51 エンディング
結局、ヴィオラの件については最終的に罪に問うことは難しいという結論に至った。証拠不十分である以上、それ以上追及するのは無理だと理解していたので、仕方ないと諦めた。
しかし、レオンが同じ思いでいたのかというと、そうではなかったようで……。
どうやらその後、レオンは単独でヴィオラに面会し、私に手を出さないよう釘を刺していたらしい。詳細はわからないけど、アレクシス殿下の協力もあったようだ。王家が関与しているとなれば、公爵家であっても逆らうことはできないだろうから、それがヴィオラを大人しくさせた理由だろうと思う。
ちなみにそのことを知ったのは、ずいぶん後になってから。
パーティーでも、街中でも、ヴィオラと顔を合わせる機会が一切なくなったことに訝しんだ私に、ストラールが教えてくれて、初めて知った事実だった。
思えば、転生してからの短い期間で、二度の災難に見舞われた。
ヨハンの件、そしてヴィオラの企み。そのどちらも間一髪で難を逃れることができた。
あのゲームで描かれていた「ストーカー事件」が、このどちらかであったと信じたい。
レオンはそんな私の考えを察したのか、静かに私の手を取った。
「ミナがこの世界に来てくれたから、こうして共にいられる。この先どんな試練があろうと、俺はお前の傍にいて必ず守る」
その言葉に、薄れゆく記憶が一瞬鮮明になった。ゲームのレオンの決め台詞を思い出したのだ。
広告で見かけた攻略キャラのダイジェストシーン。それは恐らくエンディングに近いところで起こるイベント、冷たい表情のレオンが一転、画面越しのプレイヤーに語りかける――
『お前と出会えたことで俺は変われた。この先どんな試練があろうと、俺はお前の傍にいて必ず守る』
薄れゆく前世の記憶の破片が、目の前のレオンに綺麗に重なる。
どこかで終わったはずの物語が、こうして新たに紡がれ始めたのを感じた。
これからもきっと困難は訪れるだろう。それでも、私はレオンと共に、この世界での人生を歩んでいこうと心に決めたのだから――
「私も、レオンの傍にいるよ。あなたを笑顔にするためにね……!」




