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織田家のアナザー・ジャパン  作者: 青い水


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第21章 決戦、アムール流域の攻防!

いよいよ決戦ですが、準備万端みたいですから、あまり心配はいらないかな。

 約束の日が来て、ロシアと清の代表がハバロフスクにやってきた。簡素な行政府を品定めするようにじろじろ見ながら、代表団は会談の間に入ってきた。


「甘雪の女王よ。」

「いえ、私は女王ではありません。民意によって選ばれた代表者にすぎません。」

「ならばそれで良い。われわれの要求を伝える。ロシアと清、この2国の固有の領土を長年にわたって支配し、甘雪などという不審国家を自称し、われわれの自由な行動を武力で制限してきた罪、とうてい看過できない。よって来月までに国家を解体してこの地を去るか、あるいはわれわれに恭順を誓い支配を受け入れるか、早急に協議して決めるが良い。返事がない場合は、来月の1日をもって総攻撃をかける。」

「了解いたしました。色よい返事を出せるよう努力します。」粉雪は笑顔で答え、片手を挙げた。儀仗兵たちが代表団の両脇に整列し、慇懃にしかし威圧的に退去を促した。


 清とロシアが甘雪に国家解体を要求した3日後に信高は両国に宣戦布告した。そして予定通り作戦が粛々と実行されていった。ウラジオストック沖半里の沖合に日本海軍の軍艦10隻と駆逐艦30隻が展開した。陸軍の揚陸部隊を乗せた兵員輸送船も10隻、海軍の背後に展開している。樺太のボギビからは物資と兵士を乗せた輸送船が5隻、毎日ハバロフスクとの間を往復していた。そして、これはロシアにとって全くの想定外だったと思われるが、カムチャッカの南端の石黒港からも部隊がオホーツク海に展開し、ロシアが北から迂回して攻撃する場合に備えた。


 総攻撃の日が来た。国境の城壁に迫る清・ロシア混成軍は、小型大砲の標的になった。各砲眼には取り外し可能な小型の大砲が3門用意され、5人の兵士によって運用され、連射が可能だった。ウラジオストック沖合の海軍は、ウラジオストックの東方に進んで対岸に艦砲射撃を浴びせ、揚陸艦を着岸させて陸軍を展開した。これでウラジオストックの町の防御は万全になった。カムチャッカから出撃した部隊は、オホーツク海沿岸に薄く広く展開し、揚陸部隊はヤクーツクを目指した。ヤクーツクを陥落させないと、アムール河口が危険になるし、将来的にはカムチャッカ侵攻の足場にもなる。清は東海沿岸の各港から海軍を出撃させたが、日本海に到着する前に日本海軍の西日本艦隊にすべて撃沈された。国境となる北部要塞にはたくさんの甘雪国民が詰めかけ、銃眼から敵兵を狙撃した。敵兵は敗走を始めた。


 戦争が始まって1週間後、敵は降伏した。圧勝だった。この報はヨーロッパにも伝えられ、太平洋における日本の実力に各国が驚嘆した。戦後処理が始まった。日本側の要求は次の各項目である。甘雪を正当な独立国家として認め、誠意と礼節を持って接すること。画定されている国境を不可侵のものとして認め、東方、北方のまだ画定されていない土地に関しては、今後の誠意ある対話に委ねること。戦争賠償として黒テンの毛皮1000枚を甘雪に納入すること。


「信高よ、まだ隠居しないのか?」


「青水か、ふざけんなよ、まだ30歳だぞ。まだこれからだ。それに息子の信康はまだ5歳だ。俺は親父たちと違うから十代で子ども作ったりしないんだよ。」


「そうか、堅実だな。ならばあと15年ぐらい頑張ってもらうか。で、前回のアドバイスは形になったか?」


「ああ、あれはなかなかの難題だったな。技術者たちが頭を付き合わせながら何年も試行錯誤していた。特に難しかったのが、蒸気で生まれた上下運動を回転運動に変える仕組みだった。どうにも解けない難題だったが、農家出身の工業学校の教師が水車を見ていてピンときたんだ。上から落ちる水が水車に当たって水車が回る。ならば下から突き上げる蒸気の力が水車を回すことができるんじゃないかってな。」


