第42章 パイレイツ・オブ・え~とキューバ
カリビアーン!
「信光~、俺だ、青水だ。」
「初めまして。形だけの王、信光です。」
「まあそのほうが気楽で良いぞ。」
「はい、父は隠居して趣味の人形作りの毎日です。」
「ほう、あいつにそんな趣味があったのか。」
「肌の露出の多い少女の人形ばかり作っています。」
「なん、だと?」
「名古屋の栄に売り間という施設があって、そこに出品しているようです。」
「ほう、ウリマとな。で、売れているのか、そのフィギュア?」
「え?ふぃぐ?」
「いや、人形だよ。」
「はい、かなりの人気で、父も鼻高々です。」
「そうか、幸せな隠居だな。」
「で、きょうはどんなアドバイスですか?」
「あ、そうだった。おまえさ、宗教省を通じて神道と仏教のえらいやつら集めな。」
「はあ、何をするんで?」
「山に祝福を与える技というか術を開発してもらうのさ。」
「その加持祈祷や祝詞が完成したら?」
「富士山や大雪山に祝福を与えてその付近の幸福度を上げさせる。」
「そんなことができるのですか?」
「まあ、やってる感が大事かな。神主や坊主も暇だろうしな。」
「なるほど、誰も損しない良い話ですね。」
「おまえの権限で実行は出来ないけどな。」
「はい、相談した上で、仏教と神道から出ている議員に発議してもらいます。」
ミナルナとラナの3人は西アメリカ国軍の本部に向かった。秘密の国賓という特異な扱いでこの国に招かれた。軍の中枢から彼らに委託された任務は、メキシコ湾沿岸における白人侵入事件の調査である。特にまだ西アメリカ国に属していない地域において、白人たちがどのように入植地を拡大しているか、現地民がどのように土地を奪われて放逐されているのか、現状を調査してその対策を検討することである。
「で、ラナ、あなたの得物は何なの?」
「これです。」ラナはボウガンと矢弾を見せた。
「この矢弾は粘着火薬の小型版で、敵に当たると小さく爆発して燃えます。」
「矢弾はいくつ携帯するの?」
「12本です。」
「ならば私たちの連発燧ピストルが2発×2人で4連発だから、けっこう倒せる。」
「はい、ほかに手裏剣やくないもありますしね。」
「確かに。私たち3人で30人くらいは何とかなりそう。」
「敵のマスケット銃は単発弾込だから手間と時間がかかる。」
「弾を込めてる間に撃たれて死んじゃう。」
「楽勝かも。」3人は小鳥のように軽やかに笑った。
3人はルイジアナに到着した。フランス人はもうこの地を去っていた。フランス人に使役されていた住人たちは、北アメリカ国の兵士たちに助けられて西部の安全な土地に移り住んでおり、ルイジアナは荒れ地になっていた。現地の人々がミシシッピと呼ぶ大きな川が流れ、メキシコ湾に流れ込む河口にはたくさんの鳥がいた。
「このあたりはたくさん魚が捕れそう。」ラナはポリネシア人独特の嗅覚で確信した。
「任務が終わったら天ぷらをごちそうしてあげるよ。」ミナが大人の余裕で語った。
「そして日本酒をキューって。」ルナはいつからいける口になったのだろう。
さらに東へ進み、沿岸の集落に住む漁民たちに絵会話帳で聞き取り調査をした。ここしばらくは白人の姿は見てないらしい。フロリダに到着すると、急に温度が高くなった。まるでメキシコのようだとミナルナは思った。水浴びしたい。そう思ったら口から言葉が出てしまった。「水浴びしたい!」ミナルナの言葉にラナは大賛成だった。「しましょう!」フロリダは半島で、その先端にあるこの浜辺を現地の人々はマイアミと呼んでいた。ハワイから来たラナにとってここはふるさとと同じ南国だった。
「気持ちいいっ!」ラナは人魚のように潜ったり浮かび上がって宙に跳んだりした。
「なんだかキラキラしてる。」
「人魚みたい。」ミナルナはうっとりして、それから服を脱いで海に飛び込んだ。
「アハハ」「ウフフ」「最高!」
3人は任務を忘れて夕暮れまで海水浴を楽しんだ。こんな素敵な場所、西アメリカ国の仲間に教えてあげなければ。ここをみんなの憩いの場所にしなければ。ここを奪われてなるものですか。3人は浜辺に座って夕陽を眺めながら思いを強く確かめ合った。
「で、俺たちは南に広がるスペインの影響を調査するのか?」銀天は不満そうに言った。
「メキシコ共和国に協力しろとの命令だ。」奔吾は斧を磨いてる。
「正直、この先は奥が深すぎる。深入りは厳禁だ。」紫影が指令書を確認する。
「国境から先、どのくらい調査するんだ?」と銀天。
「南米大陸が始まる直前までだ。それからカリブ海の島だが、海がつながっていないので海軍の協力は得られない。」
「じゃあ、どうするんだ?」
「メキシコ海軍の船でカリブ海を調査するしかないな。」
「北アメリカ国にも連絡したほうが良いんじゃないのか?」
「うむ、確かに。あそこは双子と新しいくノ一がいるはずだ。」
「メキシコ湾とカリブ海の合同調査だな。」
マイアミでくつろぐラナたちの元に鳩が書状を運んできた。メキシコ組と協力してカリブ海の調査ををするようにとの指令だった。マイアミの漁師に頼んでキューバのハバナへ行き、そこで紫影たちと合流することになった。
「漁師のおじさん、怖がってたね。」ラナはボウガンを磨いている。
「カリブ海は海賊が出るってね。」
「パイレイツ・オブ・カリビアン!」ルナが突然わけのわからないことを言った。
「日本近海の海賊は、たしか奔吾のお父さんが殲滅したんだっけ。」
「こっちの海賊はどのくらい強いのかわからないから警戒を怠らないで。」
「30人以下なら私たち3人で何とか処理できるわ。」ラナは熱帯気候で意気が上がってる。
「メキシコ政府は、カリブ海の反社会的勢力を無力化して、安定した支配地にしたいということらしい。まあ、海賊に支配されている島で幸せな住民は考えにくいからね。」
紫影一行はキューバに降り立った。現地人のほかに皮膚が真っ黒な人間がいた。メキシコ政府の情報によると、イギリス人がアフリカから黒人を奴隷として連れてきてサトウキビ畑で使役していたらしい。いまはスペイン人が撤退したため、メスティーソが農場を引き継ごうとしているようだが、奴隷は反乱を起こし、プランテーションは荒廃していた。
「こういう荒廃した地域を地道に整理する仕事って...」紫影はため息をついた。
「俺たちに向いてないよな。」銀天は空を見た。
「何か変わった獣はいないかな。」奔吾は左の手に平を右の拳で叩いている。
「いるんじゃないか、デカい爬虫類とか。」銀天はにやりと笑った。
「メキシコ政府の要望は、奴隷を含む一般人の安全の確保、犯罪組織である海賊の殲滅。」
「一般人と言ってもメスティーソと黒人奴隷は反目して争ってるからなあ。」
「メスティーソの説得が先ね。言葉も通じるし。」
信高の隠された趣味、驚きです。




