第60章 不都合な真実
「なあ、信太郎、モンスター出たな。」
「はい、出ましたね、ヴァンパイア。」
「何考えてるの?違うジャンルでしょうが。」
「はあ、でも出ちゃいましたので。」
「どう落とし前付けるんだ?」
「青水さんのチートアドバイスとか。」
「できるか、阿呆が!」
「作者さん、青水さんとつながってるんでしょ?てか青水さんが作者さん?」
「んなわけねーだろ。俺は私立文系、あいつは...」
「あれ?禁則事項では?」
「おっと、そうだった。危ねえ、危ねえ。」
「なんかアドバイスないんですか?軽めのやつでも。」
「んー、そういえば、あった。」
「何でしょう?」
「ほら、西アメリカってカリブ海大作戦ですごく頑張ったじゃん。」
「はい、頑張ってもらいました。」
「メキシコは、あれでカリブ海の島をほとんど手にしたけど、」
「はい、西アメリカは何ももらえませんでしたね。」
「日本の新造船を10隻もらっただけ。でもフロリダを租借地として日本に貸し出した。」
「西アメリカに伝えてやんな。川から砂金をごっそり掬えってな。」
「何ですか、それ?」
「ゴールドラッシュだよ。カリフォルニアの川から砂金がザクザク。」
「それは豪放ですな。」
「白人がそれ目当てに攻め込んでくる前に掘り尽くせってな。」
セルビアのオーストリア大公国セルビア総督府の長官エルンスト・フロムバルトは悩んでいた。ハンガリーのヴァンパイア事件を担当した軍医のヨハネス・フリュッキンガーの報告書 »Visum et Repertum »(見たこと、発見したこと)が帝国から「信憑性が皆無」として突き返されたからである。実はフロムバルトの事件でも、ハンガリーの場合と同じように、ヴァンパイアとおぼしき存在が発見され、同じように抵抗して、あまつさえ兵士3名を殺害したあとで逃亡していたのである。このまま事実をウィーンに報告しても、フリュッキンガーと同じ憂き目に遭うのは火を見るより明らかだ。かといってこのまま放置しておいて良いのだろうか?これは大きな災厄の始まりなのではないのか?しかし、銃弾が全く役に立たないあのような魔物、軍隊を持ってしても倒すのは難しい。それに、もしあの一体だけではなくて多数存在していたら?すでに確認されているだけでも、ハンガリーの1体とセルビアの1体、合わせて2体いる。ウィーへの報告書を書きあぐねて、エルンスト。・フロムバルトは悩んでいた。
ウィーンの宮廷で報告書を突き返され、虚言を紡ぐ無知迷妄の無能医師と蔑まれたヨハネス・フリュッキンガーは、グリンツィングの居酒屋で一人、粗末な木製のテーブルに肘をつきながら、安酒のホイリゲをあおっていた。
「虚言だと?無知だと?」彼は呟き、グラスを乱暴にテーブルに置いた。「あの死体は確かに動いていた。動いて攻撃してきた。」
彼の目は赤く充血し、疲労と怒りが入り混じった表情を浮かべていた。彼の周囲には誰も近寄らず、彼の存在はまるで居酒屋の中で孤立した島のようだった。
そのとき、居酒屋の扉が勢いよく開き、華やかな衣装を身にまとった双子の少女が入ってきた。ミネとルネだった。
「貴様等...、どうしてくれるっ!?」フリュッキンガーが怒鳴った。
「あ、軍医のおじさん、こんばんは。ご機嫌いかが?」
「良いわけがなかろう。貴様等のせいでな。」
「どうしたの?そんなに酔い潰れて。」
「ボルゴ村の一件をまとめた報告書、信憑性が皆無として却下された。」
「まあ、本当のことを書いたのでしょ?」
「ああ、一字残らずな。」ワイングラスを握るフリュッキンガーの手が震える。
「なぜ信じてもらえなかったのかしら?」
「真実はときに不都合なものだからだ。」
「ヴァンパイアの存在を認めることは宮廷にとって不都合なのね?」
「そうだ、いまは啓蒙の時代、理性の時代だ。闇の魔物など、認めるわけには行かない。」
「認めれば国家の根幹を揺るがす?」
「ああ、突き詰めればそういうことになる。他国から嘲笑われる。」
「無知迷妄の国として?」
「そうだ。だから決して認めるわけにはいかなかった。」
「でも、真実を闇に葬ることが真の啓蒙なのかしら?」ミネは毅然とした笑みを浮かべた。
「私たち、フリュッキンガーさんの名誉のために協力しますよ。」ルネが彼の手を取った。




