第47章 ハワイの聖女
ハワイにもイギリス人捕虜がやってきた。どうする?
捕虜はいったんメキシコに送られた。しかし2000人のイギリス人、しかも宣戦布告していない状況での捕虜、メキシコ政府は捕虜の取り扱いに悩んでいた。西アメリカに半分くれてやるか?いやハワイにも引き受けてもらおう。ということで、近くメキシコ、西アメリカ、日本で会談が行われることになった。とは言っても、遠い日本から代表者がアメリカまで来るのは現実的ではないので、日本代表はハワイから来ることになった。
「メキシコ政府の要望は、捕虜を3つに分けて分担して受け入れるというものです。」
「まあそれが妥当でしょう。」西アメリカが賛同した。
「捕虜を人質として、何かと交換というのはどうでしょう。」安寿が言った。
「交換ですか、で何と?」
「奴隷貿易の廃止とすべての黒人奴隷の解放です。」
「受け入れるでしょうか?」西アメリカ代表は懐疑的だ。
「即決はしないでしょう。でも、」安寿はしばし考えた。
「でも根回しをすれば何とかなると思います。」
「根回しですか?それはイギリスでするのですか?」西アメリカ代表は困惑している。
「はい、われわれ日本にそうした活動に長じた組織があります。」
「ではお任せしましょう。」メキシコ代表は安堵の表情を浮かべた。
「それまでは667人ずつメキシコ、西アメリカ、ハワイで収容することにしましょう。」
「信光様、ハワイより連絡と報告です。
「うむ、書状をこちらへ。」
「信光様、天馬と安寿でございます。カリブ海奴隷解放作戦で2000人のイギリス人捕虜が出た問題で、メキシコ、西アメリカ、そしてわれわれで会談が行われました。本来は日本本国に伺いを立ててから会談に臨むべきでしたが、地理的に遠いのでわれわれハワイが代表として会談に臨みました。2000人の捕虜は人数が多いので、三分割して各国が引き受けることになりました。しかし、永遠に収容しておくわけにも参りません。そこで私たちは提案しました。すべての奴隷の解放と奴隷貿易の禁止を受け入れるならば、捕虜は帰してやるという取引をイギリスに持ちかけるのは如何かと。ただ、イギリスが多くの富をそこから得ている奴隷貿易を易々と手放すかどうか、それについては各国代表団も懐疑的でした。われわれもそう思います。そこで金竜疾風をイギリスに潜入させて諜報活動と情報操作を行わせるのはどうかと考えた次第です。」
「どうしよ?」
「どうしよ、どうしよ、どーしよ~!? 青水~!」
「猫型ロボットじゃねえぞ、困ったからって呼び出すな。」
「イギリスだって。遠いよね、わかんないよね?」
「まあ遠いけど、今まで派遣したところよりはわかりやすいんじゃね?」
「え?なんで?言葉もわかんないし。」
「まあおまえはな。」
「青水はわかるの?」
「大学出てるからそれなりにな。偏差値は62だけど私立文系だ。」
「は?シリツブンケイって何?」
「まあいつもの禁則事項だ、気にするな。」
「派遣して大丈夫かな、金竜疾風。」
「あいつらはどこでも大丈夫だろ。」
「人選どうしよ?」
「何今さら言ってるんだよ。今までだって人選は里任せだろ。」
イギリスへの潜入作戦の本部は地理的条件からハワイになった。安寿が本部長に決まった。潜入メンバーは、英語ができる天竺支部から2人呼び寄せて、ハワイからはラナを出す。ラナはイギリス人捕虜から英語の特訓を受けていた。そんなとき、ハワイに1人のイギリス人女性がやってきて入国を要請した。英語特訓中のラナと安寿が対応した。
「イギリスから参りましたエリザベス・ホープです。宣教師です。」
「キリスト教徒ですか。我が国でキリスト教は別に禁止されていませんが。」
「私が属しているのは友愛を旨とする友愛教会で真理の友と呼ばれております。」
「ほう、それは新しい教団なのですか?」
「はい、今世紀の半ばにできたばかりの新しい教団です。」
「そんなあなたがなぜハワイに?」
「新しい土地に信仰の種を撒き友人を増やすためです。」
「なるほど。あなたに1つ質問があります。」
「何でしょうか?」
「あなたは奴隷貿易をご存じですか?」
「いいえ、恐ろしい響きですが、それは何ですか?」
「あなたの国イギリスが始めて、非道な行いで国に富をもたらすものです。」
「非道な行い?」
「はい。イギリスから工業製品を持ってアフリカへ行き、それを奴隷と交換してカリブ海へ行き、奴隷と奴隷が生産した砂糖を交換してイギリスへ戻り、莫大な富を得る。」
「そんな非道なことが?」
「はい、それで私たちはカリブで奴隷を解放する戦いをしました。」
「イギリスとですか?」
「はい、イギリスとカリブ海の海戦をしました。」
「まあ!で結果はどうなったのです?」
「勝ちました。その結果、多くのイギリス人が捕虜になりました。」
「何と言うことでしょう!」
「あなたは奴隷貿易を許せますか?」
「いえ、決して。」
「ならばハワイにしばらくとどまって、捕虜たちと話をしてください」
「わかりました。彼らに真理の光が宿るよう努力しましょう。」
クエーカーの宣教師が来たよ。真理の友人たちの会だよ。何が起こるのかな?そしてラナはイギリスへ潜入。常夏の生まれなのにあのクソ天気のロンドンでやっていけるのかな?あ、私、ロンドンへは大学院生のときに行ったきりで、もう細かいことは覚えてません。




