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織田家のアナザー・ジャパン  作者: 青い水


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第20章 清とロシアの結託

外洋航海の準備は着々と進んでいます。南国リゾートを満喫、している余裕はありませんけど。甘雪には何やら波乱の予兆が。

「おい大変だ、忍風、北京が情報を掴んだぞ。甘雪がヤバイ。」

「どうした?」

「近々清とロシアが条約を締結するらしい。」

「これまで国境で小競り合いをして仲が悪かったじゃないか。数年前には大々的にやり合ったし。」

「うん、だがここしばらくは争いも起こらず、友好的に交易も盛んになってきたそうだ。」

「なぜそうなった?」

「ロシアが北を迂回してシベリアを掌握し、オホーツクからカムチャッカに攻め込みたいらしい。」

「野心が大きすぎるわね。」

「そこで甘雪を突っついて日本がどう出るか様子を見る模様だ。」

「日本に報告しましょう。条約が締結されてからだとまずいわ。」

「おう、日本と甘雪の密接な協力が必要になる。」


「父上、母上、それでは行って参ります。」

「この輸送船に乗ればあっという間に樺太です。港にはおじさんとおばさんが迎えに来ているから心配いりません。がんばって学校で勉強するのですよ。」

「はい、がんばります。行って参ります。」


  グアム島タモン湾

「かー、暑いな、さすが赤道に近い島だ。」

「俺たちが日本人で始めてのグアム上陸かな?」

「そうかもな。おまえスペイン語喋れる?」

「軍隊学校でみんな習っただろ?」

「そうだけど、ちょっとだけだったし、ほかにも中国語もやらされて、ぐちゃぐちゃになった。」

「はっはっは、俺もだ。」

「ちょっと日本の兵隊さん!マンゴーはいらんかな?甘くて上手いよ!」

「お、いかにも旨そうだ、1つくれ。」

「俺にも。」

「兵隊さん、あの岬が見えますか?あそこはね、カボ・デ・ロス・アマンテスです。恋人たちが結ばれない定めを嘆いてあそこから海に飛び込んだのでそう呼ばれています。」

「あそこまで登って鎮魂をお祈りしようぜ。」

「そうだな、あの世で結ばれて幸せになってくださいってな。」



信吉の妻双葉は頭から湯気が出るほど怒っていた。目安箱への投稿に、信吉が演じた餅つき漫才を絶賛するものがあったと報告があったのだ。その投稿には、こともあろうに夫婦漫才の相手役が正室の自分だと書かれていたではないか。彼女は歯ぎしりして夫を呼びつけた。


