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織田家のアナザー・ジャパン  作者: 青い水


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第48章 そしてロンドンへ

蜂蜜の聖女、さすがに甘味パワーは無敵です。

「だから俺たちは祖国のために。」捕虜の1人が叫んだ。

「そうですか、つまりイギリス人として祖国に貢献したと。」エリザベスは落ち着いている。

「そうだ、グレートブリテン!セイブ・ザ・キング!」

「あなたは奴隷貿易を知っていますか?」

「アフリカから黒人をカリブ海へ送る事業だろ。」

「人を道具として売買することは許されますか?」

「それが祖国へ富をもたらすならばな。」

「イギリス人としてその行為を是認し支持すると?」

「ああ、ライオンは鹿を食う、神の摂理だ。」

「ではあなたは人間ではなくて獣だと?」

「くっ、何を言う。俺はキリスト教徒で文明人だ。」

「イギリス人である前に人間であると?」

「その問いに何の意味があるのかわからん。人間でイギリス人だ。」

「人間が人間を道具として扱うことは許されますか?」

「黒人が人間なら許されないだろう、しかし...」

「彼らもまた同じく人間です。」

「やつらは言葉を解さない。」

「あなたが彼らの言葉を解さないからです。」

「奴らの言葉は獣のうなり声だ。」

「コンフィーテ・ペカトゥーム・エト・デウム・ローガ・ヴェニアム!」

「何だ、それは?」

「獣のうなり声です。」

「どこかの外国語だろ、俺の知らない。」

「そうですね、ラテン語です。でも知らない外国語は獣のうなり声に聞こえるのでしょう?」

「くっ、すべてがそうではない。」

「ラテン語ついでに言いますが、もしあなたがローマ時代に行ったら、」

「行ったらどうなる?」

「獣のうなり声を上げる蛮族として奴隷にされますね。」

「くっ、俺は...」

「道具として扱われ、死んだらサメの餌になっても良いと?」

「罪を認めて神に謝れ、さっきの言葉の意味はこれです。」

「神よ、私は過ちを犯しました。」


 エリザベスは毎日のように捕虜収容所へ行き、捕虜たちと語り合った。安寿からもらった蜂蜜を使ってクッキーを焼き、聖餅(ホスティア)として捕虜たちに配った。ときどきラナもついて行き、英語力に磨きをかけた。エリザベスは捕虜たちの間で蜂蜜の聖女(ハニー・セイント)と呼ばれ、崇められるようになった。捕虜たちの中で奴隷貿易がいかに非道であるかということを理解しない者は誰もいなくなった。

 安寿は頃合いだと見て取って、捕虜たちの拘束を解いた。海で漁業に従事する者、貝殻で工芸品「を作る者、畑仕事や果樹園を手伝う者、ハワイの様々な場所で捕虜たちは労働にいそしんだ。ポリネシアの陽気な人々とふれあって、彼らの人種的偏見は消えていった。


「そろそろ潜入ですか?」安寿がラナに尋ねる。

「はい、来週です。海軍の駆逐艦でルイジアナの港から出ます。」

「同行する者は?」

「天竺から2人来るそうです。現地で合流します。」

「期待してますよ。」

「期待に添うよう励みます。」



「やあ、おまえがラナか?」色白の少年が声をかけてきた。

「こんにちは、よろしくね。」ラナが微笑んだ。

「私は夢羽、この子は夢児、双子なの。」色白の少女が言った。

「あら、また双子が相方だわ。」

「俺たちは長崎で訓練を終えてから天竺に1年いた。」

「長崎は英語の訓練がある唯一の里だったのよ。」夢羽が補足した。

「鋼火さんのお婆さんだった鋼音さんが英語が得意だったから。」

「ロンドンは寒いらしいけど、おまえ大丈夫か?」夢児がラナを見て気遣った。

「なれれば大丈夫なんじゃない?」ラナは快活に笑った。



ルイジアナの港からバミューダ諸島までは500里ほどの距離だ。新型偽装蒸気船なら4日で到着する。バミューダ諸島はイギリスの領土で、本国とカリブ海の中間に位置しており、補給基地としての役割を持っていた。カリブ海大作戦で撃退したイギリス海軍もここに停泊していた。西アメリカ政府とメキシコ政府は、バミューダ諸島の処遇について、放置すべきか攻撃して解放すべきか迷っていた。島の解放は比較的容易に達成できるだろうが、イギリス本国との距離の近さがうかつな攻撃をためらわせていた。全面戦争になったら面倒だ。潜入する金竜疾風は、バミューダから旅客船でイギリスに入ることになった。


「少し町に出るか?」夢児が夢羽に言う。

「そうね、たまには練習しておかないと。」


2人は町に出て大道芸を始めた。たくさんの観客が集まり、おひねりが投げられた。芸もさることながら、英語でのMCが素晴らしい。ラナは見ていて感心した。これならロンドンでも大いに活躍するだろう。


挿絵(By みてみん)


 バミューダを出た旅客船はロンドンのテムズ川沿いの港に入港した。町は大きかったが、お世辞にもきれいとは言えなかった。いやむしろ「汚い町」だった。ゴミは散乱し、路上に動物の死体や排泄物、テムズ川もゴミが浮遊して悪臭を放っている。


「ここが世界で一番進んでいる町なのか?」夢児は鼻をつまんだ。

「ともかく拠点を探しましょう。息のできるところで。」ラナが提案した。

「町の地図が欲しいわね。」夢羽も鼻をつまんでいる。


「さて、われわれが拠点とすべき場所だが、候補地が2つある。1つはハイドパークに近接するメイフェア、もう1つはマリルボーン、こちらもハイドパークに近接する高級住宅地だ。」夢児は地図を広げて説明する。

「近いから行ってみましょう。」ラナは歩き始める。


「メイフェアが良いんじゃない?発音も簡単だし。」ラナが簡単に決めた。

「どうやって部屋を借りられるのかしら?」夢羽が首をかしげる。

「誰かに仲介してもらう必要があるな。」夢児が腕を組む。

「偉い人に気に入ってもらうのが一番ね。」ラナはいつも楽観的だ。

「気に入ってもらうと言ってもね。」夢卯が考え込む。

「あ、そうだ。ミナさんとルナさんは路上で歌ってファンを増やしてた。」とラナ。

「あ、伝説の双子くノ一!」夢羽の顔が輝く。

「俺たちの得物を里に提案してくれた人たちだ。」夢児は二連燧ピストルを出した。

「アカプルコでファンを増やしてスペイン人の宴に招待されたって。」

「それいいな。だったら俺たちも。」

「双子の芸で魅せましょう!」


ロンドンでも双子パワー、通じるのだろうか?

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