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織田家のアナザー・ジャパン  作者: 青い水


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第23章 偽装蒸気船で常夏の島へ

あああ、憧れのハワイ航路♩

 尾張の金竜疾風本部に5人の忍びが集められた。その中には22歳の安寿と23歳の天馬もいた。


「樺太から来た安寿です。」

「同じく天馬です。」

「尾張の銀天だ。」

「台湾の奔吾だ。親父の潜入名が俺の名になった。」

「長崎の鋼火です。」


「おまえたちには海軍の新造戦艦に乗って太平洋の中心まで行ってもらう。しばらくは帰ってこられないと思え。」


 港に行くと真新しい帆船が待っていた。整列する海軍の水兵は約200人。

挿絵(By みてみん)


「良く来たな、金竜疾風よ。私が船長の九鬼だ。これから貴様たちには太平洋のほぼ真ん中に向かってもらう。かなり遠いが、この新世界丸の速度を持ってすれば、1ヶ月以内に到着するだろう。貴様等は下船したらそのまま潜入。しばらく増援もなければ連絡手段もない。貴様等に言うべき言葉ではないかもしれんが、上手く立ち回らなければ死ぬぞ。良く励め。」


 出港した船は風もないのに驚くべき速度で波を切って進んだ。船尾の付近に飛び出た円筒からは止めどなく煙が噴き上がっていた。煙の他に大量の湯気が船倉から立ち上がってきた。


「この下に大きなお風呂でもあるんですか?」鋼火が嬉しそうに尋ねた。

「風呂はさすがにないな。温水で行水はできるがな。それもドゥーシェ、西洋式の噴水行水だ。気持ち良いぞ。ただし個室ではなくて横一列の10人用だ。女子(おなご)には使いづらいかな。」

「いえ、大丈夫です。身のこなしには自信があるので、見えているのに見えないように湯浴みができますから。」


 忍者たちには男と女で船室が2つ与えられた。船室に荷物を置いて、5人は甲板を散策し、風通しが良くて煙が来ない場所を見つけてそこに座った。


「さて、もう少し自己紹介をしておくか。俺は23歳でたぶん最年長だな。安寿とは兄妹だ。樺太から来たが、元々は甘雪で生まれた。母も金竜疾風だった。」

「私たちの母は甘雪が建国される前からあの地に残って、現地の人たちを束ねてきたの。」

「おう、知ってるぜ。義務学校の教科書にも出てきたからな。粉雪さんだ。俺の親父もハバロフスクで一緒に戦ったことがあるって言ってた。」

「俺の親父は南の港町アモイに潜入していた。そこで母ちゃんと知り合ったと言ってた。どんな仕事をしていたのかは聞いたことがない。」

「私の祖母は天竺に潜入してイギリス人のチーフ・メイドをしてたって。のど飴作りが得意だったわ。」

「あら、奇遇ね。うちの母も飴作りが大好きよ。」


 追い風のときは帆も上げて風を捉え、新世界丸はわずか20日程度でハワイ沖に到着した。5人は小舟に乗ってハワイ本島に上陸した。ヤシの木が茂り色鮮やかな蝶が舞う、ため息が出るほど心が安まる美しい島だった。砂浜に人の気配はない。とりあえず警戒しながら砂浜を後にして水場を探すことになった。奔吾以外は南国の経験がなかったので、目に映る動植物のどれもが目新しく、彼らは警戒しつつもつい光景に飲み込まれそうになっていた。鮮やかな赤い花を咲かせた低木に近づいた銀天が、花の蜜を吸う蜂を見て驚いたように声を上げた。


「見ろ、この蜂!体中がまるで菫青石のように真っ青だ!」

「蜂ですって?ならば近くに蜂の巣が。」安寿が嬉しそうに防護網を取りだした。

「待て、こんな色の虫が集めた蜜が大丈夫だと思ってるのか?」

「確かめてみよう。これから長いんだ。使えるか使えないか、すべて確認して記録しないとな。安寿、近くに蜂の巣は確認できるか?」

「あったわ、あそこよ。蜂の巣もうっすら青いわね。」

「良し、2つに割ってこの粉をかけよう。」


 安寿が防護網で蜂の攻撃を防ぎながら忍刀で巣を両断すると、天馬が粉をかけた。気泡がぶくぶく出るのを確認すると、安寿は残念そうに、「これは使えないわね。」とため息をついた。