「あなた、これはどういうことですの?」

「うっ、こ、これは...」

「隠居したからといって何をしても良いというわけではありませんのよ。」

「は、はい。」

「離縁させていただきます。」

「な、なんと。」

「こんな生き恥をかかされて生きてはいけません。離縁して自害します。」

「いや、ちょ、待って。あやまるから、ほんとごめんてば。」

「いいえ、なりませね。」

「ちょ、おま、刃物を振り回すなって。」

「国民に頭を下げてお詫びし、相手方は決して正室の双葉ではないこと、今後一切漫才はやらない、と宣言しながら日本中を回ってもらえますか?」

「わかった、何でもする。」


 こうして信吉の全国土下座旅が始まったのだが、演芸場に集まる客には漫才以上に大ウケだったという。



「おーい、信高、国王になって5年経つが調子はどうだ?」


「おお、青水、久しぶりだな。調子は上々だぞ。」


「親父の信吉は壮健か?」


「ああ、最近は衣装が派手になってな、金色の羽織袴でしょっちゅう京都に行ってる。」


「ほう、京都へとな。」


「歌や踊りに凝っているんだとさ。でも、おそらく浮気もしてるね。」


「そうか。まあ捨て置け。その程度なら害はない。それより、外洋航海はどうなった?」


「ついにメキシコのアカプルコに到達したぞ。日本海軍の船員だけで運用できた。」


「それはすばらしい。」


「メキシコではスペインがやりたい放題だ。原住民を捕らえて銀山や農園で強制的に働かせて富を国王に献上している。スペインにとって黄金の山だ。」


「うむ、しかし奪い取った富で栄える国は生み出した富で栄える国にはかなわないものさ。」


「そう、なのか?」


「まあわからなくてもいい。それより良いことを教えてやろう。久しぶりのアドバイスだ。」


「おう、何だ?楽しみだな。」


「石炭の採掘は安定しているな?これを使って動力とする。良いか、信高よ、やかんを火にかけているとどうなる?」


「お湯が沸騰する。」


「沸騰するとどうなる?」


「蓋がカタカタ動く。」


「そうだ。もし蓋が外れないようにやかんに固定し、なおかつ注ぎ口を塞いだら?」


「破裂するだろうな。」


「その通りだ。では破裂とは何だ?」


「内側からの力に耐えきれず外壁が壊れることだ。」


「その通り。アドバイスは、その内側からの力を動力に変えられたらどうか、という話だ。」


「おお、なんだかすごい発明になりそうだの?」


「実際には長い実験の試行錯誤が必要だが、製鉄所や窯業所、工業学校、さらには機械に詳しい武器職人からも人材を出して、この仕組みを国家課題として研究させるんだ。実現すれば、風に頼らず動ける船も作れる。」


 甘雪にはここ数年でたくさんの日本人技師がやって来るようになった。技師は、土木、建築、採掘の技術を甘雪に伝え、対ロシアの防壁も国民総出で建設が進み、砦には大砲も設置された。オホーツク方面に新たに広がった国土に住む人々には、煙突を備えたレンガの暖炉に石炭をくべる新しい暖房が提供され、厳しい冬を乗り越えることができるようになった。大きな炭鉱が5つ発見され、自国で使えきれないほどの石炭が採掘できるようになった。しかし、粉雪の提案で採掘量は制限され、将来枯渇しないように配慮された。交易は主に日本との間で行われ、上質の毛皮が輸出された。毛皮は日本からオランダに高値で買い取られ、甘雪と日本の外貨獲得の要となった。


「父上~、母上~!」輸送船の甲板から安寿と天馬が手を振る。12歳と13歳の立派な少年少女に育った粉雪と竜之介の子どもたちだ。

「長期休暇になったので戻りました。」

「おお、大きくなったな。」竜之介が抱き上げようとしたが、安寿は後ずさりして、「父上、もう子どもではありませんので。」とにらんだ。


「おい、忍風、大変だ!北京のやつらが掴んだぜ!清とロシアが条約を交わす。」

「何ですって!」

「数日中に発表するらしい。国境を定めて国交を正常化し、さらに東部領土の正常化に腐心する、と。」

「それって?」

「ああ、甘雪だ。甘雪を潰す気だ。」

「日本に報告するにも、数日中じゃ間に合わない。」

「ハバロフスクだ。甘雪の都に報告すれば、日本へも連絡がつくだろう。」

「よし、すぐに出発しましょう!」

宵闇に紛れて出発した2人は、小舟に忍び道具の折りたたみの帆を張って、アメンボのように音もなく川を下った。


「お初にお目にかかります、粉雪様。」

「同じ金竜疾風なんだから、かしこまらなくてもいいのよ。」

「はい、実は緊急報告です。清とロシアが条約を結びます。」

「奴らは甘雪を潰しに来ます。『東宝領土の正常化』といって、甘雪の国土を分割するつもりです。」忍風に続いて犬蔵が言った。

「なんという...。」粉雪はしばし考えて、竜之介に言った。「いますぐこの輸送船で樺太に向かってちょうだい。樺太からならすぐに信高様にも話は伝わるはず。日本で対策を協議してちょうだい。」

「わかった。」



 数日後、北京でロシアとの新条約の締結が発表された。発表後すぐにロシア軍と清軍が東方に進軍し、甘口の国境付近に展開した。ロシアと清の使者がハバロフスクの行政府を訪れ、5日後の両国代表の訪問を伝えた。


 信高は蝦夷の小樽に来ていた。甘雪の情勢の報告を受けて、指示を迅速に出すためには、尾張からでは間に合わない。尾張を出るとき、陸軍と海軍の大将に命じて、樺太に大部隊を展開させた。かなりの大規模な戦になるだろう。ここで引くわけにはいかない。樺太から進軍する部隊以外に、小樽からもウラジオストックを支援するために出兵する必要がある。蝦夷地にはたくさんの人馬や艦船が集まり、まさに戦争前夜の緊張感が辺りを包み込んでいた。その静寂の中で、ひとたび風が吹けば、全てが動き出すような危うさが漂っていた。甘雪の危機の報を得てから、金竜疾風は蝦夷から甘雪までの伝書鳩通信網を構築した。各所に中継所を設置し、迅速な情報共有を可能とした。まさに諜報機関としての面目躍如である。

「ふっふっふ、鉄砲と兵隊だけで戦に勝てると思うなよ。」信高は武者震いをした。



いよいよ開戦です。日本にとって久しぶりの戦です。どうなるのかな?

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