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織田家のアナザー・ジャパン  作者: 青い水


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第58章 薬屋の五人囃子

ウィーン、我が心の町、いや違うな、我が夢の町だ。たしかそんな歌があったはず。ところでウィーン、とても楽しかったのに、地下鉄で爺のスリに財布を取られた。腹立つわ~。外国からクレジットカード止めるのが面倒くさかった。


「なんか違わない?」カイアが困惑している。

「確かに。バタビアで習ったのと微妙に違う。」夢水が考え込む。

「まあそれなりに通じているから良いのでは?」ミネルネは屈託ない。

「私たちのドイツ語、なんだか笑われているみたい。」夢火が憤っている。

「あのオランダ人、嘘教えたのか?」と夢水。

「ドイツ語もオランダ語も似たようなもんだ、って。」

「似てると同じは違う!」カイアはついに怒った。が気を取り直した。

「ガタガタ言っても仕方がないから作戦を始めましょう。」

「まず極点の確保だ。」夢水も冷静さを取り戻した。

「町中に1つ、そして郊外に製薬拠点。」

「では植生を調べるためにまず郊外へ行きましょう。」カイアが促した。



 ウィーンの西側から南側へ「ウィーンの森(Wienerwald)」と呼ばれる広大な森林地帯が広がっている。豊かな植生と綺麗な水に恵まれ、薬草を集めて薬を調合するのにぴったりの場所だ。一行はグントラムスドルフという村で小屋を借り、周辺の野山で植物を集め、薬の調合を始めた。薬草がたくさん採れたので、虫刺され軟膏、傷薬、胃腸薬、頭痛薬、風邪薬が次々と完成していった。一行はそれぞれの薬を丁寧に瓶や布袋に詰め、効能ごとに整理して棚に並べた。小屋の中は薬草の芳しい香りに包まれ、その空間はまるで小さな薬局のようだった。


「このあたりで試しに薬を配ってみよう。」夢水が提案した。

「そうね、いきなりウィーンで商売を始めるよりそれが良いわね。」カイアが同意した。

「尾張の薬売り方式はもう少し馴染んでからね。」ミネルネも賛同した。

「病人や怪我人がどっこかにいないかな?」と夢水。

「あの丘の向こうに修道院があったよ。」目ざとい夢火。

「おお、そこなら弱っている人の情報がわかるかも。」夢水が立ち上がった。

「行ってみましょう・」カイアも後に続いた。


挿絵(By みてみん)

 ハイリゲンクロイツ修道院。村の小さな修道院を想定していた一行は驚いた。修道院は思った以上に壮大で、まるで中世からそのまま時間を超えてきたかのような威厳を放っていた。大理石の柱が並ぶアーチ型の入り口と、美しいステンドグラスの窓が日差しを受けて輝いている。一行はその荘厳な雰囲気に圧倒されながらも足を進めた。修道院の中庭に修道士たちがいた。


挿絵(By みてみん)


「旅の者ですが、助けが必要な方々の情報をお聞きしたいのです。」と夢水が話しかけた。

修道士は一瞬驚いた様子だったが、笑顔で答えた。

「薬師のみなさんですか?これは神の思し召しかもしれません。実は近隣の村々で病が流行っており、助けが必要な方が多くおります。」

「わかりました。症状はどのような?」

「高熱と激しい咳です。」

「お任せください。治癒できると想います。」夢水は自信満々に頷いた。


 修道士に連れられて一行は村人たちの家を回り、必要な薬を与え、服用の注意を指示した。どうやらインフルエンザが流行っているようで、対処療法しかできないが、熱と咳の症状を和らげて、体力の消耗を抑えることが必要だった。一行は患者の症状や年齢をしっかり把握して的確な服用方法を伝えた。


 患者たちの治療を終えた一行は修道士たちと修道院へ戻った。


「まさに神の思し召しです。本当に助かりました。」修道士たちは感謝している。

「いえ、お役に立てて光栄です。」夢水が頭を掻いて照れる。

「たくさん作ったお薬、こちらに置いて行きます。」

「困った方々に役立ててください。」ミネとルネが時間差ユニゾンで言った。

「ありがとうございます。この感謝を..忘れることはありません。」


修道士たちの声には深い誠意が込められていた。その後、一行が用意した薬は修道院の棚に整然と並べられ、助けを必要とする人々のために保管された。


修道士の一人がふと考え込むように、一行を見つめながら言った。

「あなた方のような人々が旅をしながら助けを広めているとは、なんと素晴らしいことか。どうか、私たちもお手伝いできるような時があれば声をかけてください。」


「ならばひとつお願いがガリます。」カイアが口を開いた。

「私たちはウィーンで薬の商いをしようと考えています。しかし、全くのよそ者、身元のしれぬ異邦人、ドイツ語さえたどたどしい。そんな私たちが信用を勝ち取るのは難しいかもしれません。そこで、修道院からの推薦状をいただけないでしょうか?」


「もちろん喜んで!」修道士たちは微笑みながら手を差し伸べた。



「よし、一歩前進だ。」張り切る夢水。

「次は町中に拠点ね。」同じく張り切る夢火。

「国際スパイ組織だと“セーフハウス”ね。」ミネルネの外来語。

「ハウスじゃなくても良いんだろ?」こだわる夢水。

「アジトね。」話を拡大するミネルネ。

「はい、そこまで。話が進まないよ。」とカイア。

「町に戻って地図を買おう。夢水が提案した。夢水とカイア、どっちがリーダー?


 

 1730年のウィーンは城壁に囲まれていた。城壁の外側は防衛上の理由で建物の建設が禁止されており、広い空き地が広がっている。城壁にはたくさんの城門が設置されており、都市への出入りが監視されていた。修道会の推薦書は城門を通過する際にも大いなる効果を発揮した。



「さて、俺たちはいまシュテファン大聖堂近くの広場にいるが、」夢水は地図を指さした。

「王宮はあっち、市場はこのあたり。」

「じゃあその中間あたりが良いんじゃない?」夢火は軽快だ。

「確かに。諜報は王宮、商売は市場。」とカイア。

「じゃあ、それで決まり。」そしていつもの双子のユニゾン。


 一行はシュピーゲルガッセの一軒家を借りることにした。(シュピーゲル)横町(ガッセ)、偽装で紛れ込むのにぴったりの場所だ。


いよいよウィーンでの活動も軌道に乗ってきました。まだみんなあまり活躍していませんね。次回から頑張りましょう。地図とにらめっこしつつ,地理的合理性が破綻しないように物語を進めるってけっこう大変です。異世界なら好き勝手できるけど。

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