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第2章 桶狭間は超楽勝だった

今川を楽勝で倒してしまいました。そして富山の薬売りに先立って富山の薬売り方式をパクって、日本中に薬を売りながら情報収集する仕組みも作ってしまいました。金がバコバコ入ってきます。

 鉄砲量産の目処が立った信長だが、これからしばらくは尾張の統一というやっかいな仕事に取り組むことになる。青水はしばらく顔を出していない。この時期、織田家は尾張国内で複数の分家が存在し、それぞれが独自の勢力を持って対立していたのだ。皆が織田を名乗り、下の名前にも必ず「信」がつくのでややこしい。父信秀を亡くした信長は家督を継ぐが、他の分家や弟信行との闘争に勝ち抜かなければ、天下統一どころか尾張統一もできない。この段階で用意できた鉄砲は100丁に増えた。まだ主力部隊にするには足りない。まず当面の敵は、尾張国の守護代、織田信友だ。信友は重職に就いていることもあり、かなりの実力者だが、信長は青水のアドバイスで忍びの組織を強化拡大していたので、暗殺や謀略の限りを尽くして敵対勢力を弱体化し、見事に信友を討ち取って清洲城を手に入れることに成功した。これで尾張統一までの重要な一歩が刻まれた。


 信長は、今川の情勢の諜報活動をするのに適した東部に忍びの隠れ里を作った。場所は瀬戸である。瀬戸は瀬戸物として知られる陶器製造の本拠地で、そこに忍びの里を作れば堂々と工房を開けるので、忍び道具の開発や生産もできる。工房は、技術漏洩を防ぐために関係者以外立ち入り禁止とし、ふいごなど鉄の加工も可能な設備を備え、忍びの武器もここで作られることになった。また薬剤生産に必要な薬研(やげん)や臼や杵も用意された。信長は領内に募集をかけ、13~18歳の男女を集めて能力のテストを行い、300名を採用して瀬戸の里に入植させた。以後、この集団は「金竜疾風」と呼ばれるようになる。

挿絵(By みてみん)

 信長の台頭におそれを成した敵対勢力は、信長の弟信行を担ぎ出して信長に対抗する。もともと信行は兄が家督を継いだことに不満だったのだ。しかしそんな策謀は、金竜疾風によって細部まで信長に筒抜けだった。領内の膿を出し切るチャンスとばかりに、信長は全員を討ち取って、尾張統一の歩みをさらに進めることになる。

 

 対馬の宗氏との関係も無事に構築し、鉄鉱石も順調に手に入れられるようになったので、この時点で領内の鉄砲は500丁に増えた。これは急速に増産する必要がある。しかし領内で鉄砲が生産できるというのは強い。コウモリの糞も大量に集まった。硝酸精製は順調だ。対馬の宗氏には、鉄鉱石との交換で鉄砲と弾薬を融通することになった。かつて蒙古が攻めてきて大変なことになったので、防衛力強化は宗氏にとって喫緊の課題だった。

 

「おう、久しぶりだな、信長。髭なんて伸ばしちゃって、ずいぶん貫禄をつけたな。」


「おお、青虫か、久しいのお。」


「ちっ、おまえ。わざと間違えたな。青水だっての。調子に乗ってるとアドバイスしてやんねんぞ。」


「すまんすまん、青水よ、して今度は何のアドバイスじゃ?」


「まあ、そうせっつくなって。おまえ、順調に尾張の統一を進めているようだな。」


「うむ、おぬしに勧められた忍び組織の強化、思った以上に効果があっての、敵の情報はほぼもらさず手には入るし、暗殺も離間の計もばっちりだ。」


()()()()()()?」


「忍びを使って敵側の人間を裏切りに誘導することじゃよ。こないだもくノ一を使っての。」


「あーあー、わかった。上手くいっておめでとさん。で、これからは今川とやり合うんだろ?鉄砲は順調に生産できているか?」


「いまのところ500丁じゃの。」


「そか、まだまだ足りないな。まあ、おまえなら今川ごとき、鉄砲なしでも勝てそうだが、ひとつアドバイスをしよう。大型の鉄砲、大砲を作ろう。」


「何、大砲とな?」信長の顔が輝いた。


「ああ、鉄砲と基本的な構造は同じだが、使う火薬の量と弾丸の大きさが段違いだ。当然、砲身の強度も求められる。いきなり巨大なのは難しいだろうから、そうだな直径10cm、いやこの尺度じゃ通じないか、検索検索っと、3寸だな、直径3寸の鉄の弾を撃って敵の陣地を破壊する。」


「それは楽しそうじゃ。ぜひやろう。鉄砲鍛冶もあれからさらに拉致して数も増えておる。今川め、文字度通り、土手っ腹に風穴を開けてやる。」


「おう、ただ設計理念としてはそれで良いのだが、これからしばらく試作して実験して、最高のパフォーマンスを引き出せるように調整しなければならない。」


「お、おう、最高のパコマンだな。」


「あ、ごめん、バテレン語の親戚の英語を使ってしまったわ。最高の性能な。試作と実地試験は危険を伴うので、職人たちには安全確認を徹底するように伝えろ。職人が吹っ飛んだら士気が下がるし、今後の兵器製造にも影響が出る。」


