41 ヴィオラからの招待状
数日後、マリアが一通の手紙を持ってきた。
「ヴィオラ・エベレット様からです」
「ヴィオラ・エベレット?誰だっけ?」
「剣術大会でお会いしたのを覚えていませんか?」
「……ああ!」
思い出した。剣術大会で出会った公爵令嬢様で、レオンに好意を抱いているようで、義兄離れをしたらどう?なんて言ってきた人だ!正直なところあまり良い印象はないけど……。
「なぜその人から手紙なんて……?」
緊張しながら封を開けると、そこには整った筆跡で、お茶会への招待が記されていた。
「お茶会のお誘い?交流なんて無いのに、どうして私を……」
まったりお茶を飲みながら彼女との会話を楽しむなんて無理だろう。それどころか、彼女の不機嫌な視線を浴びることを思うと憂鬱になるばかりだ。ただでさえ、レオンと婚約したことで、どんな嫌味を言われるか想像するだけで恐ろしい。
「悪いけど、マリア。断りの返事を用意してくれない?」
そう告げると、マリアは目を丸くした後、すぐに困ったような表情を浮かべた。
「お嬢様、それは……お止めになった方が良いかと存じます」
「どうして?」
「エベレット公爵家は名門であり、ヴィオラ様はその嫡出のご令嬢です。そのような方からの招待を断るのは、少々角が立つかもしれません。それに、お嬢様のお立場にとっても、今後の影響が心配です」
マリアの言葉に私は思わず息を飲んだ。確かに、公爵家のご令嬢からの誘いを安易に断るのは、今の私の立場を考えると得策ではないかもしれない。とはいえ……。
「でも……気が進まないわ……」
正直にそう漏らすと、マリアは優しく微笑んだ。
「お気持ちは分かります。ただ、こうした場は時に大きな意味を持つこともございます。お嬢様が一歩を踏み出されることで、得られるものもきっとあるはずです」
彼女の説得に、私はしぶしぶながらも参加の返事を書くことにした。
(正直ヨハンのこともあるし、お茶会なんてしている場合じゃないんだけど……仕方ないか)
そう自分に言い聞かせながら、私は返事の手紙を丁寧に封筒に収めた。
 




