「カイアさんはヴァンパイアの戦闘前に教会に行って相談していたのです。聖油の布も銀箔の檻もカイアさんの指示で設えました。戦闘中に伝令にその指示を伝えて総督府へ走らせたのです。」

「手際が良い。」スヴェーテンは顎に手を当ててしばし考えていた。

「魔物が横たわっている台には車輪が付いておりますので、こちらに引き寄せて檻越しに触れることもできます。」

「お願いします。身体の一部を削って調べてみたい。」


 台車が引き寄せられ、檻越しにスヴェーテンは魔物の肩からメスで肉片を切り取った。魔物はピクリとも動かなかった。切り取った傷跡から血は流れず、灰色の泥のようなものが零れ落ちた。


「これで実験試料は揃いました。」

「総督府内に実験室を設えさせます。必要な設備は?」

「あとで書類でお伝えします。」

「牛と豚を調べた医師たちともお話ししていただけませんか?」

「わかりました。よろしくお願いします。」


 

 カイアの元に鳩が日本からの書状を運んできた。斑鳩からだった。


「魔物との戦闘について詳細に報告すること。現地の調査研究の結果を送ること。今後世界各地で起こるかもしれない類似の事例への対処に活かす。さらに、敵性勢力がこのような外法の存在を利用する可能性について私見を述べよ。」


「可能性ね。」夢水が肩をすくめた。

「可能性は無限大♪」ミネとルネが歌った。

「利用しようとしても自業自得で嚙まれて死にそうね。」カイアの見立ては否定的だった。

「吸血衝動と破壊衝動の塊みたいな存在だからね。」夢火が珍しく難しいことを言った。



「その牛と豚は焼却処分になったのかね?」スヴェーテンは不服そうだ。

「身体から発生する瘴気が激しくて環境を破壊するものですから。」医師たちが答えた。

「仕方ないな。」

「詳細なデータは記録してありますので、お調べください。」

「脳死状態で心臓を含む内臓が活動するという現象、これをどう説明する?」

「魂がない生命と思っています。死んでいるのに死んでいない、すなわちアンデッド。」

「それを動かす活動の源は何か?」

「わかりません。摂食本能はないので魔物のように吸血することはありません。」

「だとすればいずれはエネルギー切れで活動停止になるだろう。」

「そうかもしれません。ただし停止まで待つには環境負荷が高すぎます。」

「わかった。ではデータを精査することにしよう。」





研究結果はどう出るのでしょう?青水さんが心配していましたが、そんな成り行きは前代未聞ですからねえ。

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