 しばらく進むと、ツタの絡まる太い幹の樹木の下に湧き水を発見した。天馬は水を木の葉で掬ってそこに粉をかけた。「良し、大丈夫だ。」


 ツタを足場に木の上に登ると、寝床が作れそうな木の股がいくつかあった。一行は豊富にある厚手の葉を集めてそれぞれ寝床を作ると、下に降りて水を飲み、しばし休憩した。


「これで夜は眠れそうだ。何か食べるか?」

「私、飴をたくさん持ってきた」と安寿。「あら私もよ」と鋼火。飴好きくノ一の2代目3代目は嬉しそうに微笑みあった。


 本格的な探索と狩りは翌朝を待つことにして、日が暮れてきたのでさっき準備した寝床に入って朝を待つ。蚊除けの軟膏を塗って寝たが、甘味好きの2人はそこそこ刺された。


 朝が来た。植生を見る限り、この土地は雨が多い。洞窟を見つけるか、小屋を建てるか、雨をしのげる場所を確保しないと、この先の探索が続けられない。湧き水から飲み水を補給すると、5人は磁石を見ながら東を目指した。下船するときに船の羅針盤で確認した結果が間違っていなければ、到着した砂浜は島の西部であろう。簡易的な地図を作成しながら一行は進む。


「あ、川だわ。」力強く生い茂る熱帯の樹林の隙間の向こう側を指さして鋼火がつぶやいた。近づくと幅20尺ほどの川があり、流れはけっこう速かった。

「このままじゃ飲めそうにないわね。」容器に水を汲んでみた安寿が言った。

「船で使われていた淡水化装置と同じような仕組みで水を作り直せば安全だな。」銀天が紙に設計図のようなものを描きながら言った。

「要は、水を蒸発させてから出来た水滴を集めれば良い。手間はかかるが仕組み単純。みんな、ここに書いた材料を集めてきてくれ。」


 5人は散って木材や石や岩を運んできた。銀天が設計図を手に装置の組み立てに取り掛かった。彼は持ち込んだ資材を見ながら、即席の指示を出す。「まず、これで枠組みを作る。この大きな平たい石を熱源の受け皿に使う。それから、鋼火、水を通す細い竹の管を取ってきてくれ。それを蒸気の通路にしよう。」奔吾が持ってきた木片を削り、円形の蓋に加工して蒸気を逃さない仕組みを作った。天馬は、川から直接水を引き込むための小さな木製の関を構築した。「これで水を一定量流せるな。さあ、次はこの竹筒を接続して、蒸発後の水を集める部分だ。」


 作業が進む中で、安寿が発案した。「蒸気を冷やすために、この湿った葉を利用すればいいんじゃない?熱を効率的に奪ってくれるわ。」銀天がその意見に頷き、冷却道に葉を敷き詰めて蒸気を効率よく凝縮させる試みを追加した。完成した装置に銀天が火をつけると、水が蒸発し始め、竹の管を通って冷却器に到達し、数分後、最初の水滴が集められた。


 鋼火がその水をすくい上げて口に含む。「うん、美味しい!完全に飲める水だわ。煮沸してあるからおなかを壊すこともない。」全員がほっとして笑みを浮かべた。全員が安心したところを見計らって、天馬が言った。「これで水の心配はなくなった。この設備を守らないと今後の活動に支障を来す。それゆえこれを守るようにここに拠点を築く。雨風をしのぎ、安全に睡眠と食事が取れる基地だ。幸い木材は捨てるほどある。食材を集めながら、木こり仕事と大工仕事だ。がんばろうぜ。」





活命訓練で培ったサバイバル能力、金竜旋風の実力発揮です。

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