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織田家のアナザー・ジャパン  作者: 青い水


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第24章 活命訓練の成果を活かせ

だんだんハワイの環境になじんできたかな。

 基地が完成した。水場を守るため中庭に浄水装置が配置されるように周囲を建物で囲み、寝所は2階に設置された。熱帯気候なので防寒の心配はない。ただスコールが多い。防水をしっかりしないと、様々なものが痛む。布や葉っぱでは雨水をはじけない。


「水と油って言うじゃない?筏の帆にするために持ってきた布に樹脂を塗り込んだらどうかしら?」


 安寿の提案に皆が納得した。樹木、それも樹脂がたっぷり取れそうな南国の生々しい樹木がたくさん生い茂っている。5人は手分けして容器いっぱいの樹液を集め、それを帆布に塗り込めた。


「帆布はいずれここで自作して増やさないといけないな。それと、雨風以外に湿度の問題がある。乾燥と除湿に対処しないと腐敗やカビで基地が痛む。いずれはもっと堅牢な基地を建設するとして、この基地を長持ちさせるためにも乾燥と防湿の対策を急ぐ必要がある。」天馬は年長者らしく先を読みつつ、現状で何が優先されるべきか判断を示した。

「乾燥ならあそこの崖の上に風通しの良い棚を作るのがいいかも。」

「おお、安寿は良い嫁になりそうだ。」

「銀天も良い下男になりそうね。」

「そして今夜のために、いや、明日からのためでもあるが、虫対策に蚊帳を作ろう。植物の繊維を取りだして編むという面倒な作業だが、俺たちの身体と食べ物を害虫から守るためには必要不可欠だ。」銀天は蚊帳の材料になる植物の種類を紙に書いた。

「明日は海岸へ戻って塩をたくさん作りましょう。肉や魚の保存に役に立つし、塩は何かと便利だからね。」安寿は蚊帳を編みながら微笑んだ。


 蚊帳のおかげで虫にも刺されず快適な夜を過ごした一行は、海岸で塩作りに励んだ。単純な作業なので、その合間に魚を捕る。日本では見たことがない色鮮やかな魚がたくさん取れた。沖合に目をやると、大きな魚が海面から飛び跳ねている。美しい青緑色で6尺は越えるだろう。


「あれ、いつかは狙ってみたいな。」銀天は目を輝かせた。


 大量の塩と大漁の魚を抱えて一行は基地に戻り、今後のことを話し合った。


「まずはここで採取できるものを材料にして薬の調合、そして現地の人間との接触、これが金竜疾風の潜入活動の基本だ。」

「ならば、効率のために調合班と捜査班に分かれましょう。銀天と私が捜査、鋼火と天馬が調合、これで良いわね?」

「良くない。無口だからっていないことにするな。」

「あ、ごめんね、奔吾。あなたは、そうね、強面だから調合班ね。」

「よし、安寿姉様、行こうぜ。」

「その姉様ってのやめな。2秒余計な時間がかかる。」

「はい、ならため口で、安寿、行こうぜ!」

「.....」


 地図を作成しながら安寿と銀天は島の東部へ進んだ。ずっと密林だったが、これといって危険な動物に出会うこともなく、2人は順調に密林を抜けて平地に出た。集落があった。広さから判断すると、人口規模は300人程度だろうか。接触すべきかどうか迷ったが、ここで引っ込んでは先へ進めない。安寿は銀天に耳打ちした。


「私が単独で接触するから、あなたはあの木の上に隠れて、場合によっては吹き矢で援護しなさい。」

「了解。」


 安寿はたむろする村人の前に進み出て、どうせ自分の知っている外国語は通じないだろうと考え、日本語で話しかけた。


「こんにちは、みなさん、初めまして。日本から流れ着いた安寿です。」


 笑顔でそう言うと、波にさらわれて海岸に打ち付けられたという寸劇を演じて、何とか理解してもらった。安寿は母親譲りの人なつっこい顔つきで、その笑顔は国や文化を越えて見た人の心を和ませる。村人の何人かは井戸から水を汲んで安寿に与えた。安寿は手を合わせて感謝を伝えようかと思ったが、手を合わせることが無礼な仕草の国もあるかもしれないと思い直し、丁寧に頭を下げた。村人たちは安寿を小屋で休ませようとしたが、彼女は密林を指さして、あちらに寝床があるということを仕草で伝えて、お辞儀をしながら後ずさりし、密林へ入った。それを確認して銀天も風のように木から木へ飛び移りつつその場を離脱した。


「接触できたよ!」

「やったな。で、どうだった?」

「300人ぐらいの村で敵意はない。むしろ親切で井戸の水をくれた。」

「そうか。こちらも傷薬と虫刺されの薬はできた。内服薬は治験が必要だからもう少しかかる。傷薬と虫刺されの薬は身振り手振りで商売できる。商売と言っても銭金ではないだろうがな。俺たちだけで大量に入手できない素材などと交換しよう。」

「私良いこと思いついた。」鋼火が自信満々で言った。

「私、実は絵がとても上手いの。お絵かき会話、できそうだわ。」

「なるほど、では予行演習してみようぜ。」

「そうね、まず自己紹介ね。私たちの関係を紙芝居で物語りましょう。まず天馬と安寿のお父さんとお母さんが出会って...」

「おい、そこから始めなくても良いだろ。親の馴れ初めとか気まずすぎる。」


 翌日、一行は連れだって集落へ赴き、まず村人たちに飴を献上した。食べ方がわからないこともあると母から聞いていた安寿は、自分で一粒頬張って、口を開けて舌で転がしてペロペロ舐めて見せた。甘酸っぱい香りが立ちこめた。村人たちは警戒することもなくこの甘い贈り物を受け入れ、飴を舐めるという人生初めての行為にしばし恍惚となった。


「さあさあ、これを見てね。」鋼火は紙束を取り出し、薬の宣伝を絵で伝えた。蚊に刺されて腫れ上がった皮膚に軟膏を塗ればあら不思議、痒みも取れて腫れも治った。木の枝でこすって血が出た切り傷、この液体を塗ればあら不思議、血は止まって痛みも消えた。なぜでしょう?なぜかしら?魔法、魔法なの?そう、これは魔法の薬。これ、置いていくから試してみてね。私たち、また来るわ。


 話はすべて村人に伝わったようだ。すでに軟膏を塗り込んでいる村人もいた。一行と村人たちの信頼関係がはっきりと上昇した。基地と村は1時間ぐらいの距離だが、木登りとジャンプで突破しなければならない密林があるので、村から基地へ来ることはできないだろう。


 翌日、安寿と鋼火は蜂蜜と花の蜜と甘い果実を捜して密林を探索し、彼女たちにとっての好物の探索であるためか、多くの収穫を得た。食糧や素材や道具の採取や生産の仕事を男たちにまかせ、2人は大量の飴やお菓子の生産に着手した。もちろん試作品を味見しながら完璧を期す仕事である。ハワイに来てから最も幸福なときを2人は過ごした。

挿絵(By みてみん)

「奔吾と銀天は、手の空いたときに紙を漉いておいて。これから大量に必要になるから。それと、絵を描くための染料ね」安寿がテキパキと指示を出す。

「私たち、これから村へ行って子どもたちを甘やかしてくる。」鋼火はワクワクが止まらない様子で言った。


甘味くノ一の2世3世が、村の子どもたちを「甘やかす」?

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