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織田家のアナザー・ジャパン  作者: 青い水


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第22章 新世界への旅立ち

いよいよ未知の領域へ進出です。日本はオスマン帝国と出会うのか?

 日本海軍の外洋船信長丸は単独で天竺のチェンナイを出港した。行き先は西のアラビア海、日本にとっては未踏の海域である。チェンナイに潜入中の金竜疾風も、天竺より西の世界についてはあまり情報がなさそうだった。唯一彼らが知っていたのは、大きな帝国が勢力を拡大しているらしいということだけだった。


「なかなか港が見つからないな。」徳川丸の船長は望遠居で陸地を観測しながらつぶやいた。アラビア湾のかなり深いところまで進んだところに、植物や建物が見えた。大きな都市だ。港もある。港湾に入る前に旗を掲げ入港の希望を伝えた。やがて港から三角帆を付けた港湾警備隊の船が現れた。乗船意思を示しているので縄ばしごを下ろした。


こんにちは(ブエナス・タルデス)!」船長が声をかけた。

こんにちは(ボア・タルヂ)、カピタン!」と返事があった。少し違うが、まあ通じるだろう。船長はこれがポルトガル語であると推測した。かつてマニラで、スペイン人とポルトガル人がそれぞれ自国の言葉を話しながら酒場で酒を飲んでいるのを目撃したことがある。

「どこから来たのですか?その黄金に赤丸の旗は見たことがないのですが。」

「日本だが。」そう言って船長は知っている限りの言語で日本と言ってみた。

「なるほど、いま有名になっている強い国ジャポンですね。遠路はるばる良くおいでくださった。どうぞ入港ください。一通りの手続きの後、国王に謁見いただきましょう。」

 

「良くいらっしゃった、カピタン。余はオマーンのスルタン、イブン・サイフじゃ。楽にするがよいぞ。」

「このたびは我々をお迎えいただき、深く感謝いたします、スルタン。私、カピタンの九鬼善三と申します。我々は、平和的な使節として訪問させていただきました。貴国の名高い繁栄と文化を直接拝見できること、大変光栄に思います。」

「うむ、市内に宿を用意させた。ごゆるりと見物なさるが良い。案内の者を付けるゆえ、日本の話も聞かせてやってくれ。」

「ご親切に感謝申し上げます、スルタン様。心よりの温かいおもてなしに感激しております。市内を拝見し、貴国の素晴らしさを学べる機会をいただけること、光栄に存じます。また、日本のことについてお話しできることも楽しみです。」


「酒場がないな。」探索から帰ってきた水兵たちがしゃべっている。

「宗教で禁じられてるんじゃないか。そういう宗教もあるからな。」

「なるほど、ではしばらく禁酒か。」


 九鬼の眼にオマーンの都マスカットは、彼が知るどの異国の町より異国風だった。モスクと呼ばれる寺院が建ち並び、その鮮やかな色合いや美しい模様は、これまで見てきた寺院とは全く違う宗教的な雰囲気を醸し出していた。そのモスクから時折流れてくる詠唱は独特の音色で、各モスクから流れ出る詠唱と絡みつつ一体となって町全体に溶け込んで行く。宗教の威厳をこれほどまで肌で感じたのは、九鬼善三にとって初めての経験だった。

挿絵(By みてみん)

 信長丸はマスカットに1週間滞在し、スルタンより国王への書状と友好の記念の品を受け取って出港した。マスカットの官吏から渡された海図に従って、アラビア海からアデン海、そして紅海へ向かうのだが、紅海とアデン海の間に海の難所、現地の言葉で「涙の門」と呼ばれる海峡があった。九鬼の的確な指示で信長丸はこの海峡を乗り切り、紅海を北上して突き当たりまで到達した。


「さて、ここまで来たからには、大帝国にも挨拶しておこう。総員、入港準備!」


 オマーンのときと同じような手続きの後、信長丸はスエズに入港した。ここは都ではなく、貿易港である。都はここから30里ほど西にあるカイロという町で、元々はこの帝国ののものではなく、150年ほど前に帝国に組み入れられたらしい。この付近には古代の巨大な遺物が点在するそうだが、砂漠の中にあるので見物は難しい。


 九鬼は地方行政官に簡単な謁見を済ませるた。そこでこのオスマン帝国がどれだけ広大でどれだけ強大かという話を丁寧に聞かされた。それが終わると九鬼は水兵たちと町を見て回った。さすが貿易の要の港だけあって、市場には見たことがない品々が並んでいた。鮮やかな布地、色とりどりの宝石、特に水兵たちを魅了したのは真珠だった。妻に、恋人に、この銀色に輝く宝石を贈りたい。水泳たちの目は輝いていた。スエズには3日滞在して、やはり国王への書簡と友好の記念の品を預かり、信長丸は帰途についたのであった。


「おーい、信高!」


「隠居はしないからな。」


「まだ何も言ってないが。」


「いや言う口になっていただろうが。親父もお爺ちゃんも引退させてばかりだったな。」


「後がつかえていたからな。」


「今は1660年で俺は35歳、息子は10歳、まだまだだ。」


「わかった。なら続投だ。」


「なんだ、ゾクトウって?」


「まあ気にするな。ところで船はどうなってる?」


「もう蒸気船は完成したぜ。しかも外国にばれないように偽装してな。」


「ほう、偽装とな?」


「ああ、この技術はとてつもない威力を発揮するので、秘密にしておかないと。」


「外国にばれて真似をされたら困るか。」


「その通り。なので見た目は今までと同じで、秘密は船倉の奥に隠しておく。」


「なるほどな、良く考えたな。」


 造船所

「ねえ、所長。なんでこんな複雑な仕掛けにしたんです?船の両脇に大きな水車を付けて蒸気で回せば簡単なのに。」

「ばーか、それじゃすぐにばれてしまうだろ。良いか、この技術を持っているのは日本だけなんだ。外国にばれて真似されたら大変なことになるぞ。」

「ああ、そうか。だから俺たちも造船所の敷地内に住まわされてなかなか外に出してもらえないんですね。おまけに箝口令がしかれて、秘密をばらしたら死刑だとか。」

「それだけ重い秘密ってこった。世界をひっくり返しかねない。いいか、船を走らせることができるってことは、工場の機械を回すことだってできるんだ。水汲みだって、石炭採掘だって、なんなら石炭の輸送だってできてしまう。そんな技術をおおっぴらにしてたら、おまえ、外国人たちがこぞって真似して大変なことになるだろ。慎重に行動しろよ。」

「へい、わかりやした。」


イギリスに先立つこと50年前、本格的な実用化ということで言うなら100年前に蒸気機関を実用化しましたから、そりゃあ慎重に扱わないと。

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