20 甘い時間
私はどこか陰鬱な気持ちになりながら屋敷の扉を開けた。
リビングに入ると、そこには仕事から帰宅していたレオンが待っていた。
「どこに行ってたんだ?」
ソファに腰掛けた彼が、低い声で尋ねてくる。私は嘘をつくべきかどうか、一瞬だけ迷ったが、正直に話すことを選んだ。なぜならレオンの瞳には逃げ場のないような鋭さを感じたからだ。
「ヨハンと会っていたの」
彼の眉がわずかに動き、空気が一瞬で張り詰めた。
「そうか」
その短い返事の後、彼は立ち上がり、私の前に歩み寄る。そして、少しだけ笑みを浮かべた。
「嘘をつかれなくてよかったよ」
そう言いながらレオンの腕が私を引き寄せる。そのまま甘い口づけが落とされ、気づけばその腕の中に完全に捕らえられていた。その行動はどこか独占欲の強さを感じさせた。
◇ ◇ ◇
その後、ヨハンからの誘いはぱたりと止んだ。まだこの街にいるという話を耳にしたけど、私の元には何の連絡もなかった。
そんな静かな日々の中、レオンとの時間がさらに深まっていった。
以前と同じく、レオンは帰ってくると私の部屋にやってきて、その日の出来事を尋ねてくる。甘い時間は前よりも増えたが、同時に私の行動をすべて把握しようとしとするかのような会話や質問も増えた。最初はその束縛めいた態度に少し戸惑いを覚えたが、次第にそれも悪くないと思うようになってきた。
「今日はどうだった?」
いつものようにソファで隣に座るレオンが、私に優しく問いかける。
「特に何もなかったわ。レオンがいない間に読書をしてたくらい」
答えると、彼は微笑みを浮かべて私の髪を優しく撫でた。
「それならいい」
その言葉とともにレオンがそっと私を抱き寄せると、心の中に温かな安心感が広がる。
レオンの独占欲が、私にとって心地よいものに変わっていた。彼にすべてを委ねることが、いつの間にか自然なことに思えるようになっていたのだ。
ただ、この甘い時間が永遠に続けばいいと……。