「うむ、理解した。よし、さっそく明日にでも鉄砲鍛冶の親方と相談することにしよう。」


「おう、がんばれよ。ところで、子どもは作ったか?おまえが死んでも織田が安泰でないとこの国はうまくいかないからな。」


「大丈夫じゃ、息子が4人、娘が3人、みな元気じゃ、はっはっは。」


「そうか、がんばったな、このエロ親父。」


「は?何と?」


「いや、気にするな、褒めただけだ。では、また来るからな。さらばだ。」


 永禄3年(1560年)5月、今川義元が尾張国へ侵攻した。その兵力は優に2万を超える。迎え撃つ信長の軍勢はおよそ5000、しかしその中には1000人の鉄砲隊がいた。信長は鉄砲隊に赤、青、白、黒の制服を着せ、250人ずつの小隊に分け、隊長の指令で「白前へ」のようにローテーションで隊列を交換し、4連射を可能とした。戦場となる桶狭間は尾張国知多郡に位置し、丘陵地帯が広がる地形で、小さな山や谷が連なっていた。大部隊が進軍する大きな街道がないので、狙撃には恰好の地形だった。


 1000人の鉄砲隊は丘の中腹に陣取り、下方を通る今川勢をいまかいまかと待っていた。1000人が10回撃てば10000人倒せるわけではないが、かなりの兵力をそぐことはできる。そしてもちろん敵は丘を登って反撃に出るだろう。しかし高低差は侮れない。鉄砲と弓の射程もかなり違う。織田の鉄砲隊の背後には、弓隊が控えていて鉄砲隊を守っている。さらにその背後には槍を構えた武者が控え、討ち漏らした敵を始末する体勢になっていた。不利を悟った今川勢は敗走を始めた。織田の騎馬隊はこれを追撃し、さかんに弓を射かけて敵の数を減らした。信長はこの様子を見て、「いつかは騎乗から撃てる鉄砲隊が欲しい」と考えていた。結局、この戦に大砲の出番はなかった。前方から勝ちどきの声が上がった。「首を、義元の首を取りました!」信長は今川義元を難なく破った。これで尾張東部の危機は去ったと考えて良いだろう。信長は今川に捕らわれていた松平元康(後の徳川家康)と同盟を結び、尾張と三河はこれによって安定化した。


「おい、信長、やったな、勝ったな、今川に。まあ当然だな、俺が付いているのだから。」


「うむ、青水のおかげだ。おかげですべて順調だ。」


「ときに信長よ、金は足りているか?」


「いや、全然足らん。戦に勝っても金は入ってくるものではないし、褒賞を与えないといけないから出て行く一方だ。とはいえ税を上げるわけにもいかん。領民の生活が安定しないと不満が募り、領地の空気が悪くなる。一揆にでもなったら目も当てられん。何かアドバイスはないか?」


「そうだな、誰もが欲しがるものを日本中に売りさばくのが一番だな。いま忍びは何人いる?」


「今はだいたい300人だな。うち半分は他国に潜入中だ、瀬戸物を売りながらな。」


「うむ、足りないな。とりあえず500人まで増やせ。そしていまいる忍びの中で特に薬に詳しい者を3名ほど越中へ送れ。越中はあの上杉謙信の領土だ。捕まらないように気をつけろ。まあ、ついでに越中の町の様子から経済力がどれほどなのか探っておくべきだな。越中の山の中には修験者がいて、よく効く薬を作って里の者に配っているらしい。その修験者たちに接近して、製薬の知識を共有するんだ。尾張の薬と越中の薬、切磋琢磨して研究すれば、必ずやもっと良い薬が作れるようになるだろう。需要があるのは、刺し傷や切り傷の塗り薬、虫刺されの軟膏、包帯、腐ったものを食べて腹を壊したときの飲み薬、頭痛薬、熱冷まし、といったところか。ある程度の目処が立ったら尾張に戻り、薬を大量生産して、日本国中に売りさばく。これはもちろん忍びの連中にやらせるので、情報収集にも役に立つ。売り方はこうだ。各戸を訪問して、薬が欲しいか聞いて回る。欲しいと言ったら、代金と引き換えに薬が詰まった薬箱を渡す。半年後にまた来るので、そのとき使って減った薬だけ補充してその分の代金だけ受け取ると言う。こうすることで安定して代金が回収できる。しかも、それを知った近所の者が必ずや自分も薬箱が欲しいと言い出すだろう。薬の売れ行きは爆上がりだ。忍びたちのやる気を引き出すために、売れ行きに応じて報奨金をはずむんだな。」

挿絵(By みてみん)

「おお、それはすごく儲かりそうだ。西国から蝦夷地まで、薬の需要は果てしない。これは儲かりそうだ。」


「忍びたちは、どこから来たのか聞かれたら、堺の薬屋だと答えさせろ。尾張の薬屋だと、いろいろ怪しまれる。」


「なるほど、堺なら日本中どこでも商いのために出かけそうだしな。」


まだまだ信長は死にませんが、全国が見えてきました。

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