出会い
来年、僕が死ぬ…
そんなバカな話があるか。
こんな化け物にそんな話されても信じるわけがない。
でも…
「死ぬってさすがに冗談ですよね…?」
なぜか僕の声は少し震えていた。
「ほんまやね、君は来年あたり自殺する。
そういうのわかるんよ、一応神やし」
ガネーシュはまた真剣な表情で口を開いた。
えっ、というか…
「えっ、僕は自殺するんですか?」
僕は驚きを隠せない。
「そうやね、自殺。まあ、君まだ若いし、他にそんななんもないやろ、心当たり」
「それはそうですけど、そんな僕は何かに悩んでるとかないですし…
自殺する理由なんてないですよ」
淡々と説明するガネーシュに対して、僕はそう反論する。
すると、ガネーシュは鼻を動かして体を搔き始めた。
「自殺する理由か…そんなん必要なん?」
その発言に僕はたじろいだ。いや、そんな必要に決まって…
「別に決まってはないやろ。人間なんで千差万別。
生きたくないから、生きる理由がないから。そんな理由の奴もおる。
現に君、自分の人生つまらんな~とか生きる理由はないなとか思ってへんか?」
その発言にすこし面食らう。
「た、確かにつまらない人生だとは思ってますよ。なんならさっき家に帰るときも思ったかも知れない
でも、自殺するような度胸もないし、なにより死ぬ理由には…」
「いや、『生きる理由がない』は死ぬ理由になるやろ。」
僕はうつむき、思案した。こんな神(笑)に説教されている現状もなんだか悔しくなってきた。
「それはそういう人もいると思います。
でも、僕はつまらないなりに満足してますよ。
パチンコ行って、Twitter見て、大学だってそれなりに行ってますし。
はたから見たら廃人まっしぐらかもしれないですけどね、『足るを知る』というか…
つつましい人生ってやつなんですよ」
僕がまくしたてるようにそういうと、ガネーシュの鼻がぴくっと震えた。
そして、にやりと笑った。
「『満足』?『つつましい人生』?
ほんまにそんなこと思っとる?
心の底からそう思えてるんか?」
僕はイラっとした。こんな今日あった得体のしれない化け物にそんなこと言われる筋合いは…
「いや、筋合いとかちゃうから。今、君の人生の話してんねんで?
ワイのこと考えてどうすんねん。」
ガネーシュは深いため息をついて、胸元から赤マルを取り出す。
そして、鼻で火をつけて(?)吸い始めたと思いきや、思いっきりむせた。
何やってんだ…
「ゴホゴホっ… で、どうなん、自分に嘘ついてるんちゃうの?
つまらない人生を送っとる自覚はあるけど、
それを変えようとせん自分を正当化しようとしてへん?
俺はこれでいいって、別に頑張る人生である必要はない、そこそこで、とかな
そういう感情が来年あたりピークになって、『もういいか』になる
それで君はおしまい」
そんなことは…別にこの日常も悪くない…心からそう思って…
「じゃあ、なんで帰りがけにあんなこと考えてたん?
長ったらく回想したり、ペットボトル拾う拾わんに対してうじうじ考えたり…
いっつも君は心の中で言い訳しとる」
…そうかもしれない、いやそうなのだ。
ガネーシュが現れて来年死ぬって言われた時点で何がが変わる
変わってくれると思ってしまった時点で、俺は…
「あなたの言う通り、そうなのかもしれない
僕は言い訳ばかりだ…でも、もう僕は何をすればいいかわからないんだ
勉強しかしてなかったのに、それも井の中の蛙だと知った
コミュニケーション能力も低いし、これといってやりたいこともない
もう、僕は頑張れない…」