「ほう、それは良く気がついたな。」


「原理を見つければあとは簡単。蒸気で水車を回す仕掛けが完成した。これで船も動かせるかもしれん。造船所で開発中だ。」


「ロシアと清はその後どうだ?」


「ロシアはアジア支配をほぼ諦めたようだ。カムチャッカにたどり着けないことが確定したからね。甘雪はあのあと巧みな外交交渉でカムチャッカ半島の根元を含むベーリング海沿岸からヤクーツクまでの線を国境に定め、さらにヤクーツクからイルクーツクまでの地域も領土として確保した。国土の広さだけ考えれば、日本に引けを取らない大国になった。粉雪と竜之介は引退して、子どもたちとともに樺太へ移住した。最後は日本が良いそうだ。」


「そうか、それは良かった。ロシアはヨーロッパの国として生きて行けば良いよ。顔も体格もあっちの人間だしな。」


「海軍の外洋船は、太平洋のどこにでも行けるようになった。新しい島もたくさん見つけて地図に載せた。南太平洋はまだ探検してないが。」


「まあボチボチやるさ。ヨーロッパみたいに植民地を増やそうとは思ってないからな。」



 造船所


「久しぶりだな、所長、ってか初めましてか。前の所長は引退したらしいな。」

「そうなんですよ、信高様、私が現在の所長です。」

「新しい動力の船ができたそうじゃないか。どれだ?」

「こちらでございます。まだ試作機なので小型船ですが。」

「おお、船の両側に水車のようなものが付いておるな。」

「はい、これが蒸気の力で回り前へ進みます。」

「よし、早速乗ってみよう。所長が動かせ。」

「かしこまりました。」所長は蒸気機関に火を入れた。

「おお、水車が回って水を掻いてどんどん進むぞ。これは快適だ。」

「人が漕ぐより倍の速さになります。」

「こいつが軍艦や駆逐艦になれば向かうところ敵なしだな。」



 日本政府は樺太の粉雪夫妻からの提案を受け入れ、石炭の採掘に制限をかけた。確かに無限に掘り出せるものではないだろう。何にでも言えることだが、蕩尽はよくない。なくなってから悔やんでも仕方がないのだ。資源は有限だという指摘が自然学校からも出された。蒸気機関の研究の副産物として、燃やせば力になるという原理が知れ渡った。軍隊はさっそくこれを利用し、市内や兵舎から出るゴミを燃やして、そこでできたお湯を兵舎の風呂に利用し、蒸気機関を稼働させて支給品の軍服などの洗濯をした。ゴミを燃やして風呂を沸かす仕組みは、すぐに民間へも伝わり、各地に安価な銭湯が設置され、国民の衛生状態は画期的に上昇した。


 6代目斑鳩は信高と面談し、90年近く続く金竜旋風の掟を改訂する許しを得た。これまで組織の忍びは里から抜けることが許されず、引退した残りの生涯を、里の中で薬の調合や後進の指導、上級学校での教育に捧げて一生を終えることになっていたが、6代目頭領は粉雪の例を見てこの慣例を改め、自由に人生設計できるように掟を変えることを信高に提言した。信高に異存があるはずもなくこの提案は受け入れられ、忍びのセカンドライフは多彩なものになったのである。


 紅影は早期引退を申し出て、琉球で歌姫たちの指導を始めた。台湾や東南アジアで歓楽街が発展し、船乗りたちが遊興施設で豪遊する。歌と踊りはいつでも需要があるので、紅影の学校にはたくさんの娘たちが押し寄せた。歌姫たちは酔った船乗りたちからたまに有用な噂を耳にすることもあるので、情報収集にも役立つのだった。


 群青はオランダ人相手のナイトツアー・アテンダント会社を立ち上げた。将校や商人などの乗客が安全に夜遊びできるようにナイトライフをアレンジする仕事である。忍び時代に築き上げたコネや人間関係を利用して、会社は大躍進した。


 ボングは故郷の台湾で琉球空手の道場を開いた。父親はまだ元気だ。台湾の若者は将兵採用試験に挑む者が多く、格闘以外の科目にも対応するボングの道場は繁盛した。ボングはマカオで中国人とポルトガル人の混血の女アルミナと知り合い、恋に落ちて結婚していた。アルミナは、水夫だった父親の顔を知らない、酒場の踊り子だった。もちろん中国語しか話せない。ボングはアルミナを伴い台湾へ戻り、組織の新しい掟に従って、引退して道場を開いたのだった。今は子どもが4人いる。

 


金竜疾風の皆さん、セカンドライフが充実して良かったですね。

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